共犯者が凶器を持っていた|自分は知らなかったという主張

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

知人と一緒に行動していたところ、その人が刃物や工具を持っていたことが後から分かり、自分まで重い罪に問われそうになっている。取調べでは「凶器のことは知らなかった」と説明しているのに、なかなか受け入れてもらえない。そうした状況でこのページにたどり着いた方もいらっしゃると思います。

 「知らなかった」という説明は、刑事事件では通用しないものだと受け止められがちです。しかし実際には、この説明が働く場所と、働きにくい場所とが分かれています。どこで何を言おうとしているのかが整理されないまま話を続けると、本来なら伝わるはずの部分まで届かなくなることがあります。

 この記事では、共犯者が凶器を持っていた場面で「自分は知らなかった」という主張がどのように扱われるのかを、罪名・結果・量刑という3つの段階に分けて整理します。

「凶器のことは知らなかった」は、どこで効く主張なのか

 共犯事件では、複数の人が関わった一連の出来事について、関与した人ごとに評価をし直す作業が行われます。刑法60条は「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」と定めており、自分が手を下していない部分についても責任を負うことがあります。だからこそ、どこまでが自分の責任の範囲かという線引きが争点になります。

 このとき、「知らなかった」という主張は一つのスイッチではなく、次の3つの段階のどこに向けられたものかによって扱いが変わります

検討される段階そこで問題になること「知らなかった」の働き方
どの罪名で問われるか話し合った内容と、実際に行われた行為とのつながり重い罪に当たる事実を知らなかったことが正面から問題になる
生じた結果をどこまで負うかけがや死亡という結果についての規定の作り結果についての認識は要件とされておらず、働きにくい
刑をどのくらいにするか想定していた範囲との開き、関与の度合い罪名が変わらない場合でも考慮される余地がある


 順に見ていきます。

出発点になるのは、事前に何を話していたかである

 共犯事件で最初に確かめられるのは、関わった人たちの間にどのような意思の連絡があったかという点です。実務上これを共謀と呼びますが、明確な打ち合わせがあった場合に限られるわけではなく、言葉にしないやり取りから読み取られることもあります。

話していた中身と、実際に行われたことのずれ

 凶器が問題になる事件では、このずれが典型的な形で現れます。物を盗む話しかしていなかったのに、共犯者が刃物を突きつけて金品を奪ったという場面。殴るという話にとどまっていたのに、共犯者が持ち出した道具で相手が重いけがを負ったという場面。いずれも、自分が想定していた犯罪と、現に行われた犯罪とが同じではないという点で共通しています。

実行された行為が、当初の話とつながっているとみられるか

 この場合にまず検討されるのは、実際に行われた行為が、当初の意思の連絡の影響のもとで行われたものといえるかどうかです。判断にあたっては、次のような事情が手がかりにされます。

  • 被害者が当初想定していた相手と同じかどうか。
  • 行為の狙いや向かう先が共通しているかどうか。
  • 同じ機会の中で連続して起きた出来事かどうか。
  • 時間的・場所的にどの程度離れているか。
  • 動機や目的が引き継がれているとみられるかどうか。


 当初の話とのつながりが切れていると評価されれば、後から起きた行為についてまで責任が及ばないことがあります。もっとも、「そこまでは想定していなかった」という言葉だけでつながりが否定されるわけではなく、経緯の具体的な中身から判断されます。

重い罪に当たる事実を知らなかったときの扱い

 つながりが認められるとしても、次の段階が残ります。刑法38条2項は「重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない」と定めています。自分の認識になかった重い罪の枠で処断することはできない、という考え方です。

 判例には、暴行や傷害を話し合っていた者たちのうち1人が殺意をもって被害者を殺害したという事案で、殺意のなかった他の者については、重なり合う範囲にある傷害致死罪の共同正犯が成立するとしたものがあります(昭和54年の最高裁決定)。重い罪がそのまま全員に及ぶわけではなく、認識の範囲に応じた罪名に落ち着く場合があることを示した例といえます。

