【親子問題】30代のひきこもりの子に、親が最初に声をかけるなら何から?
本記事は、2026年10月時点の法令と行政解釈をもとに、家族経営の会社や個人事業で働く子との雇用・役員の関係を整理したものです。給与の税務上の扱いは事業の形態や金額によって異なるため、具体的な処理は顧問税理士にもご確認ください。
家族で営む会社に成人した子が社員や役員として名を連ねているものの、実際にはほとんど出社せず、仕事もしていない。それでも毎月の給料だけは振り込み続けている。こうしたご相談は、親子の問題のなかでも決して珍しいものではありません。
「身内だから」と続けてきた支払いも、会社の資金繰りや他の従業員の目、親自身の老後を考えると、どこかで区切りをつけたいと感じるのは自然なことです。ただし、子に「辞めてもらう」といっても、子が会社の中でどのような立場にあるかによって、使える手続も、気をつけるべき点も変わります。
この記事では、家族経営の会社で働かない子への給料の支払いを見直したい親御さんに向けて、子の立場の確かめ方、立場ごとの辞めてもらい方、そして給料が止まった後の子の生活をどう考えるかを順に整理します。
最初に確かめたいのは、子が会社の中でどの立場にいるか
「辞めてもらう」方法は、子が従業員なのか、役員なのか、あるいは個人事業の手伝いとして給与を受けているのかで大きく異なります。まずは雇用契約書や就業規則、登記事項証明書、給与台帳、源泉徴収の記録などを手元にそろえ、書面上の形式と働き方の実態の両方を確かめるところから始めます。
| 子の立場 | 主に関わる法律 | 辞めてもらうときの主な方法 |
|---|---|---|
| 会社の従業員(社員) | 労働基準法・労働契約法・民法 | 話し合いによる合意退職、または解雇 |
| 会社の役員(取締役など) | 会社法 | 辞任、任期満了での不再任、または株主総会での解任 |
| 個人事業の家族従業員 | 民法・所得税法 | 話し合いにより手伝いの関係と給与の支払いを終える |
同じ「社員」という肩書きでも、親と生計を一にしているか、家族以外の従業員がいるかによって、労働法の扱いが変わる点には注意が必要です。次の項目で詳しく見ていきます。
子が従業員の場合|労働法が及ぶかどうかで進め方が変わる
同居の親族だけで営む事業には、労働基準法が適用されない
労働基準法116条2項は、同居の親族のみを使用する事業には同法を適用しないと定めています。労働契約法22条2項にも同様の定めがあります。ここでいう「同居」は住まいが同じというだけでなく生計も一にしている状態を指し、「親族」は民法上の親族を指します。
親と生計を一にする子だけが従業員として働いている事業であれば、一般の従業員と同じ解雇の規制がそのまま及ぶわけではありません。もっとも、雇用の関係がまったくないことになるわけではなく、民法の雇用に関する規定が基本になります。給与の支払いをやめる時期や最後の支払額は、本人と話し合って決め、書面に残しておくほうが、後のもめごとを防ぐことにつながります。
家族以外の従業員がいる会社では、子も「労働者」とされることがある
家族以外の従業員を雇っている会社では、事業そのものに労働基準法が適用されます。そのうえで、同居の親族である子が労働者に当たるかどうかは、行政通達によれば、事業主の指揮命令に従って働いていることが明確か、勤務時間や休日、賃金の決め方や支払い方の管理が他の従業員と同様に行われているか、といった実態から判断されます。同居の親族について、働き方の実態から労働者に当たると判断した裁判例もあります。
親と別に暮らしている子や、一般の社員と同じ就業規則で管理されている子は、労働者として扱われる可能性が高いと考えて準備を進めるほうが安全です。
労働者に当たる場合の辞めてもらい方
子が労働者に当たる場合、会社からの一方的な解雇には、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます(労働契約法16条)。「働かない」という事情も、それを裏づける記録がなければ、解雇の理由として説明しにくいことがあります。実務では、次のような順序で進めることが多いです。
- 出勤の状況、任せた業務とその結果、注意をした日時と内容を記録に残します。
- 担当する業務と勤務時間をあらためて書面で示し、改善を求めます。
- 改善が見られない場合に、退職について本人と話し合います。
- 合意できれば、退職日、最後の給与、退職金の有無などを書面にまとめます。
- 合意できず解雇を検討する場合は、30日前の予告または予告手当の支払いなど、法律が定める手続を確認します。
退職を促す話し合いは、長時間にわたったり、繰り返し強く迫ったりすると、退職の強要と受け取られるおそれがあります。親子だからこそ感情的になりやすい場面のため、第三者が同席するか、弁護士が会社の代理人として話し合いを担うことも選択肢になります。
また、給料の額を会社の判断だけで大きく引き下げることにも、原則として本人の同意が必要とされています。「まず減らして様子を見る」という方法をとる場合も、合意した内容を書面に残しておくことが大切です。
子が役員の場合|解任はできるが、報酬の扱いに注意が必要
子が取締役などの役員に就いている場合、役員は株主総会の決議によっていつでも解任できます(会社法339条1項)。ただし、解任に正当な理由がないときは、解任された役員は会社に対して損害の賠償を請求できるとされています(同条2項)。損害として主に問題になるのは、残りの任期中に受け取れたはずの役員報酬です。
