【刑事事件】交際相手から「レイプされた、訴える」と言われたら?

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

この記事は、2023年7月施行の刑法改正(強制性交等罪から不同意性交等罪への改正)と、2025年6月施行の拘禁刑の導入を反映した内容です。


交際中や別れ話の最中に、相手から「あれはレイプだった」「訴える」と言われる。こうしたご相談は、ご本人だけでなくご家族から寄せられることも少なくありません。言われた側は、身に覚えがないという思いと、取り返しのつかないことをしたのではないかという不安の間で揺れ動き、何から手をつければよいか分からなくなりがちです。

 この記事では、交際相手からこのように告げられた段階で、法律上どのような可能性があるのか、その直後に避けたい行動と残しておきたい記録、手続が進んだ場合の見通しを順に整理します。

「訴える」という言葉が指しうる3つの意味

 相手の「訴える」という言葉が、具体的に何を指しているのかは人によって異なります。まずは、どの手続を念頭に置いた発言なのかを切り分けることが、落ち着いて対応するための出発点になります。

種類主な中身手続の担い手
刑事警察への被害届の提出、告訴警察・検察
民事慰謝料などの損害賠償の請求、訴訟の提起相手本人・相手の代理人・裁判所
その他家族・職場・共通の知人への申告、SNSでの発信相手本人


 刑事と民事は別々の手続で、どちらか一方だけが進むことも、両方が並行して進むこともあります。また、怒りや悲しみの中で口にされた言葉で、実際の手続を意図していない場合もあります。いずれにせよ、言葉の強さだけで今後を判断せず、相手がどの段階にいるのかを見極めることが大切です。

交際中でも不同意性交等罪は成立する

 「付き合っていたのだから同意があったはずだ」と考える方は少なくありません。しかし、刑法177条の不同意性交等罪は、婚姻関係の有無にかかわらず成立すると条文に明記されています。夫婦間で成立し得る以上、交際関係にある二人の間でも成立し得ます。

同意は行為ごとに判断される

 交際しているという事実は、同意があったことをうかがわせる事情の一つにはなり得ます。ただし、それは個々の性行為について同意があったことを当然に意味するものではありません。その日、その場面で、相手が性行為に応じる意思を持っていたかどうかが問われます。

 改正後の刑法は、暴行や脅迫、アルコールの影響、睡眠などの意識がはっきりしない状態、経済的・社会的な地位に基づく影響力など、8つの事情を挙げています(刑法176条1項各号)。これらの事情によって、相手が同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが難しい状態で性交等をした場合に罪が成立します。はっきりした拒絶の言葉がなかったとしても、それだけで成立が否定されるわけではない点に注意が必要です。

罪の重さと時効

 不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑です。被害届や告訴がなくても捜査を始められる罪であり、公訴時効は15年とされています。相手が「今すぐ訴える」と言っていなくても、時間が経ってから手続が始まる可能性はあります。

 関連する解説として、次の記事もあわせてご覧ください。


言われた直後に避けたい行動

 相手から告げられた直後は、気持ちが動転し、何とかその場を収めようとして行動しがちです。しかし、その場の対応が後の手続で不利に評価されることがあります。特に次のような行動は、いったん立ち止まって考えることをおすすめします。

  • 相手に何度も連絡し、同意があったと説得しようとすること。
  • 相手の自宅や職場を訪ねて、直接話し合おうとすること。
  • 「無理やりだった」「全部自分が悪い」といった内容の謝罪文を、求められるまま書いて渡すこと。
  • LINEやメール、写真などのやり取りを削除すること。
  • 「警察には言わないでほしい」と頼み、その見返りとして金銭を申し出ること。
  • 共通の知人やSNSで、相手の言い分を否定する発信をすること。


 繰り返しの連絡や訪問は、相手の恐怖心を強めるだけでなく、つきまといとして別の問題を生むおそれがあります。また、やり取りの削除は、自分に有利な記録まで失うことにつながり、捜査の場面で証拠隠滅を疑われる原因にもなり得ます。

 謝罪については、相手を傷つけたこと自体へのお詫びと、行為の性質を認めることとは分けて考える必要があります。事実と異なる内容の書面に署名すると、後から「そのつもりではなかった」と説明しても、書面の記載が重く見られることがあります。

残しておきたい記録

 刑事・民事のどちらの手続になっても、当時の状況を示す記録が重要な意味を持ちます。記憶が鮮明なうちに、次のようなものを整理しておくことが考えられます。

  • 交際を始めた時期と、交際の経過が分かるやり取り。
  • 問題とされている日の前後の連絡内容や、待ち合わせ・移動の記録。
  • 行為の後に相手と交わした会話やメッセージ。
  • 「レイプされた」「訴える」と言われたときのやり取り。
  • 当日の出来事を自分の言葉でまとめた時系列のメモ。