 凶器の事案でいえば、共犯者が凶器を用いたことによって成立する重い罪について、その事実を知らなかったと認められるかどうかが争点になります。ここが、「知らなかった」という主張が正面から意味を持つ場所です。

結果についての規定は、認識を要件にしていない

 一方で、同じ「知らなかった」でも通りにくい場所があります。けがや死亡という結果が加わって刑が重くなる類型です。

 たとえば刑法240条は、強盗が人を負傷させたときは無期又は6年以上の拘禁刑に、死亡させたときは死刑又は無期拘禁刑に処すると定めています。刑法205条の傷害致死も、3年以上の有期拘禁刑という重い法定刑です。これらの規定は、死傷という結果について認識していたことを成立の条件にしていません

 そのため、強盗について意思を通じ合っていたと認められる場合、共犯者が現場で相手にけがをさせたときは、自分がその場面を見ていなくても、けがをさせるとは思っていなくても、重い罪の枠で問われることがあります。凶器が使われた事件では結果が重くなりやすく、この構造が働く場面も多くなります。

 「そこまでになるとは思わなかった」という感覚は自然なものですが、結果の重さについての認識は、この層では責任を切り分ける材料になりにくいという点は、早い段階で知っておいたほうがよい部分です。

凶器を知っていたこと自体が要件になっている罪もある

 これらとは別に、凶器についての認識が条文上の要件になっている罪もあります。刑法208条の2第1項の凶器準備集合罪は、2人以上が他人の生命・身体・財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して、又はその準備があることを知って集合した者を、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金としています。同条2項の凶器準備結集罪は3年以下の拘禁刑です。

 条文が「知って」と書いている以上、準備を知らずに集まっただけであれば、この罪については成立しないという整理になります。ただし、ここでいう認識ははっきりしたものに限られず、そうかもしれないと思いながら加わった場合も含まれると理解されています。自分では用意していないという場合でも、準備があることを知り得る状況に置かれていたかどうかが検討されることになります。

何を手がかりに「知っていた」と判断されるのか

 本人の内心は直接には見えないため、認識の有無は周囲の事情から推し量られます。取調べや裁判で持ち出されやすいのは、次のような事情です。

  • 事前のやり取りに、道具の調達や持参をうかがわせる内容が含まれていたか。
  • 移動中の車内や集合場所で、凶器を目にする状況があったか。
  • 服装や持ち物が、その場面に見合わないものだったか。
  • 時間帯・場所・人数といった状況が、相手の抵抗を想定させるものだったか。
  • 自分に割り当てられた役割が、抵抗を受けることを前提とした内容だったか。
  • 報酬や取り分の話が、単純な作業に見合わない内容だったか。
  • 現場や事後のやり取りで、凶器に触れる会話があったか。


 これらは一つずつでは決め手になりませんが、重なるほど、知っていたのではないかという方向で見られやすくなります。逆にいえば、自分の側から説明できる事情も同じ材料の中にあるということです。

よくある言い分は、どの段階の話なのか

 実際の相談では、次のような説明を聞くことがあります。それぞれ、先ほどの3つの段階のどこに向けた主張なのかを整理しておくと、伝わり方が変わります。

「持っているのは見たが、使うとは思わなかった」

 これは、凶器の存在そのものは認識していたという前提の説明です。罪名の段階では厳しくなりやすい一方で、使うことまで話し合っていなかったという点は、つながりの評価や量刑の段階で意味を持つことがあります。

「現場に着いてから初めて見た」

 いつ知ったかという時点の問題になります。知った後にどう行動したかが続けて問われるため、気づいた時点の前後で何をしたかを具体的に説明できるかが分かれ目になります。

「自分は外で待っていただけだ」

 現場にいなかったことは、それだけで責任を否定する事情にはなりません。実行行為を分担していない人が共同正犯とされる場合があるためです。この点は、役割の評価という別の論点として扱われます。

