アカウントを消せばよいのか|投稿削除と証拠保全の関係
賭博に関する事件では、同じ店や同じグループに関わっていた人であっても、一人ひとり問われる罪名が異なることがあります。店を切り盛りしていた人は賭博場開張等図利罪、賭けに加わっていた人は単純賭博罪や常習賭博罪、受付や見張りを担当していた人はそのいずれかの共犯、というように、「どのような関与だったのか」によって結論が分かれるためです。ここでは、刑法185条・186条が想定している関与の型と、共同正犯と幇助が分かれる基準を、判例・裁判例の考え方に沿って整理します。
まず押さえたい3つの罪の関係
刑法は、賭博に関わる行為を次の3つに分けています。なお拘禁刑は、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰です。
| 罪名 | 条文 | 法定刑 | 主に想定される立場 |
|---|---|---|---|
| 単純賭博罪 | 刑法185条 | 50万円以下の罰金又は科料 | 賭けに加わった人 |
| 常習賭博罪 | 刑法186条1項 | 3年以下の拘禁刑 | 賭博を反復する習癖が認められる人 |
| 賭博場開張等図利罪 | 刑法186条2項 | 3月以上5年以下の拘禁刑 | 賭博の場を主宰し、対価を得ようとした人 |
注意しておきたいのは、この3つの差が刑の重さだけではないという点です。単純賭博罪には罰金と科料しか定められていないため、略式手続による罰金で終わることがあります。これに対して常習賭博罪と賭博場開張等図利罪には財産刑の定めがなく、起訴されるとすれば公判請求となり、公開の法廷で審理されることになります。どの罪名で扱われるかは、手続の進み方そのものを左右します。
「開張」として問われるのはどこまでの関与か
場所を貸しただけ、という説明が通りにくい場面
賭博場開張等図利罪でいう「開張」とは、自ら主宰者となり、その支配の下で賭博をさせる場所を開設することをいうと解されています。ここでの「賭博場」は、賭博専用に設けられた常設の設備である必要はなく、他人があらかじめ用意した場所を利用した場合でも、主宰者の立場に立つのであれば同罪の対象になり得ると判断されてきました。
また、賭客を一定の場所に集める必要もありません。最高裁昭和48年2月28日決定は、電話や帳面などを備えた場所で申込みを受け、これを集計し、寺銭を徴収するという方法でプロ野球の勝敗を対象とした賭博を開催した行為について、賭博場開張図利罪の成立を認めています。大阪高裁平成29年2月9日判決も、通信アプリを使った野球賭博について、申込みを受けて集計する者の所在地や賭客の居場所などを含めた全体が1つの賭博場を構成すると判断しました。
つまり、「部屋を貸しただけ」「連絡役をしていただけ」という説明であっても、その人が場の運営を握り、対価を得ようとしていたと評価されれば、正犯として扱われる可能性があります。
「利益を図る」は実際の儲けを問わない
もう一つの要件が図利の目的、すなわち寺銭や手数料などの名義で場を利用させる対価を得ようとする意思です。判例は、この目的があれば足り、現実に利益を取得したことまでは必要ないとしています。集めた寺銭が運営経費に消えて手元に何も残らなかった場合でも、それだけで成立が否定されるわけではありません。
その一方で、対価を得る仕組みが本当にあったのか、自分がそこから利益を受ける立場にあったのかは、関与の重さを判断するうえで重要な事実です。報酬の受け取り方や金銭の流れは、次に述べる共同正犯と幇助の切り分けにも直結します。
共同正犯と幇助はどこで分かれるのか
複数人が関わる事件では、刑法60条の共同正犯と刑法62条1項の幇助のどちらで扱われるかが大きな分岐点になります。幇助と評価されれば刑法63条により正犯の刑が減軽され、賭博場開張等図利罪であれば、法定刑の長期と短期がいずれも2分の1に引き下げられます。
裁判例の傾向を整理すると、正犯側に傾く要素としては次のようなものが挙げられます。
