【親子問題】子が来客や宅配業者に暴言を吐く、トラブルになったら?
この記事は、2026年10月時点の民法の規定と、成年に達した大学生の扶養をめぐる公表裁判例の考え方をもとに、一般的な整理をしたものです。個別の事情によって結論が変わることがあります。
子との関係がこじれた、家計が苦しくなった、子の生活態度に納得がいかない。理由はさまざまですが、大学に通う子の学費を「もう出さない」と考える親御さんは少なくありません。一方で、親には子を扶養する義務があると聞き、学費を止めると法的な問題になるのではないかと迷う方もいらっしゃいます。
この記事では、大学生の子の学費を出さないと決めた場合に、法律上どのような位置づけになるのか、子から扶養料を求められるのはどのような場面か、そして実際に止める前に確認しておきたいことを整理します。
学費を出さないこと自体が、直ちに違法になるわけではない
民法は、直系血族や兄弟姉妹は互いに扶養をする義務があると定めています(民法877条1項)。親子はこの直系血族にあたるため、親が子を扶養する義務そのものは、子が成人した後も消えるわけではありません。
ただし、扶養義務には重さの違いがあると考えられています。ここを押さえておくと、「学費を出さない」という判断がどの程度の問題になりうるのかが見えやすくなります。
未成熟の子と、成年に達した子で扱いが分かれる
自立して生活できない子(未成熟子)に対する親の扶養は、子の生活を親自身と同じ程度に保つ「生活保持義務」と呼ばれます。離婚後の養育費も、この考え方に立っています。
これに対して、成年に達した子に対する扶養は、親族間の一般的な扶養と同じく「生活扶助義務」にとどまるとするのが通常の理解です。生活扶助義務は、扶養を受ける側が自力で生活できない状態にあり、扶養する側に自分の生活を保ったうえで余力がある場合に、その範囲で援助すれば足りるとされます。
| 区分 | 義務の性質 | 求められる程度 |
|---|---|---|
| 未成熟の子 | 生活保持義務 | 親と同じ程度の生活水準を保つ |
| 成年に達した子 | 生活扶助義務 | 子が自活できない状態にあるとき、親の余力の範囲で援助する |
2022年4月から成年年齢は18歳になっています。大学生の多くはすでに成年に達しているため、親が学費を負担することは、法律上当然に求められるものではない、というのが出発点になります。もっとも、入学直後でまだ18歳になっていない子については、未成年の子として扱われる点に注意が必要です。
税や健康保険の「扶養」とは別の話
「扶養」という言葉は、所得税の扶養控除や健康保険の被扶養者でも使われます。これらは、それぞれの制度が定める要件で判断されるもので、民法上の扶養義務があるかどうかとは別の仕組みです。学費を出さないと決めたことで、税や保険の扶養がどう変わるかは、子の収入や生計の状況によって判断が分かれるため、必要に応じて税理士や勤務先の担当部署に確認するのが確実です。
子から扶養料を求められるのは、どのような場面か
親が学費を出さないと決めた後、子の側から扶養料の支払いを求めてくることがあります。親子の話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所の扶養請求調停や審判の手続で扱われます(民法878条・879条)。扶養の程度や方法は、当事者の協議が整わないときに、扶養を受ける側の必要、扶養する側の資力その他一切の事情を考慮して家庭裁判所が定める仕組みです。
成年の大学生について、扶養料を認めた裁判例がある
成年に達した大学生が親に扶養料を求めた事案で、家庭裁判所が「健康な成人には働く力がある」ことだけを理由に請求を退けたのに対し、高等裁判所がその判断を取り消した例があります(東京高裁平成12年12月5日決定)。
また、東京高裁平成22年7月30日決定は、成年に達した子は原則として自活すべきであり、親が大学の学費を負担すべきとは直ちにはいえないとしながら、大学進学が一般的になっている状況、親の資力、学業を優先する結果として生活費が不足することなどを考慮し、一定の扶養料の支払いを命じています。もっとも、認められた金額は月額で数万円程度にとどまり、学費や生活費の全額ではありませんでした。
判断の際に考慮されやすい事情
公表されている裁判例や解説を見ると、成年の大学生への扶養料が問題になる場面では、次のような事情が総合的に考慮される傾向があります。
- 親の収入や資産など、援助する余力があるかどうか。
- 親が大学進学に同意していたか、学費を出すと約束していたか。
- 親の学歴や家庭環境から見て、大学進学が自然な選択といえるか。
- 子がアルバイトや奨学金でどこまで自力でまかなえるか。
- 子の学業への取り組み方や、在学年数の見通し。
- 親子関係が悪化した経緯と、その原因がどちらにあるか。
