【ストーカートラブル】加害者に住所を教えずに裁判を起こすことはできる?
ストーカー被害が続くと、つきまといや連絡そのものへの対応に加えて、眠れない、外に出るのが怖い、仕事に集中できないといった心身の不調を抱える方が少なくありません。こうしたつらさは「気の持ちよう」で片づけられるものではなく、被害の一部として受け止めてよいものです。この記事では、ストーカー被害で精神的につらいときに頼れる相談先を、心のケアを担う窓口と、不安の原因である被害そのものに対応する窓口に分けて整理します。
本記事は2026年10月時点で公表されている制度・窓口の情報をもとにしています。電話番号や受付時間、支援の対象となる条件は変更されることがあるため、利用の際は各窓口の公式情報をご確認ください。
ストーカー被害で起きやすい心身の変化
つきまといや執拗な連絡を受けていると、相手が次に何をしてくるか分からない状態が長く続きます。被害が終わっていない間はもちろん、連絡が止まった後でも緊張が抜けず、日常生活に影響が出ることがあります。たとえば、次のような変化を感じる方がいます。
- 寝つけない、夜中に何度も目が覚める。
- スマートフォンの通知音や着信音が鳴るたびに体がこわばる。
- 外出や帰宅のたびに周囲を見回してしまい、疲れが抜けない。
- 仕事や家事に集中できず、ミスが増えた。
- 「自分の対応が悪かったのでは」と自分を責めてしまう。
- 人に会うのがおっくうになり、誰にも話せずにいる。
こうした状態がしばらく続いている場合や、食事がとれない、気分の落ち込みが強いといった変化がある場合は、我慢を重ねるよりも、早めに専門家へつなぐことを考えてよい段階です。また、「消えてしまいたい」「死にたい」という気持ちが浮かぶときは、一人で抱えずに、後で紹介する電話相談などへその気持ちのまま連絡してください。
つらさを「心のケア」と「原因への対応」に分けて考える
精神的なつらさには、心身の不調そのものと、その原因であるストーカー被害という2つの面があります。心のケアだけを受けても、つきまといが続いていれば不安は戻ってきやすく、反対に法的な手続を進めていても、眠れない状態のままでは手続に向き合う力を保ちにくくなります。どちらか一方に絞る必要はなく、役割の違う相談先を並行して持つことが、負担を軽くすることにつながる場合があります。
| 困りごと | 主な相談先 | 期待できること |
|---|---|---|
| 眠れない・気分が落ち込む | 心療内科・精神科 | 診察と治療、診断書の作成 |
| 誰かに気持ちを聞いてほしい | 精神保健福祉センター、こころの健康相談統一ダイヤル | 電話・面接での相談、医療機関の案内 |
| 被害者としての支援を受けたい | 民間の被害者支援団体、警察の被害者支援の担当 | カウンセリング、付添い、制度の案内 |
| つきまといを止めたい・身の安全が不安 | 警察 | 警告・禁止命令、パトロールの強化、事件としての対応の検討 |
| 相手との連絡を断ちたい・損害を請求したい | 弁護士、法テラス | 代理人としての対応、法律相談、費用の援助制度の案内 |
心のつらさを受け止める相談先
心療内科・精神科
眠れない、動悸がする、気分の落ち込みが続くといった症状があるときは、心療内科や精神科の受診を考えてみてください。受診の際に、ストーカー被害を受けていることや、いつ頃から症状が出ているかを伝えると、状況を踏まえた診察を受けやすくなります。医師の判断で診断書が作成されれば、後に勤務先へ配慮を求めるときや、加害者に損害を請求するときの資料になることもあります。
精神保健福祉センター・保健所・電話相談
いきなり医療機関に行くことにためらいがある場合は、都道府県や政令指定都市に置かれている精神保健福祉センターや、地域の保健所で心の健康について相談する方法があります。ご本人だけでなく、家族からの相談を受け付けているところもあります。
電話で話を聞いてほしいときは、厚生労働省の「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)を利用できます。かけた地域の公的な相談機関などにつながる仕組みで、受付時間は地域によって異なります。
民間の被害者支援団体
各都道府県には、犯罪の被害を受けた方を支援する民間団体があり、東京都では公益社団法人被害者支援都民センターが活動しています。電話や面接での相談、臨床心理士などによるカウンセリング、警察署や裁判所への付添いなどを行っている団体が多く、被害届を出すかどうか決めていない段階から相談を受け付けているところもあります。最寄りの団体には、全国共通の番号(0570-783-554)からつながります。
警察の被害者支援とカウンセリング費用の公費負担
警察では、犯罪の被害を受けた方の精神的な負担を軽くするため、カウンセリングの知識を持つ職員による相談のほか、ご本人が選んだ精神科医や臨床心理士などの診察料・カウンセリング料を公費で負担する制度を運用しています。もっとも、制度の具体的な内容は都道府県警察ごとに定められており、対象となる事件や期間にも決まりがあります。ストーカー被害で利用できるかどうかは、相談している警察署の担当者に確認してみてください。
不安の原因に向き合う相談先
警察
身の危険が差し迫っているときは、迷わず110番通報をしてください。緊急ではないものの被害について相談したい場合は、警察相談専用電話(#9110)や最寄りの警察署で相談できます。ストーカー規制法に基づく警告や禁止命令、パトロールの強化など、警察が取る措置は状況によって異なります。相談しても思うように進まないと感じたときの次の手段は、【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段で解説しています。
法テラス
