交際が続いていた相手から告訴された|継続的関係と同意の認定

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

交際が続いていた相手から「告訴した」と告げられた。あるいは警察から連絡が入り、交際していた相手が被害を申告していると知らされた。交際関係のある相手との間で不同意性交等罪が問題になる場面では、こうした形で事態を知ることが少なくありません。

 このとき戸惑いの中心になるのは、多くの場合「関係が続いていたのに、なぜ」という点です。ただ、刑事手続の側から見ると、問われているのは関係そのものではなく、特定の日の行為です。そして「告訴」という言葉には、被害届とは違う手続上の意味があります。

 この記事では、交際が続いていた相手から告訴された、あるいは告訴されるかもしれないという段階にある方に向けて、告訴という手続が何を動かすのか、継続的な関係が同意の判断でどう扱われるのかを整理します。事実と違う説明を組み立てるためのものではなく、いま自分がどの位置にいるのかを把握するための整理です。

この記事で扱うこと、扱わないこと

 扱うのは、告訴という手続が制度上どう位置づけられているか、継続的な関係が同意の判断でどのように扱われるか、そしてこれから起きやすいことの三つです。

 扱わないのは、示談金の金額、法定刑や量刑の見通し、刑法176条1項に並ぶ8つの類型の逐条的な説明です。これらは事案ごとの幅が大きく、一般論として書いても判断の材料になりにくいためです。

「告訴された」と言われたとき、まず分けて考えること


相手から直接伝えられた場合

 「告訴した」という言葉は、日常のやり取りでは「警察に言った」「訴えた」という程度の意味で使われることがあります。制度上の告訴と一致しているとは限りません。

 実際には、警察署で相談として話を聞いてもらった段階、被害届として受理された段階、告訴状を持参したものの受理の判断がまだ出ていない段階など、いくつもの段階があります。相手の言葉だけからどの段階にあるのかを見分けるのは難しく、この時点で結論を決めてしまうと、後の対応がかみ合わなくなることがあります。

警察や検察から連絡が来た場合

 出頭を求められた、話を聞きたいと言われた、という形で連絡が来ることがあります。この段階で罪名や日付まで伝えられることもあれば、詳しくは説明されないこともあります。

 少なくとも、連絡してきた機関の名称と部署、担当者の氏名、いつの何についての話なのかは、その場でメモしておくと後の相談がスムーズになります。分からないまま日程だけ決めてしまうと、当日になって前提を確認することになりがちです。

告訴と被害届は、制度としてどこが違うのか

 被害届は、被害に遭った事実を届け出るものです。これに対して告訴は、犯罪事実を申告したうえで、犯人の処罰を求める意思を示すものと理解されています。実務では似た場面で使われますが、法律上の扱いには次のような違いがあります。

項目被害届告訴
方式を定めた規定刑事訴訟法に対応する規定は見当たらない(犯罪捜査規範61条1項に受理についての定め)書面又は口頭で、検察官又は司法警察員に対して行う(刑事訴訟法241条1項)
受けた側に生じること対応する規定は見当たらない速やかに書類及び証拠物を検察官に送付しなければならない(同法242条)
取下げ・取消しの定め対応する規定は見当たらない公訴の提起があるまで取り消すことができ、取り消した者は再び告訴できない(同法237条1項・2項)
処分結果の通知対応する規定は見当たらない検察官が起訴・不起訴の処分をしたときは告訴人に通知される(同法260条)
期間の制限定めなし親告罪については犯人を知った日から6か月(同法235条本文)


 表のうち実務上の意味が大きいのは、告訴を受けたときの送付についての定めです。司法警察員が告訴を受けたときは、速やかに書類及び証拠物を検察官に送付しなければならないとされています。警察の段階だけで話が収まるという道筋が、制度としては置かれていないということになります。

 なお、この条文を「速やかに捜査を行う義務」と説明している解説を見かけることがありますが、条文が定めているのは送付です。捜査を急ぐことについては、警察内部の規則で努めるべきものとされています。細かい違いに見えますが、告訴があれば捜査が一気に進むと考えるか、書類が検察官のもとへ渡ると考えるかで、見通しの立て方が変わります。

性犯罪の告訴は「事件を始めるための条件」ではない

 不同意性交等罪は、被害者の告訴がなくても起訴できる非親告罪です。性犯罪については平成29年の法改正で親告罪ではなくなり、この点は現在も変わっていません。

 したがって、告訴されたから当然に起訴されるというものではなく、告訴がないから終わるというものでもありません。告訴が持つ意味は、処罰を求める意思が明確な形で記録に残るという点にあります。起訴するかどうかの判断では、犯人の性格や年齢、境遇、犯罪の軽重や情状、犯罪後の状況が考慮されるとされており(刑事訴訟法248条)、相手方の意思はその中の一つの事情として扱われます。

