【親子問題】子が性犯罪の加害者側になった場合|改正後の罪名と、親が関われる範囲
雨漏りや水回りの故障、給湯器の交換、ガスの定期点検など、家に業者を入れなければならない場面は暮らしの中で必ず訪れます。ところが、同居している成人の子が「家に他人を入れるな」「部屋には絶対に入らせない」と拒み、修理の日程が決められないまま時間だけが過ぎていく、というご相談は少なくありません。この記事では、子が修理や業者の立ち入りを拒むときに、法律上の関係をどう整理し、どのような順序で立ち入りを実現していくかを解説します。
本記事は、成人した子が親の持ち家、または親が借りている住まいに同居している場面を想定しています。分譲マンションの管理規約や賃貸借契約の定めは物件ごとに異なるため、実際の対応は手元の規約や契約書を確認したうえでご判断ください。
子が修理や点検を拒む場面
- 雨漏りや外壁のひび割れで、子の部屋の天井や壁の確認が必要な場合。
- 給排水管の漏水が疑われ、階下の住戸にも影響が出ている場合。
- 給湯器や換気扇、エアコンの故障で交換工事が必要になった場合。
- ガスの定期的な安全点検や、マンションの排水管清掃・消防設備点検の日程が来た場合。
- シロアリや床下の点検で、家全体を業者に見てもらう必要がある場合。
子が拒む理由はさまざまです。長くひきこもっていて見知らぬ人と顔を合わせること自体に強い不安がある、自室の中を見られたくない、部屋に物がたまっていて知られたくない、親が自分の生活に踏み込んでくることへの反発がある、といった事情が重なっていることもあります。拒否の背景を少しでも読み取れると、どこまでなら受け入れてもらえるかの見当がつけやすくなります。
家の修理を決めるのは誰か
最初に整理しておきたいのは、修理を決める権限がどこにあるかです。住まいの形によって、関係する人と、子が拒んだときに影響を受ける人が変わります。
| 住まいの形 | 修理を決める・求める人 | 子が拒んだときに主に影響を受ける人 |
|---|---|---|
| 親の持ち家(一戸建て) | 所有者である親 | 所有者である親 |
| 親が借りている家 | 貸主(大家) | 借主である親 |
| 親が所有する分譲マンション | 所有者である親、管理組合 | 区分所有者である親、階下などの住戸 |
親の持ち家の場合
家の所有者は親であり、建物をどう修理し、どの業者に依頼するかは本来、所有者である親が決めることです。成人した子が家賃を払わずに同居している場合、親子の間には、無償で家を使わせる「使用貸借」に近い関係があると考えられることが多いでしょう。
使用貸借の借主は、家を使わせてもらう立場にとどまります。法律に明文の定めがあるわけではありませんが、所有者が建物を保存するために行う修理を、使わせてもらっている側が一方的に止められると考える根拠は乏しいといえます。もっとも、権限があることと、子が反発している中で実際に業者を入れられることとは別の問題です。後述する進め方とあわせて考える必要があります。
親が借りている家の場合
賃貸住宅では、貸主には建物を修繕する義務があり(民法606条1項)、借主は、貸主が建物の保存に必要な行為をしようとするときにこれを拒むことができません(同条2項)。この受忍義務を負っているのは契約上の借主である親です。そのため、同居している子が業者の立ち入りを拒めば、契約上は借主である親の対応として扱われることになります。
上の階からの漏水の調査のための立ち入りを入居者が拒み続けた事案で、東京地方裁判所平成26年10月20日判決は、正当な理由のない拒絶を賃貸借契約上の債務不履行にあたると判断しています。ただし、契約の解除まで認められるかどうかは、貸主と借主の信頼関係が壊れたといえるかで判断されるとしており、拒否があればすぐに退去を求められるという関係ではありません。とはいえ、修理を受け入れられない状態が続けば、貸主との関係が悪化していくおそれがあります。
分譲マンションの場合
区分所有法6条2項は、区分所有者が自分の専有部分や共用部分を保存・改良するために必要な範囲で、他の区分所有者の専有部分の使用を請求できると定めています。国土交通省のマンション標準管理規約も、管理を行う者が必要な範囲で専有部分への立入りを請求できること(23条1項)、請求を受けた者は正当な理由がなければ拒否してはならないこと(同条2項)、正当な理由なく拒否した者はその結果生じた損害を賠償しなければならないこと(同条3項)を定めています。
さらに標準管理規約3条2項は、区分所有者は同居する者にも規約や総会の決議を守らせなければならないとしています。多くのマンションの管理規約はこの標準管理規約を参考に作られているため、同居する子が立ち入りを拒んだ場合、管理組合や階下の住人との関係では、所有者である親が対応を求められることになります。
拒否が続くと何が起きるか
修理の拒否で困るのは、多くの場合、子ではなく親です。
- 雨漏りや漏水が放置され、建物の傷みが広がって修理費用がかさみます。