法テラス(日本司法支援センター)では、ストーカー被害を受けている方や被害を受けるおそれのある方を対象に、弁護士による法律相談を行う「DV等被害者法律相談援助」を実施しています。資力にかかわらず利用でき、手元の現金・預貯金が一定額以下であれば無料、それを超える場合は所定の相談料を負担する仕組みです。また、犯罪被害者支援ダイヤル(0120-079714)では、支援制度や相談窓口の案内、犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士の紹介を行っています。
なお、2026年1月に運用が始まった「犯罪被害者等支援弁護士制度」は、対象となる犯罪や被害の程度、資力などの要件が定められており、ストーカー被害のすべてが対象になるわけではありません。利用できるかどうかは法テラスに確認してください。
弁護士
弁護士は、ご本人の代理人として相手方に接触を控えるよう求める通知を送ったり、今後接触しないことを約束する書面を取り交わしたり、慰謝料などの損害賠償を請求したりすることができます。相手と直接やり取りをしなくてよくなることは、それ自体が心の負担を軽くする場合があります。被害の経過を整理し、警察に相談する際の資料を一緒に準備することもできます。
代理人を立てることで何が変わるのかは、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で詳しく説明しています。警察と弁護士のどちらに先に相談するかで迷う場合は、【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序も参考にしてください。
相談するときに伝えるとよいこと
精神的に疲れているときは、相談先で順序立てて話すこと自体が負担になりがちです。事前に次のような点をメモにしておくと、話が伝わりやすくなります。全部をそろえる必要はなく、分かる範囲で構いません。
- 相手との関係(元交際相手、職場の同僚、面識のない人など)。
- 被害が始まった時期と、主な出来事の日付。
- 受けている行為の内容(つきまとい、連絡、贈り物、ネットへの書き込みなど)。
- 今の体調や生活への影響(睡眠の状態、通院の有無、仕事を休んだかどうか)。
- これまでに相談した先と、そこで言われたこと。
- 相談先に求めたいこと(気持ちを聞いてほしい、相手を止めたい、転居を考えているなど)。
被害の記録は、心のケアの相談でも、警察や弁護士への相談でも役に立ちます。ただし、記録をつけること自体がつらいときは、無理に一人で続けず、相談先に手伝ってもらう方法もあります。一人で相談に行くときの準備は、【ストーカートラブル】被害を家族に言えない|一人で相談に行くときの準備で整理しています。
心身の不調と損害賠償の関係
ストーカー被害によって心療内科へ通院したり、仕事を休んだりした場合、その費用や収入の減少、精神的苦痛に対する慰謝料を加害者に請求できることがあります。請求が認められるかどうかや金額は、被害の内容や期間、被害と不調とのつながりをどこまで示せるかによって変わります。
その意味で、診断書や通院の記録、領収書、休んだ日の分かる勤務記録などは、後で請求を考えるときの資料になり得ます。今すぐ請求するかどうかを決めていなくても、捨てずに保管しておくとよいでしょう。慰謝料として請求できる項目の考え方は、【ストーカートラブル】ストーカー被害の慰謝料|請求できる項目と組み立てで解説しています。
周囲の人に頼るときの考え方
被害を家族や職場に知られたくないと考える方もいます。誰にどこまで伝えるかはご本人が決めてよいことですが、信頼できる人が一人でも事情を知っていると、帰宅時に連絡を取り合う、通院に付き添ってもらうといった支えを得やすくなります。
職場には、勤務地や勤務時間の変更など、安全と体調の両面から配慮を求められる場合があります。伝え方については、【ストーカートラブル】勤務先に配慮を求める|勤務地や勤務時間の変更をご覧ください。また、男性の被害者の中には相談しにくさを感じる方もいますが、ストーカー規制法による保護や相談窓口は性別によって変わりません。【ストーカートラブル】男性のストーカー被害|相談しにくさと使える手続もあわせてご覧ください。
よくあるご質問
身体的な被害はなく、精神的につらいだけでも相談してよいですか
相談して構いません。ストーカー規制法は、つきまといなどによって身体の安全や住居の平穏などが害される不安を覚えさせる行為を規制しており、けがなどの身体的な被害が出ていることを前提にはしていません。心のケアの窓口も、被害の大小によって相談を断るものではありません。
警察に相談すると、相手を刺激してしまわないか心配です
相談しただけで、その内容が直ちに相手に伝わるわけではありません。警告などの措置を取る際には安全面も考慮されるため、相手の反応が心配な場合は、その点も含めて担当者に伝えてください。
心療内科に通っていることは、相手に知られますか
医療機関が通院の事実を相手に伝えることは通常ありません。ただし、損害賠償の請求や裁判の中で診断書などを資料として出す場合は、その内容が相手方の目に触れることになります。どの資料をどの段階で使うかは、弁護士と相談しながら決めることができます。
まとめ
ストーカー被害による精神的なつらさは、我慢して乗り切るものではなく、相談してよい被害の一部です。心のケアは医療機関や精神保健福祉センター、被害者支援団体へ、被害そのものへの対応は警察や弁護士へと、役割の違う相談先を組み合わせることで、一人で抱える負担を少しずつ減らしていくことができます。当事務所では、相手方との連絡の窓口となることや、警察への相談の準備、損害賠償の請求などについてご相談をお受けしています。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


