【ストーカートラブル】家族がストーカー被害に遭っている|家族が代わりに相談するとき
ストーカー被害に遭い、相手やその弁護士から「示談をしたい」と申し入れを受けると、提示された金額が妥当なのかどうか、判断の手がかりがほしくなるものです。インターネット上にはさまざまな「相場」が出ていますが、数字だけを見て決めてしまうと、後から「条件をもっと確かめておけばよかった」と感じることがあります。
この記事では、被害を受けた方の立場から、ストーカー事件の示談金の目安がどのように語られているか、金額がどんな事情で動くのか、そして金額と同じくらい大切な示談の条件について整理します。
この記事は、2025年6月施行の刑法改正(懲役・禁錮の拘禁刑への一本化)と、近年のストーカー規制法の改正を踏まえて記載しています。示談金の額は個別の事情で大きく変わるため、ここで挙げる数字は一般的な傾向の紹介にとどまります。
公開されている目安は「数十万円から200万円程度」の幅で語られることが多い
刑事事件や犯罪被害を扱う法律事務所の解説を見ると、ストーカー事件の示談金の目安は「30万円から100万円程度」「30万円から200万円程度」といった幅で紹介されていることが多く、自らの取扱事例を集計して50万円前後を一つの目安として示している事務所もあります。裁判で慰謝料が認められた例をみても、数十万円から200万円前後に収まるものが多いとされています。
ただし、これらはあくまで傾向です。示談金は法律で金額が決まっているものではなく、被害者と加害者の合意で決まります。ストーカー事件は話し合いで解決されることが多く、判決まで進む例が少ないため、参照できる基準そのものが固まりにくいという事情もあります。数字の幅が大きいのは、そのためです。
示談金は「慰謝料」だけでできているわけではない
示談金を考えるときは、まず中身を分けてみることが役に立ちます。示談金は、精神的苦痛に対する慰謝料に、実際にかかった費用などを加えた合計として組み立てられることが一般的です。
| 費目 | 主な中身 | 手元に用意したい資料 |
|---|---|---|
| 慰謝料 | 不安・恐怖など精神的苦痛への賠償 | 被害の経過をまとめた記録、警察への相談の経過 |
| 治療費・通院費 | 心療内科などへの通院にかかった費用 | 診断書、領収書 |
| 転居費用 | やむを得ず引っ越した場合の費用 | 引越しの見積書・契約書、領収書 |
| 休業損害 | 仕事を休んだことによる収入の減少 | 勤務先の休業証明、給与明細 |
| 防犯対策の費用 | 防犯カメラや鍵の交換など | 購入・工事の領収書 |
どの費目をどこまで求められるかは、ストーカー行為との結びつきを説明できるかどうかで変わります。費目ごとに資料をそろえておくと、提示額が何を含んでいるのか、何が抜けているのかを確かめやすくなります。慰謝料の考え方については【ストーカートラブル】ストーカー被害の慰謝料|請求できる項目と組み立てでも詳しく解説しています。
金額を動かす主な事情
示談金の額は、次のような事情を総合して話し合われることが多いといえます。
行為の内容・回数・期間
つきまといや待ち伏せが自宅や職場にまで及んでいたか、どのくらいの期間・回数続いたか、計画的だったかといった点は、金額に影響しやすい事情です。
警告や禁止命令の後も続いていたか
警察から警告を受けた後や、禁止命令が出た後にも行為が続いていた場合、悪質さの評価に結びつきやすいと考えられています。
被害の結果
心身の不調で通院が必要になった、転居や退職を余儀なくされたといった事情があると、慰謝料だけでなく費用の面でも金額が積み上がります。
相手との関係と、相手の資力
上司と部下、教員と学生のように、立場の差を利用した行為は重く見られることがあります。一方で、示談は相手が実際に支払える範囲でしか成立しないため、相手の資力も現実には金額を左右します。
刑事手続の段階で、申し入れのされ方が変わる
加害者側にとって、示談は処分の見通しに関わるため、手続のどの段階かによって申し入れの時期や提示の仕方が変わることがあります。
| 段階 | 加害者側の事情 | 被害者側で意識したいこと |
|---|---|---|
| 被害届・告訴の前 | 事件化を避けたいと考えることが多い | 届出の扱いをどう取り決めるかを確かめる |
| 逮捕・勾留中 | 起訴されるかどうかの判断前に示談を急ぐことがある | 期限を区切られても、条件を確認する時間を確保する |
| 起訴後 | 判決での量刑への影響を考えている | 刑事手続の中で合意を記録する方法もある |
| 判決後 | 刑事上の動機は小さくなる | 民事の請求として話し合うことになる |
逮捕・勾留中の申し入れは、短い期間で返事を求められることがあります。急いで決める必要があるように感じても、金額と条件の両方を確かめてから判断することが大切です。相手の処分の結果を知る方法については【ストーカートラブル】被害者等通知制度を使う|相手の処分や出所の時期を知るをご覧ください。
金額と同じくらい大切な示談の条件
ストーカー事件の示談では、受け取る金額よりも、今後の安全をどう確保するかが重要になる場面が少なくありません。次のような条件が盛り込まれているかを確かめておきたいところです。