つまり、学費を出さないと決めたからといって、それだけで違法とされるわけではありませんが、事情によっては一部の負担を求められる余地も残ります。「出さない」か「全部出す」かの二択ではなく、どの程度なら負担できるのかという観点で考えておくと、話し合いでも手続でも見通しを立てやすくなります。
留年や大学院進学、再入学の場合
留年が続いている場合や、卒業後に大学院へ進む場合、いったん退学した後に別の大学へ入り直す場合は、通常の4年間の在学と比べて、親に負担を求める根拠は弱まると考えられます。ただし、病気による休学など、子の責任とはいえない事情で在学期間が延びた場合は、別に考える必要があります。どこまでを親が支え、どこからを子自身の選択として本人に任せるのか、親子で線を引いておくことが大切です。
学費を止める前に確認しておきたいこと
法的な扶養義務の問題とは別に、親自身が当事者になっている約束や契約が残っていると、学費を止めても親の負担がなくならないことがあります。
入学時の約束や書面が残っていないか
「卒業までは学費を出す」と書面で約束していた場合や、親子で取り決めをしていた場合、その内容によっては約束として効力が問題になることがあります。口頭の約束であっても、やり取りの記録が残っていれば、扶養料の判断で考慮される事情になりえます。
親名義の契約や保証がないか
教育ローンを親の名義で借りている場合、返済義務を負うのは親です。子の一人暮らしの部屋の賃貸借契約で親が連帯保証人になっている場合や、奨学金の連帯保証人になっている場合も、学費の支払いをやめても保証の責任は残ります。どの契約に親の名前が入っているかを、先に一覧にしておくことをおすすめします。
奨学金や授業料の減免にどう影響するか
大学の授業料減免や公的な奨学金の多くは、親(生計を維持している人)の収入を基準に審査されます。親が学費を出さないと決めても、親の収入が一定以上あると、子が支援を受けにくい状況が続くことがあります。弁護士ドットコムに寄せられた相談でも、親から援助を打ち切られたものの、親の収入が基準を超えるため奨学金も使えず困っているという声が見られます。子の進路を閉ざすことが本意でないのであれば、支援制度の利用可能性もあわせて確認しておくと、話し合いの材料になります。
離婚している場合は、養育費の取り決めを確認する
離婚の際に「大学卒業まで養育費を支払う」などと取り決めている場合は、学費の問題とは別に、その取り決めに沿った支払い義務が続くことがあります。取り決めの内容と、公正証書や調停調書になっているかどうかを確認しておくことが大切です。
伝え方と時期で、その後の展開は変わる
学期の途中で突然支払いを止めると、子が学費を納められず、除籍などの不利益が生じることがあります。そうなると、子の反発が強まり、親子関係の修復がいっそう難しくなるおそれもあります。
止めると決めた場合でも、次のような進め方を検討すると、後のトラブルを抑えやすくなります。
- いつの学期分から負担しないのか、時期を具体的に伝える。
- 全部をやめるのか、一部(授業料のみ、生活費のみなど)を続けるのかを整理する。
- 奨学金の申請やアルバイトの調整に必要な期間を見込んで、早めに伝える。
- 伝えた内容と時期を、メールや書面など後で確認できる形で残す。
これまで渡したお金を「貸したもの」として返してほしいと考える場合は、贈与だったのか貸付だったのかが争いになりやすいため、別に整理が必要です。
暴力や金銭の要求が背景にある場合
学費の問題が、子からの暴言や暴力、学費を名目にした繰り返しの金銭要求と結びついている場合は、扶養義務の範囲を考える以前に、親の安全と生活を守ることを優先する必要があります。成年の子からの要求に応じ続ける法的な義務はなく、断ること自体は正当な判断です。
ただ、親子の間で直接やり取りを続けると、感情的な衝突が繰り返され、親の側が疲弊してしまうことも少なくありません。当事務所では、弁護士が親の代理人として子との窓口になり、自立支援のカウンセラーと連携して、子の生活の立て直しも含めて対応しています。
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学費の判断に迷ったら、早めに整理を
大学生の子の学費を出さないと決めること自体は、親の判断として尊重されるものです。一方で、親の資力や進学時の約束、親名義の契約の有無によっては、一定の負担を求められたり、保証の責任が残ったりすることもあります。止める時期や範囲、伝え方を含めて、事前に事情を整理しておくことが、親子双方の不利益を小さくすることにつながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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