元交際相手のSNSを見ていた|のぞき見が罪になる場面
ストーカー規制法に基づく禁止命令を受けた後に、相手へ連絡をしてしまった、近くまで行ってしまった。あるいは、そうした行為を理由に警察から連絡が来た。こうした場面で多くの方が気にされるのは、「どのくらい重い処分になるのか」という点です。禁止命令に違反した場合の罰則は、警告を受けた段階と比べて重く定められており、捜査の進み方にも違いが出ることがあります。この記事では、禁止命令の位置づけ、違反したときの罰則の分かれ目、発覚後の手続の流れ、処分の見通しに影響する事情について、加害者とされた側の立場から整理します。
この記事は、2025年6月に施行された拘禁刑(それまでの懲役・禁錮を一本化した刑罰)と、2025年12月30日以降に順次施行された改正ストーカー規制法の内容を反映しています。個別の事案での見通しは、事実関係によって大きく異なります。
禁止命令とは何か|警告との違い
禁止命令は、つきまとい等をした人に対して、都道府県公安委員会が「これ以上つきまとい等を繰り返してはならない」と命じる行政処分です。警察署長などが出す「警告」とは、法的な性質が異なります。
警告は行政指導、禁止命令は行政処分
警告は、相手に行為をやめるよう求める行政指導であり、警告に従わなかったこと自体に罰則はありません。これに対し禁止命令は、命令を受けた人に法的な義務を課す処分であり、違反すると刑罰の対象になります。なお、2025年12月30日施行の改正により、警告は被害者からの申出がなくても警察の職権で出せるようになりました。禁止命令も、以前から申出のない場合に職権で出すことができる仕組みになっています。
| 項目 | 警告 | 禁止命令 |
|---|---|---|
| 出すのは誰か | 警察本部長・警察署長など | 都道府県公安委員会 |
| 法的な性質 | 行政指導 | 行政処分 |
| 違反したときの罰則 | 警告違反としての罰則はない | 禁止命令等違反罪の対象 |
| 事前の手続 | 特になし | 原則として聴聞(緊急の場合は事後の意見の聴取) |
| 効力の期間 | 定めなし | 命令の日から1年(延長あり) |
命じられる内容と有効期間
禁止命令では、相手に対するつきまとい等をさらに繰り返してはならないこと、そのために必要な事項(たとえば相手の住居や勤務先の付近に近づかないことなど)が命じられます。有効期間は命令の日から1年で、公安委員会が必要と認めた場合には延長されることがあります。命令書に書かれた内容が、そのまま守るべき範囲になりますので、受け取った段階で内容を正確に確認しておくことが大切です。
また、2026年3月10日施行の改正により、禁止命令等を書面の送達によって行う仕組みや、命令を受ける人の住所が分からない場合の公示送達が設けられました。「直接受け取っていない」という事情があっても、命令の効力が及んでいる場合がある点には注意が必要です。
禁止命令に違反したときの罰則
禁止命令に違反した場合の罰則は、違反した行為が「ストーカー行為」にあたるかどうかで2段階に分かれています。比較のため、禁止命令が出ていない段階でのストーカー行為罪もあわせて示します。
| 違反の内容 | 条文 | 法定刑 |
|---|---|---|
| ストーカー行為をした(禁止命令なし) | ストーカー規制法18条 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 禁止命令に違反してストーカー行為をした | 同法19条 | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 |
| 禁止命令に違反した(ストーカー行為に至らない) | 同法20条 | 6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
「ストーカー行為」にあたるかどうかで分かれる
ストーカー行為とは、同じ相手に対して、つきまとい等や位置情報の無承諾取得等を反復して行うことをいいます。禁止命令に違反して、こうした行為を繰り返した場合には、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金という、ストーカー規制法の中で最も重い区分の対象になります。
一方、違反の態様が「反復」とまではいえない場合でも、禁止命令に違反した事実があれば、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。つまり、禁止命令が出た後は、1回の連絡や接近であっても刑罰の対象になりうるという点が、警告の段階との大きな違いです。
告訴がなくても起訴されうる
ストーカー行為罪は、2017年施行の改正で非親告罪になりました。被害者が告訴をしていなくても、検察官は起訴することができます。被害者側との間で話がついたとしても、それだけで刑事手続が終わるとは限らない点は、押さえておく必要があります。
違反が発覚した後の手続の流れ
禁止命令違反は、警察や公安委員会がすでに事案を把握し、命令を出したうえで起きるものです。そのため、違反の申告があると、警察は比較的早い段階で捜査に動くことが多いといえます。一般的な流れは次のとおりです。
- 被害者からの申告などをきっかけとした、違反の事実の捜査。
- 任意の事情聴取、または逮捕。
- 逮捕された場合は、48時間以内の検察官への送致と、勾留請求の判断。
