【親子問題】子の債務整理の費用を、親が出してもいい?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

本記事は2026年10月時点の法令と、東京地方裁判所の運用をもとにしています。裁判所に納める費用や手続の運用は変わることがあるため、実際の金額はご依頼の時点で確認してください。


成人した子が借金を返せなくなり、弁護士から任意整理や自己破産を勧められた。けれども子には弁護士費用を払うお金がない。そのとき「親が費用を出してもいいのだろうか」「出すとしたら何に気をつければよいのか」と迷う親御さんは少なくありません。
 結論から言えば、親が子の債務整理の費用を援助すること自体は禁じられていません。ただし、出し方によっては手続に支障が出たり、援助したお金が別の用途に流れたりすることがあります。この記事では、費用の目安と、援助する前に確かめておきたい点を順に整理します。

親が子の債務整理の費用を出すこと自体は問題ない

 まず前提として、子が自分の名義で借りたお金について、親に返す義務はありません。親が保証人や連帯保証人になっていない限り、債権者が親に支払いを求める法的な根拠はないのが原則です。子が親と同居していても、別に暮らしていても、この点は変わりません。
 そのうえで、親が自分の判断で子の債務整理にかかる費用を援助することは、法律上とくに制限されていません。債務整理を扱う法律事務所でも、費用を用意できない場合の方法のひとつとして、親族からの援助が挙げられることがあります。
 ただし、費用を出すのが親であっても、債務整理を依頼するのは子本人です。この点が、後で説明する注意点の多くにつながっています。

債務整理にかかる費用の目安

 債務整理の費用は、弁護士に支払う費用と、裁判所に納める費用に分かれます。手続の種類ごとの大まかな考え方は次のとおりです。

手続主な費用目安の考え方
任意整理弁護士の着手金・解決報酬金・減額報酬金債権者の数で変わる。解決報酬金は1社あたり2万円以下、減額報酬金は減額分の10%以下という上限が日本弁護士連合会の規程で定められている
個人再生弁護士費用、裁判所の申立費用、個人再生委員の費用など弁護士費用だけで数十万円になることが多く、裁判所や事案によって追加の費用がかかる
自己破産弁護士費用、申立手数料、予納金など東京地方裁判所の場合、同時廃止なら予納金は1万円台、管財事件になると最低20万円程度の予納金が加わる


 弁護士費用は事務所ごとに定め方が異なり、分割払いに応じる事務所もあります。また、弁護士が受任通知を送ると債権者からの取立てが止まるため、それまで返済に回していたお金を費用の積み立てに充てる方法をとることもあります。親が援助を考える前に、子自身で用意できる部分がどのくらいあるかを確かめておくと、援助の範囲を決めやすくなります。
 なお、自己破産が同時廃止になるか管財事件になるかは裁判所が判断するため、依頼の時点では総額が確定しないこともあります。見積もりを受け取る際には、追加の費用がかかりうる場面も確認しておくと安心です。

借金の肩代わりではなく、手続の費用に出すという考え方

 親として子の借金をそのまま返してあげたいと考える方もいます。しかし、親が借金を一括で返しても、借りる習慣や支出の仕方が変わらなければ、同じ状況がまた起きるおそれがあります。完済によって借入枠が回復し、かえって借りやすくなる場合もあります。
 これに対して、債務整理の費用に援助を絞る方法は、子が自分の名前で手続に向き合うことを前提にしています。手続の中で家計の状況を整理し、収入と支出を見直す作業を経るため、生活を立て直すきっかけになりやすいという面があります。
 一方で、任意整理や個人再生では、手続の後も子が数年にわたって返済を続けることになります。親がその返済まで引き受けるかどうかは、手続費用の援助とは分けて考えておくとよいでしょう。子の借金を親が返すかどうかについては、【親子問題】子の借金を親が返す義務はあるのかでも整理しています。

費用を出す前に確かめておきたいこと


依頼するのは子本人であること

 債務整理は、借金をしている本人が弁護士に依頼する手続です。日本弁護士連合会の規程では、債務整理を受任する弁護士は原則として債務者本人と直接面談することとされており、親が子に代わって依頼を決めることはできません。
 また、弁護士には守秘義務があるため、費用を出したのが親であっても、手続の詳しい内容を親に伝えるには子の了解が必要になります。援助を申し出る際には、どの程度の報告を受けたいかを子と話し合っておくと、後の行き違いを防ぎやすくなります。

