【ストーカートラブル】ストーカー被害を会社に伝えるとき、どこまで話せばいい?
この記事は、2026年10月時点の法令にもとづいて書いています。ストーカー規制法は2025年12月30日施行の改正(警察の職権による警告の創設など)を、民法は2026年4月1日施行の改正(父母以外の親族と子との交流の規定の新設など)を反映しています。
「別れた彼が、子どもの習い事の帰りに声をかけてきた」「交際中に子どもとよく遊んでくれていた元恋人から、子ども宛てに誕生日プレゼントが届いた」「子どもには会わせてほしい、自分にもその権利があると言われた」。お子さんのいる方の交際が終わった後、元恋人がお子さんに近づこうとするご相談を、当事務所でもお受けすることがあります。
元恋人の場合、元配偶者と違って子どもとの間に法律上の関係がないことが多い一方、交際中に子どもと親しく過ごしていた分、相手は「子どもとの関係は別だ」と考えがちです。子どもの側も相手を慕っていることがあり、どこまでの接触なら許されるのか、親として何を根拠に断れるのかが分かりにくくなります。
この記事では、元恋人がお子さんに接触しようとする場面に絞り、相手に子どもと会う法的な立場があるのか、子どもへの接触がどう扱われるのか、親として初めにしておきたいことを整理します。学校・保育園への依頼や警察・裁判所の手続の全体像は【ストーカートラブル】相手が自分の子どもに近づいてくる|子どもを経由した接触を止める手順で解説していますので、あわせてご覧ください。
元恋人に「子どもと会う権利」はあるのか
子どもを誰と交流させるかを決めるのは親権者
未成年の子どもを誰とどのように関わらせるかは、子どもを監護する親権者が、子どもの利益を考えて判断することです。元交際相手は、交際中に子どもとどれだけ親しくしていても、そのことで子どもに対する法律上の権利を持つわけではありません。親として「今は会わせない」と判断するのに、相手の同意は必要ありません。
2026年4月の民法改正でも、元恋人は対象に含まれない
2026年4月1日に施行された改正民法により、父母以外の親族と子どもとの交流を家庭裁判所が定める仕組みが設けられました(民法766条の2)。ただ、対象となるのは子どもの祖父母や兄弟姉妹などの親族で、それ以外の親族は過去にその子を監護していた場合に限られます。親族ではない元恋人は、同棲中に子どもの世話をしていたとしても、この仕組みで子どもとの交流を求めることはできません。
元恋人が子どもの実の父親である場合
事情が変わるのは、元恋人が子どもの実の父親であるときです。結婚していない父母の間では、父親と子どもの法律上の親子関係は認知によって生じます。認知した父親は、子どもとの交流について話し合いや家庭裁判所の手続で取り決めを求めることができます(民法788条、766条)。
もっとも、交流の方法は協議や調停・審判で決めるものです。取り決めの外で待ち伏せをしたり、子どもに直接連絡したりしてよいことにはなりません。面会を口実にした接触への対応は【ストーカートラブル】元配偶者からのつきまとい|子の面会を口実にされるも参考になります。
| 元恋人と子どもの関係 | 子どもとの交流を求める法的な道 | 取り決めの外での接触 |
|---|---|---|
| 血縁のない元恋人(同棲していた場合を含む) | ない | つきまとい等として扱われる可能性がある |
| 子どもの実の父親で、認知していない | 認知を経たうえで協議や家庭裁判所の手続を利用する | つきまとい等として扱われる可能性がある |
| 子どもの実の父親で、認知している | 協議・調停・審判で交流を取り決める | 取り決めの範囲を超えれば問題になりうる |
子どもへの接触もストーカー規制法の対象になりうる
ストーカー規制法は、恋愛感情などの好意や、それが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で行われる「つきまとい等」を規制しています。行為の向け先には本人だけでなく、その直系の親族や同居の親族も含まれます(ストーカー規制法2条1項)。子どもはこれにあたるため、元恋人の目的があなたとの復縁や別れへの恨みにあるなら、子どもへの待ち伏せや面会の要求も規制の対象になりえます。
「子どもに声をかけただけ」と受け止められやすい
一方で、子どもへの声かけだけが起きていると、「危害は加えていない」「親本人には接触していない」と受け止められ、警察の手続が進みにくいことがあります。インターネット上の法律相談にも、子どもへの声かけのみであることを理由に対応が難しいと言われた、という相談が見られます。
こうした場面では、子どもへの接触があなたに向けた行動の一部であることを、事実で示すことが大切です。次のような事情があれば、日時とあわせて伝えると、相手の目的を判断する材料になります。
- 子どもに、親の様子や居場所、新しい交際相手の有無を尋ねていること。
- 子どもに伝言や手紙を託していること。
- あなたが連絡を断った後に、子どもへの接触が始まっていること。
- 同じ時期に、あなた本人への連絡や待ち伏せも起きていること。
相談しても手続が進まないと感じる場合の考え方は、【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段で整理しています。
好意以外の目的がうかがえる場合
相手の目的が好意ではなく、ねたみや恨みなどにあるときは、東京都の迷惑防止条例の対象になることがあります。また、親の了解なく子どもを連れ出そうとする行為は未成年者誘拐の罪(刑法224条)に、16歳未満の子どもに性的な目的で会うことを求める行為は面会要求等の罪(刑法182条)にあたる可能性があります。どの枠組みで扱うかは、事実関係をもとに警察や弁護士が判断します。
場面ごとに初めにしておきたいこと
通学路や習い事の帰りに声をかけてくる