- 直接・間接を問わず接触しないこと(家族・勤務先・SNSを通じた接触を含むか)。
- 自宅や勤務先の近くに立ち入らないこと。
- 約束に違反した場合の違約金。
- 被害者の住所や連絡先を相手に伝えない進め方。
- 「許す」という意思表示(宥恕)を入れるかどうか。
- 被害届・告訴の扱い。
- 一括か分割か、分割の場合に支払いが滞ったときの取り決め。
とくに宥恕の文言は、相手の刑事処分に影響しやすい部分です。金銭は受け取るものの処罰感情については触れない、という形での合意を選ぶ被害者の方もいます。条件の具体的な組み立ては【ストーカートラブル】示談に入れる条件|接触禁止・転居・違約金で、約束が破られたときの対応は【ストーカートラブル】示談した後に相手が約束を破った|違約金と刑事手続の両面で解説しています。
提示額を検討するときの順序
提示を受けたら、金額の大小をすぐに判断するのではなく、次の順序で確かめていくと整理しやすくなります。
- 被害の経過を、日付・場所・行為の内容ごとに書き出します。
- 通院・転居・休業など、実際にかかった費用を資料とともにまとめます。
- 提示額にどの費目が含まれているのか、相手側に内訳を確かめます。
- 接触禁止や違約金など、安全に関わる条件が入っているかを確かめます。
- 金額と条件を合わせて、受け入れる・修正を求める・断るのいずれかを決めます。
被害の記録が整理されていると、こちらから金額や条件の修正を求める場面でも、根拠を示しながら話し合いを進めやすくなります。当事務所が扱った例として、元同僚からのつきまといについて、弁護士の介入で接触を止めたうえで解決金を受け取った事案を【解決事例】元同僚からのストーカー被害|弁護士の介入により付きまといを停止させ解決金100万円を受領した事例で紹介しています。もっとも、金額は事案ごとに異なり、同じ結果になるとは限りません。
提示を受けたときに迷いやすい場面
法律相談のポータルサイトでも、被害者の方から次のような相談が多く寄せられています。
金額も条件も示されず「示談の意思はあるか」とだけ聞かれた
加害者側の弁護士が、まず被害者に話し合う意思があるかを確認し、その後に具体的な案を示すという進め方は珍しくありません。意思を伝える前に、こちらとして重視する条件を整理しておくと、その後の話し合いがぶれにくくなります。
相手の勤務先の関係者や家族から金額を示された
弁護士ではない第三者が窓口になると、合意の内容があいまいなまま進むことがあります。誰が当事者として約束するのかを確かめ、書面に残すことが大切です。相手の家族から取り下げを求められている場合は【ストーカートラブル】相手の家族から被害届を取り下げるよう迫られている|応じる前に考えることと、働きかけを止める順序も参考にしてください。
低い金額で「今後一切、刑事でも民事でも問題にしない」と求められた
示談が成立すると、原則としてその後に追加の請求をすることは難しくなります。金額が被害に見合っているか、将来の安全を守る条件が入っているかを確かめないまま署名することは避けたいところです。
よくあるご質問
示談を断ると、お金を受け取る道はなくなりますか
示談を断っても、後から民事の損害賠償として請求することは考えられます。ただし、時間が経つと証拠がそろいにくくなったり、相手の資力が変わったりすることがあるため、断る場合も記録は残しておくことをおすすめします。
分割払いを提案されました
分割払いは支払いが途中で止まるおそれがあるため、期限の利益喪失条項を入れる、公正証書にする、刑事裁判の中で合意を記録してもらうなど、回収の見通しを立てやすい形を検討します。
示談に応じると、相手は必ず不起訴になりますか
示談の成立は処分を決めるうえで考慮される事情の一つですが、必ず不起訴になるとは限りません。行為の悪質さや、警告・禁止命令に従わなかった経緯などによっては、示談が成立しても起訴されることがあります。示談に応じるかどうかと、相手にどのような処分を望むかは、分けて考えてかまいません。
受け取った示談金に税金はかかりますか
心身の損害に対する賠償金は、一般に所得税の対象にならない扱いとされています。ただし、名目や内訳によって扱いが異なることもあるため、気になる場合は税務署や税理士に確認されると安心です。
相手と直接やり取りせずに進めるために
ストーカー事件では、示談の話し合いそのものが新たな接触のきっかけになるおそれがあります。弁護士が代理人となれば、相手との連絡を窓口に一本化し、住所や連絡先を伝えずに金額と条件の交渉を進めることができます。相手にすでに弁護士がついている場合の進め方は【ストーカートラブル】相手に弁護士がついた|相手方の代理人との話し方で、代理人を立てる意味は【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で解説しています。
示談金の目安は、あくまで判断の出発点です。提示額を受け入れるかどうかは、被害の中身と、これからの生活を守る条件とをあわせて考えることで、納得のいく判断に近づけます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