- 資金や賭博用具の調達、場所の交渉、賭客の招集など、開設そのものに関わる行為を担当していた。
- 寺銭の集金や保管、貸付け、帳付け、精算といった収益の管理に関わっていた。
- 売上の一部を分配される立場にあり、利益の多寡が自分の取り分に直結していた。
- 営業を続けるかどうかや運営の方法について、意思決定に加わっていた。
反対に、幇助にとどまると評価されやすいのは、次のような場合です。
- 発覚防止の見張りだけを担当し、経営面には関与していなかった。
- 一定の日給と手当を受け取る従業員にすぎず、収益の多寡と自分の報酬が結びついていなかった。
- 受付や賄いなど、賭博そのものとは距離のある業務を中心に担当していた。
実際に、賭博場で見張りに従事していた従業員について、日給と若干の手当を受け取るだけで経営には参加せず、収益の多寡にほとんど利害関係を持たなかったことから、主宰者と共同して自己の犯罪を実現したというよりも、幇助の意思で関わったものと認めるのが相当だとした裁判例があります。
もっとも、幇助の範囲も決して狭くはありません。賭博場に適した場所を世話した行為や、履物の管理といった雑務についても、賭博場の開設に便宜を与えて犯行を容易にしたとして幇助を認めた古い判例があります。主宰者に知らせないまま客を案内した行為について、いわゆる片面的な幇助として賭博場開張の幇助を認めた判例(大審院大正14年1月22日判決)もあります。
他方で、幇助を否定した裁判例も残っています。丁半賭博の席で縁起担ぎの塩まきをした行為については、賭博場開張の行為を容易にしたものとは認めがたいとされました。また、賭博が終わった後に賭客を送り届けた行為は、正犯の実行行為が終わった後の行為であるとして、幇助の成立が否定されています。関与の内容だけでなく、それがいつ、どの局面で行われたかも評価を分けるということです。
賭ける側で常習賭博が問題になる場面
賭ける側であっても、常習性が認められれば常習賭博罪となり、罰金で終わるという結論にはならなくなります。判例は、常習とは反復して賭博をする習癖があることをいい、必ずしも賭博の前科があることを要しないとしたうえで、その習癖の表れといえるかどうかは、賭博の種類、賭金の多寡、賭博が行われた期間、度数、前科の有無など諸般の事情を考慮して判断すべきものとしています(最高裁昭和25年3月10日判決)。回数が多くなくても、習癖の発現と評価されれば成立し得るという整理です。
この常習性は、関与者ごとに個別に判断されます。常習賭博罪は、賭博を反復する習癖という行為者の属性によって刑を重くする規定であり、その属性がない人については、刑法65条2項により単純賭博罪の刑で処断されるのが基本的な考え方です。逆に、常習性のある人が他人の賭博を手助けした場合には、常習賭博罪の幇助として扱われることがあります。オンラインの賭博で仲介役を務めた人について、賭博場開張図利罪の成立は否定しつつ、常習賭博罪の幇助犯が成立するとした裁判例(福岡地方裁判所平成27年10月28日判決)もあります。
また、認識していた事実より重い罪では処断されないという原則(刑法38条2項)も、関与の評価に関わります。賭博開張図利の幇助として起訴された人について、本犯が賭博場を開いていることまでは認識していなかったものの、賭博が行われること自体は認識していたという事案で、賭博幇助罪の限度で処断すべきとした裁判例があります。
同じ人に複数の罪が並ぶ場合と、組織性の評価
賭博場を開いた人が自ら賭けにも加わった場合には、賭博場開張等図利罪のほかに、常習性の有無に応じて単純賭博罪または常習賭博罪が成立し、併合罪として処理されるのが判例の立場です。もっとも、バカラ賭博のディーラーのように、役割上どうしても賭金の得喪を負担することになる場合について、それは開張行為に必然的に伴うものであるとして、賭博場開張図利罪の中で評価すれば足りるとした裁判例もあります。
