【親子問題】ひとり親家庭で子の暴力を受けている、誰に頼ればいい?
親の側が弁護士に依頼して子と向き合い始めると、「子のほうも弁護士を立ててくるのではないか」「そうなったら争いが大きくなるのではないか」と心配される親御さんは少なくありません。反対に、子から「自分も弁護士に相談したい」と言われて、どう受け止めればよいか迷う方もいらっしゃいます。
結論からいえば、子の側に弁護士がつくことはあります。成人した子であれば、自分で弁護士に相談し、依頼することができます。この記事では、子の側に弁護士がつきやすい場面、親の代理人と子の代理人の関係、子に弁護士がついたときに親の側で変わることを順に整理します。
この記事は、親が弁護士に依頼している、または依頼を考えている場面を前提に、2026年11月時点の法令と弁護士の職務上のルールに沿って説明しています。個別の事情によって結論が変わることがあります。
子の側にも弁護士がつくことはある
弁護士は、依頼を受けた人の代理人として動きます。親が弁護士に依頼すればその弁護士は親の代理人になり、子が弁護士に依頼すればその弁護士は子の代理人になります。親子の間の問題であっても、この仕組みは変わりません。
成人した子は、親の同意がなくても自分の判断で弁護士に相談し、依頼することができます。親の側から見ると意外に感じられるかもしれませんが、子が自分の立場について専門家の説明を受けること自体は、法律上ごく通常のことです。
子に弁護士がつきやすい場面
親子問題の中でも、子の側に弁護士がつきやすいのは、何らかの手続や請求が具体的に動き出した場面です。代表的なものを表にまとめます。
| 場面 | 子の側の弁護士の立場 | 親の側から見たポイント |
|---|---|---|
| 親から家の明渡しを求められた | 子の代理人として交渉や訴訟に対応 | 話し合いが代理人どうしのやり取りに移る |
| 親から貸したお金の返還などを求められた | 子の代理人として請求の当否を検討 | 請求の根拠や記録を整理しておく必要がある |
| 子が親に生活費や財産の分与を求めてきた | 子の代理人として請求を組み立てる | 応じる義務の範囲を親の側でも確かめる |
| 子が逮捕・勾留された | 子の弁護人として刑事手続に対応 | 弁護人は子の利益のために動く |
| 20歳未満の子が少年事件の対象になった | 付添人として家庭裁判所の手続に関与 | 家庭環境の調整について意見を求められることがある |
| 未成年の子が家庭裁判所の手続に関わる | 子どもの手続代理人として子の意見表明を支える | 親の意向とは別に、子の意思が手続に反映される |
刑事事件では、勾留された被疑者は国選弁護人の選任を求めることができます。また、家庭裁判所の手続では、子が自分の意見を伝えるために「子どもの手続代理人」として弁護士がつく制度もあります。どの場面でも、子の側の弁護士は子の利益を守る立場にあります。
子が自分で弁護士を探すとき
子に収入がなく、弁護士費用を用意できない場合でも、相談の道が閉ざされているわけではありません。法テラス(日本司法支援センター)では、収入や資産が一定の基準以下の方を対象に、無料の法律相談や弁護士費用の立替えを行っています。自治体や弁護士会の法律相談を利用する方法もあります。
親の側で弁護士を探してあげる必要はありませんが、子から相談先を聞かれたときに、こうした窓口があることを伝えるのは差し支えありません。
親の代理人が子の代理人を兼ねることはない
親子問題で親から依頼を受けた弁護士が、同じ問題について子の代理人を兼ねることはありません。弁護士法25条や弁護士職務基本規程27条・28条は、利害が対立する当事者の双方から依頼を受けることなどを禁じています。親の利益を守るために動いている弁護士が、同時に子の利益も守るという形は成り立たないためです。
この制限は同じ法律事務所の中にも及びます。弁護士職務基本規程57条により、同じ事務所に所属する別の弁護士が子の側の依頼を受けることも、原則としてできません。そのため、当事務所が親御さんから親子問題のご依頼を受けている場合、子から同じ問題についてご相談があっても、子の立場での助言はお断りすることになります。
また、親御さんからお聞きした内容は守秘義務の対象であり、子に伝わることはありません。この点は【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方で詳しく説明しています。
親子の利害が対立していない場面は別に考える
一方で、親子の利害が直接ぶつかっていない場面もあります。たとえば、成人した子が逮捕され、親が子のために弁護人を探すという場面です。この場合、費用を親が出して弁護士に依頼することはよくあります。
ただし、依頼を受けた弁護人はあくまで子の弁護人です。費用を出した親に対しても、子の意思に反して事件の内容をすべて伝えるわけではありません。親の立場でできることの範囲は、【親子問題】成人した子の刑事事件で親ができること・できないことで整理しています。
子に弁護士がついたとき、親の側で変わること
子に弁護士がつくと、親の側のやり取りの進め方がいくつか変わります。主な変化は次のとおりです。
- 連絡は、子本人ではなく子の弁護士を通して行うのが基本になります。
- 親の側にも弁護士がついている場合、子への連絡は弁護士どうしのやり取りになります。
- 子の主張が書面で整理され、何を求めているのかが分かりやすくなることがあります。
- 感情的な言い合いが減り、話し合いが落ち着いて進むことがあります。
- 期限や手続の見通しが示され、先の予定を立てやすくなることがあります。