途中で気づいた場合にどう見られるか

 凶器の存在に途中で気づき、その後も行動を共にしていた場合、気づいた時点以降について認識があったとみられやすくなります。他方で、そこで抜けようとした事実があるのであれば、その具体的な言動が評価の対象になります。

 共犯関係からの離脱については、連絡を絶っただけでは足りず、それまでに自分が与えた影響を取り除いたといえるかが問われるのが一般的な整理です。実行に着手する前か後かで、求められる内容にも差が出ます。

罪名が動かない場合でも、量刑の段階には残る

 仮に重い罪名で処理されることになっても、想定していた範囲との開きが評価されなくなるわけではありません。裁判所が公表している裁判例の中には、共犯者が想定されていた程度をはるかに超える暴行に及んだことなどを被告人のために考慮し、酌量減軽をしたうえで刑を決めたものもあります。

 刑法66条は、犯罪の情状に酌量すべきものがあるときは刑を減軽できると定めています。どの段階でも通らない主張というわけではなく、効く場所が後ろにずれることがあるという見方が実際に近いといえます。

手続の面で起きやすいこと

 凶器が関わる事件は法定刑が重く、身柄の扱いも慎重になります。共犯者との間で口裏を合わせることが心配される事件では、家族との面会や手紙のやり取りが制限されることがあります。認識の有無を争う事件では、その分だけ捜査に時間がかかり、身体拘束が長くなる傾向もあります。

 また、強盗致傷や傷害致死などは裁判員裁判の対象となる事件であり、起訴された場合には第1回の期日の前に争点や証拠を整理する手続が行われます。準備に相応の期間を要するため、見通しを早い段階で立てておくことが役に立ちます。

 共犯者と同じ弁護士に依頼できるかという点も相談の多いところですが、共犯事件では当初から弁護人を分けて進めるのが通常です。

取調べを受ける前に整理しておきたいこと


  1. いつ、誰と、どのようなやり取りをして、その日の行動が決まったのかを時系列で書き出しておく。
  2. 凶器の存在をいつ知ったのか、知らなかったのであればなぜ気づかなかったのかを、その日の状況に即して説明できるようにしておく。
  3. 自分に割り当てられていた役割と、実際にした行動を分けて整理しておく。
  4. やり取りの記録やスマートフォンのデータを自分の判断で消さない。説明を裏づける材料が失われることがある。
  5. 共犯者とされている人と連絡を取って話を合わせようとしない。口裏合わせと受け取られると、別の不利益につながる。


 取調べでは、認識の程度を確かめる質問が繰り返されることがあります。あいまいなまま「そうかもしれない」と答えた内容が、後から認識があった証拠として扱われることもあるため、自分の記憶と違う部分はその場で述べておくことが大切です。調書は読み聞かせを受けたうえで、内容が違うと思えば訂正を求めることができます。

まとめ


  • 「凶器を知らなかった」という主張は、罪名・結果・量刑という段階ごとに扱いが異なる。
  • どの罪名で問われるかの段階では、刑法38条2項により、重い罪に当たる事実を知らなかったことが正面から問題になる。
  • けがや死亡という結果に関する規定は結果についての認識を要件としておらず、この層では主張が働きにくい。
  • 凶器準備集合罪のように、凶器の準備を知っていたことが条文上の要件になっている罪もある。
  • 認識の有無は、事前のやり取り・移動中の状況・役割・報酬といった外側の事情から推し量られる。
  • 罪名が動かない場合でも、想定を超えていたという事情は量刑の段階で考慮される余地がある。


 共犯者がいる事件では、自分の記憶とは違う形で経緯が組み立てられていくことがあります。何をどの順番で説明するかによって、結果が変わり得る場面でもあります。

 弁護士法人若井綜合法律事務所では、刑事事件のご相談を24時間受け付けており、初回のご相談は無料です。ご本人が身体拘束を受けている場合には、ご家族からのご相談にも対応しています。取調べが始まっている段階でも、途中からできることはあります。一人で抱え込まず、早い段階でご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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