- 階下に水が漏れ、所有者や占有者として損害の賠償を求められることがあります。
- 賃貸住宅では、貸主との信頼関係が損なわれ、契約の継続に影響するおそれがあります。
- マンションでは、管理組合からの再三の通知や、他の住戸からの苦情に親が対応し続けることになります。
- ガス設備などの点検ができず、安全上の不安を抱えたまま暮らすことになります。
こうした影響があることを、親自身がまず把握しておくことが大切です。そのうえで、子にも「修理をしないと家族全員が困ることになる」という事実として伝えていくことになります。
立ち入りを実現するための進め方
- 修理が必要な理由を、写真や業者の見積書、管理会社からの通知などの形で示し、親の気分ではなく必要に迫られていることを伝えます。
- 工事の範囲と所要時間を具体的に区切り、子の部屋に入らずに済む方法がないかを業者に確認します。
- 日時の候補を複数用意して子に選んでもらう、子が外出している時間帯に設定するなど、子が受け入れやすい条件を探します。
- 子の部屋に入る必要がある場合は、どこに、何分くらい、何をするために入るのかをあらかじめ伝え、本人の立会いも提案します。
- 親子だけで話がまとまらないときは、管理会社や貸主から子あてに案内を出してもらうなど、第三者の言葉を借りることも検討します。
子の部屋の中が対象になるとき
家全体の管理を親が担っているとしても、子の部屋の中には子の私物があり、本人にとっては最も踏み込まれたくない場所です。修理に必要な範囲を超えて物を動かしたり、部屋の中を調べたりすれば、修理そのものへの反発が強まり、親子の関係もこじれやすくなります。子の不在中に鍵を壊して入る、私物を勝手に処分するといった対応は、新たな争いの火種になりかねません。自分で実力を使って解決しようとすることの問題点は、【親子問題】鍵を替える・締め出すことの可否|自力救済の限界でも解説しています。
業者に伝えておきたいこと
業者には、家族の中に立ち入りを望んでいない人がいること、当日の作業範囲をできるだけ限定したいことを事前に伝えておくと、当日の段取りを組んでもらいやすくなります。業者に子の説得を任せたり、親子の話し合いの場に業者を立ち会わせたりすることは避け、子への説明は家族の側で済ませておくのが基本です。
暴言や暴力があるとき
修理の話を持ち出すと子が激しく怒る、物を壊す、業者が来たら何をするか分からないと口にする、といった状況では、修理の段取りよりも先に家族と業者の安全を考える必要があります。業者に危害を加えると告げたり、作業を力ずくで妨げたりすれば、刑事上の問題に発展することもあります。身の危険を感じる場面での警察への連絡については、【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかをご覧ください。修理を拒む過程で壁や設備を壊された場合の扱いは、【親子問題】壁や家具を壊された|器物損壊として扱えるかで整理しています。
記録しておきたいこと
- 修理が必要になった時期と、不具合の状態が分かる写真。
- 業者の見積書や点検の案内、管理会社や貸主からの通知。
- 子に修理の話をした日時と、子の返答や態度。
- 予定していた日程が中止になった経緯と、その結果生じた費用や影響。
こうした記録は、管理会社や貸主に事情を説明するときに役立つほか、後に同居の見直しを考える場面で、子との関係がどのような経過をたどってきたかを示す材料にもなります。
修理の拒否が、同居を見直すきっかけになることも
修理や点検は一度で終わるものではなく、住み続ける限り繰り返し訪れます。そのたびに子の拒否と向き合うことになるなら、立ち入りの問題は、同居のあり方そのものを考えるきっかけと捉えることもできます。使用貸借の関係を終わらせて家から出てもらうことができるかについては、【親子問題】子を家から出ていかせることはできるのか|占有と明渡しで詳しく解説しています。
親子だけの話し合いが行き詰まっているときは、弁護士が親の代理人として子との連絡窓口を引き受ける方法もあります。窓口を代えることの意味は【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択、最初に子へどのような連絡を入れるのかは【親子問題】弁護士から子に最初の連絡が入るとき|通知で伝えることで紹介しています。当事務所では、自立支援カウンセラーと役割を分担しながら、親子それぞれの生活を立て直していく支援を行っています。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。
家の修理は、子の気持ちに配慮しつつも、いつまでも先延ばしにできるものではありません。所有者や借主としての立場を確かめ、子が受け入れやすい条件を探しながら、それでも進まないときには第三者の力を借りるという順序で考えていくことが、家と家族の双方を守ることにつながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