交際期間中の出来事でも、入口が時間で閉じるわけではない

 告訴には6か月の期間制限があると説明されることがあります。これは親告罪についての定めであり(刑事訴訟法235条本文)、非親告罪である不同意性交等罪には及びません。関係が続いている間は申告しにくく、別れた後になって申告されるという経過は、実際に起こります。

 もっとも、時間が空いたという事情だけで同意の有無や供述の信用性が決まるわけでもありません。一方で、時間が経つほど当時の記録は残りにくくなります。通信記録や施設の映像には保存期間があり、後から取り寄せられないものが出てきます。

 なお、公訴時効については、不同意性交等罪とその未遂は15年とされ、被害者が行為の終わった時点で18歳未満だった場合には期間が加算されます(同法250条3項2号・4項)。時間の経過を待つという発想が現実的でないのは、この点からも分かります。

告訴の対象になるのは「関係」ではなく、特定の日の行為

 告訴は犯罪事実の申告です。したがって申告されるのは、いつ、どこで、どのような行為があったか、という個別の出来事になります。関係そのものが対象になるわけではありません。

 交際が続いていた相手との間では、性的な接触が複数回あることが通常です。そのため、そのうちのどの日の行為が問題になっているのかが、最初の分岐点になります。ここが定まらないまま「自分たちはずっと交際していた」と関係全体を語ると、聞かれていることと答えていることの単位がずれたまま、供述だけが積み上がることになります。

複数回のうち一部だけが対象になることがある

 関係のあった期間全体が問題にされているのか、特定の一回なのかで、確認すべき記録も説明すべき経緯も変わります。相手の申告が複数の日に及んでいることもあります。

 自分が説明しようとしている出来事と、捜査機関が確認しようとしている出来事が同じ日のことなのか。取調べの初期にこの点がずれると、後から訂正するのに手間がかかります。

日付が特定されていない申告もある

 「ある年の何月ごろ」という形で申告されることもあります。この場合、どの出来事についての話なのかを取り違えたまま、記憶をたどって答えてしまうことが起こりがちです。

 分からないことは分からないと述べたうえで、日付を特定するために手がかりになる記録(移動の記録、予約履歴、勤務の記録など)を確認していく、という順序のほうが、後で整合しやすくなります。

継続的な関係は、同意の認定でどう扱われるか

 判断の対象になるのは、その日、同意しない意思を形成し、表明し、あるいは全うすることが困難な状態だったといえるか、そしてその状態について行為者にどのような認識があったか、という二つの点です。

 関係が続いていたという事情は、この二つを直接決めるものではなく、周辺の事情の一つとして扱われます。しかも、その読まれ方は一方向ではありません。関係が続いていたことは、拒まれる様子がなかったという説明を支える方向にも働きますし、断りにくい関係だったという説明を支える方向にも働きます。どちらに読まれるかは、その日の具体的な経過や前後のやり取りとあわせて判断されます。

過去の同意は、その日の同意とは別に扱われる

 「前も同じようにしていた」という説明は、関係の経過を伝える材料にはなります。ただ、当日の判断を置き換えるものとしては扱われません。

 また、この説明は、当日以外の日の出来事についての説明としても読まれることがあります。同じ状況が繰り返されていたという趣旨で述べたつもりでも、別の日の行為に話が広がる入口になることがあるという点は、意識しておいたほうがよいところです。

残っているやり取りは、何を裏づけるのか

 交際が続いていた場合、メッセージ、写真、通話の履歴、移動や宿泊の記録が手元に残っていることが多くあります。これらは、関係が続いていたことや、当日の行動の経過を裏づける材料になります。

 一方で、それがそのまま当日の同意を示すものとして扱われるとは限りません。行為の前後のやり取りは、前後関係や表現の細かなところで読み方が変わります。好意的なやり取りが残っていることをもって説明が完結する、という考え方は取りにくいところです。

 そのうえで、手元の記録を消さないことは重要です。削除したデータが後から復元されることはあり、その場合、なぜ消したのかという点まで説明が必要になります。整理のつもりの操作が、余計な争点を作ってしまうことがあります。

連絡が取れる相手だからこそ、起きやすいこと

 交際が続いていた相手の場合、連絡先も生活圏も分かっていることがほとんどです。そのため「直接話せば分かってもらえるのではないか」と考えやすい状況にあります。

 しかし、被害を申告している相手に本人から連絡を取ることは、内容にかかわらず、証拠を隠したり供述に影響を与えたりするおそれがあると評価されることがあります。この評価は、身柄を拘束するかどうかの判断にも関わってきます。謝罪の気持ちからの連絡であっても、受け取られ方は変わりません。