弁護士職務基本規程52条は、相手方に代理人がついている場合、正当な理由なくその代理人の承諾を得ずに相手方本人と直接交渉してはならないと定めています。親の代理人である弁護士は、子に弁護士がついた時点で、子本人ではなく子の弁護士と話を進めることになります。
親御さんご自身が子本人と話すことが法律で禁じられるわけではありません。ただ、交渉中の事柄について親子で直接話すと、それぞれの弁護士が把握していないところで話が進み、行き違いが生じるおそれがあります。交渉中の事柄については、弁護士を通すほうが混乱を避けやすくなります。
親の側に弁護士がいない場合
親が弁護士に依頼していないまま、子の弁護士から連絡が来ることもあります。このとき注意したいのは、子の弁護士は親の代理人ではないという点です。丁寧に説明を受けたとしても、その説明は子の立場からのものであり、親の利益を考えた助言ではありません。
求められている内容が金銭や住まい、財産に関わるものであれば、返答する前に親の側でも弁護士に相談することを検討してよいでしょう。窓口を弁護士に代えることの意味は、【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で解説しています。
子の弁護士から通知が届いたら
- 通知に書かれている請求の内容と、回答の期限を確認します。
- 子本人に直接問いただす前に、通知の内容と手元の記録を整理します。
- 親の側でも弁護士に相談し、返答の方針を決めます。
- 返答は口頭ではなく書面で行い、控えを残します。
通知の文面が強い調子で書かれていても、それだけで直ちに裁判になるとは限りません。期限までに返答の方針を決めておけば、多くの場合は話し合いの中で調整を続けることができます。
反対に、親の側の弁護士から子へ最初の連絡を入れる場面で何を伝えるかは、【親子問題】弁護士から子に最初の連絡が入るとき|通知で伝えることで取り上げています。
子の弁護士費用を親が出すべきか
子から「弁護士を頼みたいから費用を出してほしい」と言われることもあります。親が子の弁護士費用を出すこと自体は可能です。ただし、費用を出したからといって、親がその弁護士の依頼者になるわけではありません。子の弁護士は、費用を誰が出したかにかかわらず、子の利益のために動きます。
親子の間で争いになっている事柄について、親が相手方である子の弁護士費用を負担するかどうかは、慎重に考えたいところです。一方で、子に資力がなく話し合いが進まない場合に、法テラスの利用を勧めることで手続が前に進むこともあります。費用の負担を交渉の条件に絡めると、かえって話がこじれるおそれもあるため、親の側の弁護士と相談しながら判断するとよいでしょう。
子に弁護士がつくことを悪い知らせと受け止めなくてよい理由
子に弁護士がつくと、親御さんは「本格的に争うつもりなのか」と身構えてしまいがちです。しかし、子が自分の弁護士から法律上の見通しを聞くことで、できることとできないことを理解し、現実的な選択を受け入れやすくなる場面もあります。
たとえば、親が所有する家からの退去を求めている場面で、子が自分の弁護士から明渡しの手続や見通しについて説明を受け、退去の時期や条件の話し合いに応じるようになることがあります。明渡しの考え方は【親子問題】子を家から出ていかせることはできるのか|占有と明渡しで紹介しています。
話し合いがまとまった後は、取り決めた内容を合意書にしておくと、後の行き違いを防ぎやすくなります。書面にする意味と限界は【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界をご覧ください。
当事務所では、弁護士が親御さんの代理人として子と向き合う一方で、民間の自立支援カウンセラーが子の生活の立て直しを支える体制をとっています。子の側に法律上の相談相手がいることも、子を孤立させずに自立へ向かう道筋を整えるうえで、必ずしも妨げにはなりません。役割の分け方については【親子問題】弁護士とカウンセラーが組むという形|役割を分ける理由で説明しています。
よくあるご質問
子の弁護士と親の弁護士が同じ事務所になることはありますか
原則としてありません。同じ事務所に所属する弁護士は、他の所属弁護士が利益相反のために扱えない事件を扱うことが原則として制限されています。子が相談に行った先が、親の依頼している事務所だった場合には、その事務所から断られることになります。
子の弁護士に、親の事情を直接説明してもよいですか
親の側に弁護士がついている場合は、親の弁護士を通して伝えるのが基本です。親の側に弁護士がいない場合は、親御さんご自身が説明することもできますが、伝えた内容は子の側の主張の材料になることがあります。何をどこまで伝えるかは、事前に整理しておくと安心です。
子が弁護士に依頼すると、話し合いは長引きますか
一概にはいえません。主張が書面で整理されるため、やり取りに一定の時間がかかることはあります。一方で、感情的な対立が落ち着き、論点が絞られて、結果として話がまとまりやすくなる場合もあります。
まとめ
- 成人した子は、自分の判断で弁護士に相談し、依頼することができます。
- 親の代理人である弁護士や同じ事務所の弁護士が、子の代理人を兼ねることは原則としてありません。
- 子に弁護士がついた後は、交渉中の事柄について代理人を通してやり取りするのが基本です。
- 子の弁護士は親の代理人ではないため、親の側でも相談先を確保しておくと安心です。
- 子に弁護士がつくことで、かえって話し合いが落ち着いて進む場合もあります。
子の側に弁護士がつくかどうかは、親の側で決められることではありません。大切なのは、子に弁護士がついた場合にも慌てずに対応できるよう、親の側の窓口と方針をあらかじめ整えておくことです。当事務所の親子問題への取り組みは、【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