「貸す」のか「渡す」のかを決めておく

 援助の形があいまいなままだと、手続の中で扱いが問題になることがあります。親が「貸した」お金であれば、親は子に対する債権者の一人になります。自己破産では親への借金も債権者一覧に載せる必要があり、手続の前に親にだけ先に返すと、特定の債権者だけを優先する返済(偏頗弁済)として問題にされるおそれがあります。
 こうした事情から、手続の費用に充てる援助は、返済を求めない形で渡すと整理しておくほうが扱いがわかりやすくなります。どちらの形にするかは、依頼する弁護士と相談して決めるとよいでしょう。

現金を子に渡さず、支払先に直接払う

 援助したお金が、別の支払いや遊興費に使われてしまうことがあります。とくに浪費やギャンブル、ホストクラブへの支出が借金の原因になっている場合には、子の手元に現金を置かない工夫が役立ちます。
 弁護士費用は法律事務所の口座へ、裁判所への費用は事務所を通じて納めるなど、支払先に直接払う方法をとれば、お金の流れが記録に残ります。自己破産では、通帳の入出金について裁判所や破産管財人から説明を求められることがあり、親からの援助であることを示せる記録があると説明がしやすくなります。

援助の範囲と回数を決めておく

 「今回の手続費用まで」「一度限り」など、援助の範囲をはじめに決めておくことも大切です。範囲が決まっていないと、手続の途中や終わった後に追加の金銭を求められ、断りにくくなることがあります。約束を書面にしておく方法については、【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界で説明しています。
 なお、援助の金額や形によっては贈与税の扱いが問題になる場合があります。まとまった金額を出す場合は、税務署や税理士に確認しておくと安心です。

援助の前後で気をつけたい場面

 費用の援助そのものとは別に、次のような場面では手続への影響を考えておく必要があります。

  • 親が保証人になっている借金がある場合、子が債務整理をすると、債権者から親に支払いを求められることがあります。
  • 子が手続中に、親族や知人への借金だけを先に返そうとする場合、偏頗弁済として免責などに影響するおそれがあります。
  • 借金の原因が浪費やギャンブルである場合、免責が認められない理由に当たりうるものの、事情を踏まえて免責が認められる例も少なくありません。
  • 親の名義で契約したローンやカードを子が使っている場合、その支払いは子の債務整理の対象にならず、親の問題として残ります。


 保証人になっている場合の対応は【親子問題】保証人になってしまった後にできること、支出の原因に応じた関わり方は【親子問題】ホスト・推し活・ギャンブルへの支出が原因の場合でも取り上げています。

子が債務整理に応じないときは

 親が費用を出すと申し出ても、子が債務整理を望まないことがあります。債務整理は本人の意思で行う手続であるため、親が強制的に申し立てさせることはできません。
 その場合でも、親として線を引くことはできます。借金の返済のための送金や、その場しのぎの立て替えを続けると、債務整理を考えるきっかけが遠のくことがあります。親が出すのは手続の費用に限ると伝え、それ以外の金銭の求めには応じないという姿勢をはっきりさせることも、ひとつの選択です。金銭の求めへの向き合い方については、【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけで整理しています。
 また、子の収入や資産が一定の基準を下回る場合には、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助を使い、弁護士費用の立替えを受けられることがあります。親の援助にこだわらず、こうした制度を使えるかどうかを子と一緒に確かめてみるのもよいでしょう。
 子が迷っている段階であれば、親が同席する形で一緒に相談を受けてみる方法もあります。ただし、面談では本人の意思を確かめる必要があるため、途中で本人だけと話す時間がとられることがあります。

当事務所がお手伝いできること

 当事務所では、成人した子からの金銭の無心や、親名義での借入れなどに悩む親御さんから、親の側に立ったご相談をお受けしています。子の借金をめぐって、親がどこまで関わり、どこで線を引くかを整理するところからご一緒できます。
 子の債務整理の手続そのものは、子が依頼者となって進めるものです。親御さんの代理人としての関わりと、子の手続とをどう分けるかも含めて、ご事情に応じてご説明します。


 子の債務整理の費用を親が出すかどうかは、金額だけでなく、出し方や範囲をどう決めるかによって意味が変わります。援助が子の立て直しにつながる形になっているかを、手続を始める前に一度整理しておくことをおすすめします。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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