  • 相手に直接連絡し、事情を確かめようとすること。
  • 共通の知人に間に入ってもらうこと。
  • 相手が見る可能性のある場所に、事件に関する内容を書き込むこと。
  • 端末のデータやメッセージのやり取りを消すこと。
  • 相手の自宅や職場の近くに立ち寄ること。


 相手方とのやり取りが必要になる場面では、代理人を通じて行う形にするのが一般的です。その場合でも、相手方が連絡を望まないこともあり、連絡先の開示に時間がかかることもあります。

取調べで言葉が固まる前に

 交際関係のある事件では、関係が始まった経緯から現在に至るまで、長い期間について尋ねられることが多くあります。そのため、実際に覚えていることと、後から振り返って推測したことの区別があいまいになりやすい場面です。

  • 記憶している範囲と、そうでない範囲を分けて述べる。
  • 分からない部分を「たぶん」で埋めない。
  • 日付や回数は、記録で確認できるものと、記憶に頼るものを分ける。
  • 調書は読み聞かせを受けたうえで、内容が違うと思う箇所は増減変更を申し立てることができる(刑事訴訟法198条)。
  • 署名押印を拒むこともできる。


 いったん調書として形になった説明は、後から変えると変遷として扱われます。急いで整えるより、その日に述べられる範囲にとどめるほうが、結果として説明の一貫性を保ちやすくなります。

告訴の取消しや示談は、どこに位置づけられるか

 非親告罪であるため、告訴が取り消されても手続がそれで終わるというものではありません。ただ、処罰を求める意思が変わったことは、起訴するかどうかの判断で考慮される事情の一つになります。

 告訴の取消しができるのは公訴の提起があるまでで、取り消した者は再び告訴することができません(刑事訴訟法237条1項・2項)。相手方にとっては後戻りのできない判断になるため、応じにくいと受け止められることもあります。示談の話も含め、この種のやり取りは代理人を通じて進めるのが通例です。

相談の前に整理しておくと役立つこと


  1. 相手から告訴と言われたのか、警察や検察から連絡があったのか。
  2. 連絡があった機関の名称と部署、担当者の氏名、連絡があった日。
  3. 対象になっていそうな日と場所を、分かる範囲で。
  4. 関係がいつ始まり、いつ、どのような形で変わったか。
  5. 手元に残っているやり取りの種類と、保存されている期間。
  6. 申告を知った後に、相手や共通の知人との接触があったかどうか。


 これらは、事実を説明するための材料であって、説明を作るためのものではありません。分からない部分は分からないまま持ち込んでかまいません。

弁護士に確認できること


  • いま自分がどの段階にいて、次に何が起きやすいのか。
  • 出頭を求められた場合の日程の調整と、当日に確認しておくこと。
  • 捜査機関に対して意見書や上申書を出すことを検討すべきかどうか。
  • 相手方との連絡を代理人が引き受ける形にできるかどうか。
  • 手元の記録のうち、保全しておいたほうがよいもの。


 弁護士は、処分の結果を約束できる立場にはありません。ただ、いまの段階で選べる手が何かを整理し、避けたほうがよい動きを先に共有することはできます。

立場が逆の場合

 交際していた相手から性的な行為を受けたという立場でこの記事を読んでいる方もいると思います。その場合は、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)や、警察の性犯罪被害相談電話(#8103)が相談の窓口になります。

 告訴には方式についての定めがあり、代理人によって行うこともできます(刑事訴訟法240条)。何から進めればよいか分からない段階でも、相談先はあります。

まとめ


  • 「告訴した」と言われても、制度上の告訴として受理されているとは限らない。
  • 告訴には方式の定めがあり、告訴を受けた司法警察員には書類及び証拠物を検察官に送付する定めがある。
  • 不同意性交等罪は非親告罪であり、告訴は起訴の条件ではないが、処罰を求める意思として考慮される。
  • 親告罪の6か月の期間制限は及ばないため、交際期間中の古い出来事でも入口が時間で閉じるわけではない。
  • 告訴の対象は関係そのものではなく、特定の日の行為であり、どの日かを取り違えたまま話すと供述がずれる。
  • 関係が続いていたことは、同意を支える方向にも、断りにくかったという説明を支える方向にも読まれる。
  • 手元の記録は消さず、相手方への直接の連絡は代理人を通じて行う。


 交際が続いていた相手からの申告は、当事者にとっては関係全体の話に感じられます。手続の側は、その中の特定の一日を見ています。この視点の差を早い段階で認識できるかどうかが、その後の説明の整合性を左右します。

 当事務所では、初回無料でのご相談を受け付けており、24時間の相談受付と即日の接見に対応しています。出頭に際しての同行についても、全国での対応が可能です(移動にかかる費用は別途となります)。どの段階からでも、まずは事実関係の整理からご一緒します。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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