職務をほとんど果たしていない状態が続いていることは、正当な理由の有無を判断するうえで考慮される事情になり得ますが、その状態を示す記録が重要になる点は従業員の場合と同じです。任期の満了が近いのであれば、再任しないという方法が、争いになりにくい選択肢になることもあります。
任期中の役員報酬については、いったん具体的に定められると、本人の同意なく減額や不支給にはできないとした最高裁判所の判例があります。役員の地位はそのままに報酬だけを止める方法は、思わぬ争いを招くおそれがあります。
あわせて、子が会社の株式を持っている場合は、議決権の割合によって、解任の決議がそもそも成立するかどうかも変わります。株主名簿や定款もあらかじめ確認しておきましょう。
働かない子に給料を払い続けることで生じうる問題
親としては「生活費の援助のつもり」で払っている給料でも、会社の支出として見ると、いくつかの問題が生じることがあります。
- 勤務の実態に比べて過大と判断された給与は、会社の経費として認められないおそれがあります。
- 他の従業員が事情を知った場合、職場の士気や人間関係に影響することがあります。
- 業績が厳しくなったとき、子への給与が会社の資金繰りを圧迫することがあります。
- 会社の資産が親の老後資金や事業承継の原資を兼ねている場合、親自身の将来の備えが少しずつ減っていきます。
税務の面では、役員の親族である従業員への給与のうち不相当に高額な部分は、法人の損金に算入されないと定められています(法人税法36条)。個人事業の青色事業専従者給与も、労務の対価として相当な額であることが前提とされています。支払いを続けるか見直すかを検討する際は、顧問税理士の意見もあわせて確認しておくと安心です。
給料を止めた後の子の生活を、あわせて考えておく
会社からの給料が実質的な仕送りになっていた場合、支払いを止めると子の収入はなくなります。その結果、お金の要求が会社から親個人へと向きを変えたり、親子の関係がこじれたりすることも少なくありません。辞めてもらうことだけでなく、その後の子の生活の組み立てまで見通しておくことが、親子双方の負担を軽くします。見通しを立てる際には、次のような点を整理しておくとよいでしょう。
- 退職後の一定期間に親が個人として援助する額と期限。
- 子が実家に住んでいる場合の、住まいを分ける時期と方法。
- 就労支援機関の利用や仕事探しの進め方。
- 子から金銭を求められたときの応じ方と断り方。
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なお、退職の話を切り出したことをきっかけに、子が暴言や暴力に及ぶおそれがある場合は、話し合いを急がず、まず家族の安全を確保することを優先してください。
当事務所がお手伝いできること
当事務所は、親の代理人として親子の問題に介入し、自立支援カウンセラーとチームを組んで、子の自立に向けた支援を行っています。家族経営の会社で働かない子についてのご相談では、たとえば次のようなお手伝いが考えられます。
- 子の立場(従業員・役員)と、雇用契約や登記、給与の記録を整理します。
- 会社や親の代理人として、退職や役員の退任に向けた話し合いを子と行います。
- 合意した内容を、退職合意書などの書面にまとめます。
- 給料が止まった後の金銭の要求について、親の窓口となって対応します。
- カウンセラーと連携し、住まい探しや仕事探しなど、子の生活の立て直しを支えます。
サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応、ご相談から自立までの流れと費用は【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問でご紹介しています。
よくあるご質問
子に辞めてもらうことに、配偶者やきょうだいが反対しています。どうすればよいですか。
会社の意思決定は、代表者の判断や、株主総会・取締役会の決議によって行われます。家族の中で意見が分かれていても、誰にどの権限があるのかを確かめることで、進め方が見えてくることがあります。家族の方針がまとまらないまま子と話し合うと、子がいずれかの家族を頼って話が長引くことがあるため、事前に方針をそろえておくことをおすすめします。
辞めてもらった後に、子から「不当解雇だ」と争われることはありますか。
子が労働者に当たり、合意のないまま解雇した場合には、解雇の有効性を争われる可能性があります。勤務の実態に関する記録を残し、できる限り話し合いによる合意退職をめざし、合意した内容を書面にしておくことが、後の紛争を防ぐうえで役立ちます。
子本人と直接会わずに、手続を進めることはできますか。
弁護士が会社や親の代理人として、子との連絡や話し合いの窓口を担うことができます。親が直接向き合うと感情的なやり取りになりやすい場合や、子の反発が強い場合には、窓口を弁護士に移すことで、話し合いが進みやすくなることがあります。
まとめ
家族経営の会社で働かない子に給料を払い続けている状態は、会社の問題であると同時に、親子の距離の問題でもあります。子が従業員か役員かを確かめ、手続の順序と、給料が止まった後の生活をあわせて考えておくことで、親子双方にとって無理の少ない区切り方が見えてきます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