子どもには「話しかけられても返事をせずに離れ、後で教えてほしい」と、とる行動に絞って伝えます。学校や習い事の教室には、引き渡してよい人の確認と、相手が来たときの対応を相談しておきます。元恋人が交際中にお迎えをしていたことがある場合は、その点も伝えておくと行き違いを防げます。
子どものSNSやオンラインゲームでやり取りしている
交際中に、相手が子どものアカウントやゲームのフレンド登録を知っていることがあります。メッセージは、ブロックする前に画面を保存しておきます。あわせて、交際中に設定した位置情報の共有アプリや家族向けの共有機能が残っていないか、子どもの持ち物に見慣れない機器がないかも確認しておくと安心です。位置情報についてはGPS・AirTagで居場所を追跡された|改正ストーカー規制法と位置情報無承諾取得の罪をご覧ください。
子ども宛てにプレゼントや手紙が届く
子どもに返させたり、子どもを通じてお礼や断りを伝えたりするのは避けます。届いた物は、封筒や送り状も含めて捨てずに保管しておくと、後で記録として使えます。受け取ってしまった場合の考え方は【ストーカートラブル】贈り物や手紙が繰り返し届く、受け取ってしまったら不利になる?で解説しています。
交際中に撮った子どもの写真をSNSに載せている
子どもの写真を親の了解なく公開し続けることは、子どものプライバシーを損なうおそれがあります。親権者は子どもの法定代理人として、投稿者やサービスの運営者に削除を求めることができます。投稿の画面とURLを保存したうえで、削除を求めるようにしてください。
「子どものために使ったお金を返せ」と言われる
交際中に子どもの物を買ったり、習い事の費用を出したりしていた元恋人から、別れた後に返金を求められることがあります。お金の話は子どもを通さず、窓口を決めて扱うことが大切です。返す必要があるかどうかの考え方は【男女トラブル】交際相手の子どものために使ったお金を返してもらえるかをご参照ください。
交際中の関係を踏まえた、子どもへの伝え方
元恋人と過ごした時間が長いほど、子どもにとっても別れは大きな出来事です。相手を悪く言ったり、子どもが相手と話してしまったことを責めたりすると、子どもは次に会ったことを親に話さなくなりがちです。
年齢に応じて「今は会えない事情がある」ことを伝え、声をかけられたときの行動を一緒に確認しておくほうが、子どもの負担は小さくなります。子どもの気持ちの揺れが大きいときは、スクールカウンセラーなどに相談することも考えられます。
相手への意思表示は、窓口を通して一度だけ
子どもに近づかれると、直接会って「子どもには近づかないで」と言いたくなるものです。しかし、あなたから会いに行くと、相手にとっては接触の機会になり、かえってやり取りが再開するきっかけになることがあります。避けたい行動についてはストーカートラブルに遭ったら絶対にやってはいけない5つのこと|早期・穏便に解決するためにもご覧ください。
弁護士が代理人になれば、連絡の窓口を一本にしたうえで、あなた本人だけでなく子どもへの連絡や接触もやめるよう、書面で求めることができます。相手と合意書を交わす場合は、次のような条項を盛り込むことが考えられます。
- 本人と子どもへの連絡・接触をしないこと。
- 子どもの学校・保育園・習い事など、子どもの通う場所に近づかないこと。
- 子どものSNSやゲームのアカウントに連絡しないこと。
- 保有している子どもの写真や動画を削除し、公開しないこと。
- 約束に反した場合の違約金。
書面を送ることで相手を刺激しないかという点は、【ストーカートラブル】弁護士名で警告書を送ると、相手を刺激しない?で詳しく解説しています。
よくあるご質問
子どもが元恋人に会いたがっています。会わせてはいけないのでしょうか。
会わせるかどうかは、親権者であるあなたが子どもの利益を考えて決めることです。相手に復縁の要求やつきまといがない場合に、親が同席して会う機会を設けることもありえます。一方で、子どもとの面会を求める背景にあなたとの復縁がうかがえる場合は、会わせることで接触が続くきっかけになることもあるため、慎重に考えたほうがよいでしょう。
元恋人は子どもの父親ですが、認知していません。会わせる義務はありますか。
認知がされていない段階では、法律上の親子関係はなく、交流の取り決めもないため、会わせる義務はありません。相手が認知をした後は、交流について話し合いや家庭裁判所の手続で取り決めることになります。認知や養育費の手続とあわせて、どの順序で進めるかを整理しておくと安心です。
警察に相談すると、子どもも事情を聞かれますか。
子どもから話を聞く必要があるかどうかは事案によって異なり、聞く場合も年齢に配慮した方法がとられるのが一般的です。子どもへの負担が心配なときは、相談の際にその点を伝え、親が同席できるかなどを確認しておきましょう。
まとめ
- 親族ではない元恋人は、子どもとの交流を家庭裁判所に求める立場になく(民法766条の2)、会わせるかどうかは親権者が判断します。
- 元恋人が子どもの実の父親で認知している場合は、交流を取り決める手続がありますが、取り決めの外での接触まで認められるわけではありません。
- 子どもへの待ち伏せや面会の要求も、あなたへの好意や恨みを満たす目的で行われれば、ストーカー規制法の対象になりえます(ストーカー規制法2条1項)。
- 子どもへの接触があなたに向けた行動の一部であることを、日時とあわせて記録しておくことが大切です。
- 子どもを連絡役にせず、届いた物やメッセージは保管し、写真の公開には削除を求めます。
- 相手への意思表示は直接会わずに、弁護士などの窓口を通して行うことを検討します。
元恋人がお子さんに近づいてくる場面では、お子さんの気持ちとご自身の安全の両方に目を配りながら、法的な手段を選ぶ必要があります。弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしており、警察への相談の準備や、相手との連絡の窓口となることも含めてお手伝いしています。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


