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この記事は、2025年(令和7年)のストーカー規制法改正で設けられた、警察の職権による警告の仕組みを踏まえて記載しています。具体的な運用は都道府県警察や事案によって異なることがあります。
警察から電話があり、「相手の方にはもう連絡しないようにしてください」と言われた。そうした電話を受けた方の多くが気にされるのは、これが法律上の「警告」にあたるのか、何かの記録に残るのか、この先どのような手続が進むのか、という点です。
電話で「連絡しないように」と伝えられる場面は、多くの場合、ストーカー規制法に基づく警告そのものではなく、警察が相談を受けて行う注意や指導として扱われています。ただ、注意だから軽く受け止めてよいという意味ではありません。この記事では、注意と警告の違い、自分が受けたものがどちらかを確かめる方法、電話を受けた後に控えたい行動と準備しておきたいことを順に整理します。
警察の「注意」と「警告」は何が違うのか
つきまといや連絡についての相談を受けた警察がとる対応には、いくつかの段階があります。大きく分けると、法律の手続によらずに行う注意・指導、ストーカー規制法に基づく警告、公安委員会が出す禁止命令、そして刑事事件としての捜査です。
| 対応 | 根拠 | 主な形式 | 従わなかった場合 |
|---|---|---|---|
| 注意・指導(口頭注意など) | 法律上の手続ではなく、相談に応じた警察の対応 | 電話や面談で口頭で伝えられることが多い | それだけで罰則はないが、その後の判断材料として扱われることがある |
| 警告 | ストーカー規制法4条 | 警告書の交付など、書面を伴う形で行われるのが通常 | 禁止命令の対象となる可能性がある |
| 禁止命令 | ストーカー規制法5条(公安委員会が出す) | 聴聞などの手続を経て命令書が交付される | 違反すると2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 |
埼玉県警察が公表している手続の流れでも、「口頭注意」と、申出書の提出を経て警告書が交付される「書面警告」とが別の段階として示されています。電話でのやり取りだけで終わり、書面の受け取りや署名を求められていない場合は、注意・指導の段階にとどまっていることが多いと考えられます。
2025年改正で、被害者の申出がなくても警告できるようになった
以前は、ストーカー規制法上の警告は、被害を受けた方からの申出があった場合に限って行われていました。2025年(令和7年)の改正により、申出がなくても警察が職権で警告できる仕組みが設けられています。
そのため、「相手は警告までは求めていないはずだ」と考えて安心するのは早いかもしれません。注意の段階にとどまっているのか、警告の手続に進んでいるのかは、相手の意向だけでなく警察の判断によっても変わり得る、という前提で受け止めておくのが無難です。
電話で言われたのはどちらか|確かめ方
電話を受けた直後は動揺していて、何を言われたのか正確に覚えていないことも少なくありません。次の点を手がかりに整理してみてください。
- 「ストーカー規制法に基づく警告」という言葉が使われたかどうか。
- 警告書などの書面を交付する、または後日送付すると言われたかどうか。
- 警察署へ来るよう求められ、書面への署名や上申書の作成を求められたかどうか。
- 電話をかけてきた警察署名、担当部署(生活安全課など)、担当者の氏名。
- 「連絡しないように」のほかに、近づかない、SNSを見ないなど、具体的に求められた事項。
分からない点があれば、担当者に「今回のお話は、ストーカー規制法に基づく警告という扱いでしょうか」と落ち着いて尋ねることは差し支えありません。反論や言い分を電話口で重ねるより、まずは自分の置かれている段階を正確に把握することを優先したほうが、その後の対応を組み立てやすくなります。
また、警察を名乗る電話を利用した詐欺も報じられています。番号や話の内容に違和感があれば、いったん電話を切り、警察署の代表番号を自分で調べてかけ直し、担当者につないでもらう方法で確認できます。
「警察から電話が来た」|折り返す前に確認したい3つのこと
注意でも警告でも、受け止め方は変わらない
注意と警告とでは法律上の位置づけは異なりますが、電話を受けた後にとるべき行動は大きく変わりません。どちらであっても、相手が連絡を望んでいないことを警察が把握しており、その意思が自分に伝えられた、という事実が残るからです。
注意の後に連絡を続けた経緯は、後の判断材料になる
口頭注意そのものに罰則はありません。しかし、注意を受けた後も連絡や接触が続いた場合、警察が警告や禁止命令を検討するうえで、その経緯が考慮されることがあります。
さらに、警告は逮捕や処罰の前提条件ではありません。ストーカー規制法は、つきまとい等を反復する「ストーカー行為」そのものを処罰の対象としており、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています。2017年施行の改正で告訴がなくても起訴できる罪になっているため、事案によっては警告を経ずに捜査が進むこともあります。弁護士ドットコムの相談欄には、告訴がなければ起訴できないとする改正前の条文を前提にした質問も見られますので、古い情報には注意が必要です。