- 勾留が認められた場合は、原則10日間、延長されれば最大20日間の身柄拘束。
- 検察官による起訴(略式起訴を含む)・不起訴の判断。
禁止命令を受けていたという経緯は、捜査機関から「命令を受けても行為をやめなかった」と受け止められやすい事情です。被害者に再び接触するおそれがあると判断されると、逮捕や勾留に進む可能性が高まります。もっとも、すべての事案で身柄拘束がされるわけではなく、違反の内容や本人の生活状況によって判断は分かれます。
処分の見通しに影響する主な事情
最終的にどのような処分になるかは、事案ごとの事情を総合して判断されます。見通しに影響しやすい事情としては、次のようなものがあります。
- 違反した行為の回数や期間、内容。
- 相手に与えた不安や恐怖の程度。
- 同種の前科・前歴の有無。
- 被害者との示談が成立しているかどうか。
- 転居や連絡先の削除など、再び接触しないための具体的な措置。
- 家族など、生活を見守る人がいるかどうか。
禁止命令違反の事案では、禁止命令が出る前から一定の経緯があることが多く、警告の段階と比べて、罰金ではなく公判請求(正式な裁判)が選ばれる場合もあります。一方で、示談の成立や再発防止の取組みが評価され、不起訴や略式手続による罰金にとどまる場合もあります。
「違反するつもりはなかった」という場面
ご相談の中には、意図的に命令を破ったというより、判断に迷った末の行動が違反と受け止められたという例もあります。どのような場面が問題になりやすいのかを確認しておきます。
相手から連絡が来て返信した
相手から先に連絡が来た場合でも、返信の内容や回数によっては、禁止命令に違反すると評価されるおそれがあります。相手から連絡があったことは事情として考慮されうるものの、返信してよいという許可にはなりません。連絡を受けたときは、自分では応じず、警察や弁護士に相談するのが無難です。
謝罪や荷物の返還のために連絡した
謝りたい、預かっている物を返したいという理由であっても、相手が拒んでいる状況での直接の連絡は、命令違反と受け止められることがあります。用件そのものが正当でも、伝え方を誤ると処分の対象になりうるため、代理人を通すなど、直接接触しない方法を検討する必要があります。
偶然、近くで出会った
生活圏が重なっていて偶然出会った場合、それだけで直ちに違反になるわけではありません。ただし、その場で話しかけたり、後をついていったりすれば、違反と評価されるおそれがあります。偶然であることを後から説明できるよう、その場を離れ、出来事を記録しておくことが考えられます。
違反してしまった・疑われているときにできること
警察から連絡が来た段階や、違反してしまったと自覚している段階では、次の点を意識して行動することが考えられます。
- 相手への連絡や接近を直ちにやめ、連絡先やSNSのつながりを自分から断つこと。
- 相手やその家族に、直接謝罪や説明をしようとしないこと。
- 命令書や、これまでのやり取りを手元に保存しておくこと。
- 警察から事情を聞かれる前に、弁護士に相談して説明の仕方を整理すること。
- 示談を望む場合は、弁護士を通じて被害者側の意向を確認すること。
示談は処分の判断に影響する事情の一つですが、示談が成立しても、禁止命令そのものの効力が消えるわけではありません。命令の有効期間中は、引き続き接触しないことが求められます。また、示談をしたいという気持ちから直接連絡を取ると、それ自体が新たな違反になりかねません。被害者との連絡は、弁護士を通じて行うのが一般的です。
禁止命令の内容に納得できない場合
禁止命令は行政処分ですので、内容に不服がある場合には、審査請求や取消訴訟といった不服申立ての手段が設けられています。ただし、申立てには期間の制限があり、また申立てをしている間も命令の効力は原則として続きます。「納得していないから守らなくてよい」ということにはならず、不服申立てをする場合でも、命令の内容は守ったうえで進める必要があります。
よくあるご質問
禁止命令の期間が過ぎた後に連絡したら、罪になりますか
有効期間が満了し、延長もされていなければ、禁止命令違反の罪には問われません。ただし、相手が拒んでいるのに連絡を繰り返せば、改めてストーカー行為罪や警告・禁止命令の対象になることがあります。期間の満了が、関係を再開してよいという意味ではない点に注意が必要です。
初めての違反でも逮捕されることはありますか
初めての違反であっても、逮捕される可能性はあります。禁止命令違反は、命令を受けた後の行為であることから、再び接触するおそれが重視されやすいためです。もっとも、逮捕されるかどうかは、違反の態様や生活状況などによって判断されます。
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禁止命令が出た後の行為は、警告の段階に比べて刑事手続に進みやすく、処分も重くなりうるものです。一方で、違反後の行動や再発防止の取組みによって、見通しが変わる余地もあります。違反してしまったかもしれない、警察から連絡が来たという段階で、事実関係を整理し、相手と接触しない形で対応を組み立てることが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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