さらに、これらの行為が団体の活動として、実行するための組織により行われたときは、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律3条1項5号・6号により法定刑が加重され、常習賭博罪は5年以下の拘禁刑、賭博場開張等図利罪は3月以上7年以下の拘禁刑となります。
金銭面の影響も見落とせません。常習賭博や賭博場開張等図利によって得た財産は、同法2条2項1号の「犯罪収益」に当たるとされており、その隠匿や収受が処罰の対象となるほか、没収・追徴の対象にもなり得ます。賭金や賭博用具についても、刑法19条による没収が問題になります。「受け取った報酬はすでに使ってしまった」という状況であっても、追徴という形で金銭的な負担が残る場合があります。
オンラインの賭博では関与の形が見えにくい
インターネットを使った賭博では、自分がどの位置にいるのかが分かりにくくなります。この点について、2025年5月に総務省が公表した有識者の会議資料では、決済代行業者は運営にとって不可欠な存在であるとして共謀共同正犯、広告や宣伝を担うアフィリエイターなどは賭博行為を促進する役割を果たしているとして幇助犯という整理が示されています。同じ資料は、賭博に関与しているという認識がなければ故意を欠くものの、処罰されないと思い込んでいたにすぎない場合は、原則として故意の責任を免れないことにも触れています。
「サイトを紹介していただけ」「入出金の手伝いをしていただけ」という認識であっても、賭博の仕組みの一部を担っていたと評価されれば、共犯として捜査の対象になり得るということです。
捜査が始まったときに整理しておきたいこと
賭博の事件には、直接の被害者がいません。そのため、示談によって処分の軽減を図るという道筋が使えず、弁護活動の中心は関与の実態を正確に伝えることと、再び関わらない環境をつくることになります。具体的には、次のような点が手掛かりになります。
- 自分が担当していた業務の範囲と期間を、時系列で書き出しておく。
- 報酬の金額と受け取り方(固定の日給か、売上に連動する分配か)を確認できる資料を探す。
- 運営の意思決定にどこまで関わっていたか、関わっていなかったかを具体的に説明できるようにする。
- すでに関係を絶っている場合は、いつ、どのように離れたのかを裏づける事情を整理する。
- 賭ける側であった場合は、依存の背景があるなら医療機関への相談を検討し、家族の協力体制を整える。
一斉摘発という形で捜査が進む事件では、関係者が多数に上り、共犯者の供述との食い違いが問題になりやすくなります。記憶にないことを推測で答えたり、周囲に合わせて説明を変えたりすると、後から訂正することが難しくなります。分からないことは分からないと述べ、供述調書の内容を読んで確認したうえで署名するという基本的な対応が、結果として関与の程度を正確に記録に残すことにつながります。
贖罪寄付や身元引受人の確保、勤務先や家族との関係の調整なども、処分や量刑の判断材料として検討されることがあります。ただし、これらは結果を約束するものではなく、事案の規模や果たした役割によって評価は変わります。
お困りの方は早い段階でご相談ください
賭博の事件では、「自分は末端だから大きな話にはならない」と考えているうちに、共犯者の供述から自分の役割が実際より重く描かれてしまうことがあります。逆に、正犯として扱われている方であっても、収益の流れや意思決定への関与を具体的に示すことで、評価が変わる余地が残されている場合もあります。いずれにしても、捜査が動き出す前後の説明の仕方が、その後の見通しを左右します。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、刑事事件のご相談を24時間受け付けており、初回のご相談は無料です。警察から呼出しを受けた段階でも、家宅捜索を受けた段階でも、取調べへの対応やご家族への説明の仕方について、ご一緒に検討することができます。ご本人がすでに逮捕されている場合には、即日の接見にも対応しています。一人で抱え込まず、まずはお話をお聞かせください。