 記録は、自分に都合のよい部分だけを抜き出すのではなく、前後の流れが分かる形で、加工せずに保存しておくことが大切です。行為の後に相手が普段どおりのやり取りを続けていたといった事情は、同意をめぐる判断で検討の対象になることがあります。一方で、そうした事情があれば必ず同意が認められるというものでもありません。


刑事手続に進んだ場合の見通し

 相手が警察に被害を申告し、被害届や告訴状が受理されると、捜査が始まります。警察から電話で事情を聞きたいと連絡が来ることもあれば、事案の内容によっては、事前の連絡なく逮捕されることもあります。

 性犯罪は密室で起こることが多く、相手の供述が重要な証拠になります。そのため、相手の供述だけで逮捕や起訴に至る可能性はゼロではありません。ただし、捜査機関は、供述の内容が当時のやり取りや行動の記録と矛盾しないかも確認します。交際の経過や行為前後のメッセージは、その検証の材料になります。

取調べで気をつけたいこと

 取調べでは、記憶のとおりに話すことが基本です。推測で答えたり、取調官の言葉に合わせて話を作ったりすると、後から供述の食い違いとして扱われるおそれがあります。作成された供述調書は、内容を確認し、事実と異なる部分があれば訂正を求めることができます。黙秘権もあり、話すか黙るかの方針は、事情を踏まえて弁護士と相談して決めることが望ましいといえます。


金銭を求められた場合の考え方

 「訴えられたくなければ払え」といった形で、金銭を求められることもあります。被害を受けたと考える人が、損害の賠償を求めること自体は正当な権利の行使です。他方で、要求の方法や金額が社会的に許される範囲を大きく超える場合には、恐喝にあたるかが問題になることもあります。どちらにあたるかは、具体的な言葉や経緯によって判断が分かれます。

 注意したいのは、当事者同士の口約束で金銭を渡しても、それで問題が終わるとは限らない点です。弁護士ドットコムの相談事例にも、別れた後に元交際相手の代理人から賠償を求められ、金額の調整をしているうちに民事訴訟を起こされたという内容が見られます。支払いをするのであれば、何に対する支払いで、何を約束するのかを書面で明確にしておく必要があります。


振り返り方によって進め方は変わる

 同じ「訴える」と言われた状況でも、当時の出来事をどう振り返るかによって、取るべき対応は異なります。

同意があったと考えている場合

 自分としては同意があったと考えている場合でも、相手に直接反論を続けることは避け、記録の整理と専門家への相談を優先することが考えられます。示談をするかどうかも、事実を認めることになるのか、どのような条項を入れるのかを確認したうえで判断する必要があります。なお、虚偽の申告で人に刑事処分を受けさせる目的の告訴は、虚偽告訴罪として処罰の対象になり得ます。ただ、虚偽であることの立証は容易ではないため、反撃を前提に動くのではなく、まずは自分の身を守る準備を整えることが現実的です。

相手が拒んでいた可能性に思い当たる場合

 振り返ってみると、相手が嫌がっていた、断りにくい状況だったと思い当たることもあるかもしれません。その場合は、相手の気持ちに配慮した謝罪や被害の回復を、弁護士を通じて検討することが考えられます。本人が直接連絡を取ると、相手にさらに負担をかけたり、圧力と受け取られたりするおそれがあるためです。示談が成立したとしても、それだけで刑事処分が必ず避けられるわけではありませんが、処分を判断するうえで考慮される事情の一つになります。

弁護士に相談するタイミング

 「訴える」と言われた段階では、まだ被害届が出ていないことも多く、この時期にできることは少なくありません。相手との連絡の取り方、記録の残し方、警察から連絡が来た場合の対応を事前に整理しておくことで、後の手続で慌てずに済みます。

 また、弁護士が代理人として窓口になることで、当事者同士の感情的な衝突を避けながら、相手の意向を確認することもできます。相手に代理人がついている場合でも、こちらが一人で対応する必要はありません。

 交際相手から「レイプされた、訴える」と告げられたとき、その言葉の重さに圧倒されてしまうのは自然なことです。ただ、交際中であっても罪が成立し得ること、そして直後の行動が後の評価に影響することを踏まえると、一人で抱え込まず、事実を整理するところから始めることが大切です。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【刑事事件】交際相手から「レイプされた、訴える」と言われたら?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