警告そのものは前科にならないが、影響がないわけではない
警告は刑罰ではないため、警告を受けたことによって前科がつくことはありません。報道によれば、警告の取消しを求めた裁判で、大阪高等裁判所は警告は行政処分にあたらないと判断しています。
一方で、警告を受けると銃砲刀剣類所持等取締法上、猟銃などの所持許可を受けられない事情になるなど、別の法律で一定の影響が生じる場面があります。また、警察が対応した記録は残るものと考えておいたほうがよいでしょう。
警察から「警告」を受けた|前科はつくのか、次に何が起きるのか
【刑事事件】ストーカーで前科はつくのか|警告・検挙・起訴の分かれ目と、不起訴になる場合
電話を受けた後に控えたい行動
電話の後、気持ちの整理がつかないまま行動すると、意図していなかった形で状況を悪くしてしまうことがあります。特に次のような行動は控えたほうがよいと考えられます。
- 事情を説明したい、誤解を解きたいという理由で相手に連絡すること。
- 謝罪のメッセージや手紙を送ること。
- 共通の友人や相手の家族を通じて、気持ちや言い分を伝えてもらうこと。
- 別のアカウントや電話番号から連絡すること。
- 相手の自宅や職場の近くに出向くこと。
- 相手のSNSに書き込む、または自分のSNSで相手を思わせる投稿をすること。
本人としては一度きりのつもりでも、警察から伝えられた後の連絡は、相手にとって不安を強める出来事として受け止められやすくなります。謝罪や説明であっても、それ自体が問題とされることがある点は押さえておきたいところです。
【ストーカートラブル】謝りたい|謝罪の連絡そのものが問題になる理由
相手から連絡が来たときや、用件が残っているとき
相手の方から連絡が来ることもあります。その場合にどう応じるかは、やり取りの内容や経緯によって評価が分かれるため、自分だけで判断せず慎重に考えることが大切です。
預けている荷物や貸し借りしたお金など、どうしても片付けなければならない用件が残っている場合も、直接連絡するのではなく、弁護士を窓口にする方法が考えられます。正当な用件であっても、伝え方によっては連絡を続けていると受け取られるおそれがあるためです。
【ストーカートラブル】相手から先に連絡が来た|返信したら違反になるのか
電話を受けた後に準備しておきたいこと
注意の段階で終わることもあれば、その後に警察署への呼び出しや、警告の手続に進むこともあります。どちらの場合にも備えて、次の準備をしておくと落ち着いて対応しやすくなります。
- 電話の日時、警察署名、担当者名、言われた内容をその日のうちにメモに残します。
- 相手とのやり取りの履歴は、自分に不利に見えるものも含めて削除せずに残しておきます。
- 交際の経緯、連絡をした時期と回数、その理由を時系列で書き出しておきます。
- 警察署へ来るよう求められた場合は、日時や持ち物を確認し、応じる前に弁護士に相談しておきます。
やり取りの履歴を消してしまうと、自分の言動を正確に説明する材料が失われるだけでなく、何かを隠そうとしたと受け取られるおそれもあります。手元の記録は、そのまま残しておくのが基本です。
【ストーカートラブル】任意で事情を聞きたいと言われた|応じる場合の準備
言われた内容に納得できないとき
「そこまでの連絡はしていない」「相手の説明と事実が違う」と感じることもあると思います。ただ、電話口や警察署で強く反論したり、相手に真意を問いただしたりすると、かえって状況が複雑になることがあります。
事実関係に食い違いがあると考える場合は、まず連絡の頻度や内容を記録に基づいて整理し、弁護士を通じて警察に説明する方法を検討するのが現実的です。警告については、先に触れたとおり裁判で取消しを求めることは難しいと判断された例が報じられているため、手続の段階に応じて、どのような説明の仕方が適切かを見極める必要があります。
【刑事事件】警察から電話が来た段階で弁護士に相談する意味
まとめ
- 電話で「連絡しないように」と言われるのは、多くの場合、ストーカー規制法上の警告ではなく注意や指導の段階です。
- 警告は通常、警告書の交付など書面を伴う形で行われ、2025年の改正で被害者の申出がなくても警察の職権で行えるようになりました。
- 注意に罰則はありませんが、その後も連絡を続けると、警告や禁止命令、捜査に進む際の判断材料となることがあります。
- 説明や謝罪のための連絡、第三者を通じた連絡も控え、残っている用件は弁護士を窓口にすることが考えられます。
- 電話の内容とこれまでのやり取りを記録に残し、呼び出しを受けたときに備えておくことが大切です。
警察からの電話は、この先の動き方を見直すための大切な合図でもあります。言われた内容がどの段階のものかを確かめたうえで、連絡を控え、記録を整えておくことが、自分の生活を守ることにもつながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


