【ストーカートラブル】加害者が釈放されるタイミングを、知ることはできる?

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

この記事は、2026年10月時点の刑事訴訟法、刑法、更生保護法、ストーカー行為等の規制等に関する法律と、法務省・警察庁が公表している被害者支援の制度や取組みに基づいて記載しています。通知の運用は、事件の内容や担当する検察庁・警察署によって異なる場合があります。


相手が逮捕された、あるいは刑務所に入ったと聞いたとき、次に気になるのは「いつ外に出てくるのか」という点ではないでしょうか。釈放のタイミングが分からないままでは、引っ越すべきか、通勤の経路を変えるべきか、家族に何を頼んでおくべきかを決めることができません。

 結論から言うと、加害者が釈放されるタイミングは、知ることができる場合があります。ただし、自分から申し出ておかないと届かない情報があること、事前に分かるか釈放の後に分かるかは場面によって違うこと、分かる場合も日付まで正確とは限らないこと、の3点を前提にしておく必要があります。

 この記事では、「どの場面で、どのくらい前に、どこまで正確に分かるのか」という視点で整理し、通知制度のほかに相手の動きを把握する仕組みや、検討が進んでいる新しい制度にも触れます。通知制度の申出方法の詳細は【ストーカートラブル】被害者等通知制度を使う|相手の処分や出所の時期を知るで、釈放の日に向けた準備は【ストーカートラブル】相手が釈放される|時期を知る方法と、その日に備えることで扱っています。

「事前に・日付まで」分かる場面は限られる

 相手が外に出る場面は、逮捕・勾留中、裁判中、刑務所に入った後の3つの段階に分かれます。それぞれについて、いつ・どの程度の情報が届くのかをまとめると、おおむね次のとおりです。

釈放の場面分かる時期分かる内容主な窓口
勾留されずに釈放、処分保留・不起訴による釈放釈放の後になることが多い釈放されたという事実担当の警察署、検察庁
保釈釈放の後になることが多い保釈されたという事実検察庁
執行猶予・罰金の判決判決の日が分かれば、その日と見込める判決の日と結果検察庁
刑期満了による出所予定は事前、実際の日付は釈放の後予定は「年月」の単位検察庁
仮釈放審理の開始と結果が通知される審理の開始日と結果地方更生保護委員会
再被害防止のための釈放予定の通知釈放の直前「月の上旬・中旬・下旬」の単位検察庁


 表のとおり、事前に日付まで正確に分かる場面はほとんどなく、多くは「釈放されたことを後から知る」か「おおよその時期を前もって知る」かのどちらかです。例外といえるのが執行猶予や罰金の判決で、判決で刑の全部の執行猶予や罰金が言い渡されると勾留状が効力を失うため(刑事訴訟法345条)、公判期日を知っていれば、判決の日に相手が外に出ることを見込めます。

日付まで分かりにくいのはなぜか


起訴前の釈放は、決まってから実行までが短い

 逮捕された人は48時間以内に検察官へ送られ、勾留が認められると原則10日間、延長されると最長でさらに10日間、身柄を拘束されます(刑事訴訟法203条1項・205条1項・208条)。勾留請求がされなかった場合や、勾留の期間内に処分保留・不起訴と判断された場合は、その判断の日に釈放されるのが通常です。判断から実行までの時間が短いため、被害者への連絡は釈放の後になりやすいといえます。処分保留の意味は処分保留で釈放された|終わったわけではない状態で説明しています。

通知は「できる限り」の情報提供で、検察官の判断が入る

 検察庁の被害者等通知制度は、法律で通知が義務づけられた手続ではなく、法務省が定めた運用に基づき、被害者の希望に応じて情報を提供する仕組みです。加害者の改善更生やプライバシーとの兼ね合いもあるため、事件の性質などから相当でないと判断された事項は、希望しても通知されないことがあります。とくに、釈放の直前に予定を知らせる通知は、転居など相手との接触を避ける措置をとる必要があり、検察官が相当と認めた場合に限られます。

警告や禁止命令だけの段階には、そもそも「釈放」がない

 ストーカー規制法に基づく警告や禁止命令は行政上の措置であり、相手の身柄を拘束するものではありません。この段階の相手はふだんどおり生活しているため、釈放のタイミングを考える場面には当たりません。被害者として把握しておきたいのは、警告や禁止命令が出たかどうかと、その後の相手の行動です。禁止命令の申出については【ストーカートラブル】禁止命令を出してもらうには|申出の方法と出るまでの期間をご覧ください。

通知制度のほかに、相手の動きを把握する仕組み

 釈放の日付が分からない場合でも、関係機関が相手の動きを把握し、必要に応じて被害者の安全確保に生かす仕組みがあります。通知制度とあわせて理解しておくと、情報の空白を小さくすることにつながります。

警察の再被害防止の取組みと「加害者連絡」

 警察は、同じ加害者から再び危害を加えられるおそれのある被害者を「再被害防止対象者」に指定し、関連する情報の収集、連絡体制の確立、加害者への警告などの措置をとっています。刑事施設などから通報を受けた釈放に関する情報も、提供の必要性を個別に判断したうえで、被害者に伝えることがあります。

 これとは別に、ストーカー規制法に基づく禁止命令等を受けた加害者全員に対し、警察官が電話や面談で近況や被害者への執着の程度を確認する「加害者連絡」という取組みが、2024年ごろから各地の警察で運用されています。確認した内容がそのまま被害者に伝えられるわけではありませんが、相手の様子の変化を警察が把握する手がかりになります。担当の警察官と連絡が取れる状態を保ち、気になる出来事があれば早めに伝えておくことが大切です。

仮釈放や保護観察付きの執行猶予の後は、保護観察所と警察が情報を共有する

 ストーカー事案をはじめとする恋愛感情等のもつれに起因する暴力的事案で、仮釈放となった人や保護観察付きの執行猶予となった人については、2013年から、保護観察所と警察が、被害者に接触しようとしているといった問題行動の情報を共有する運用がとられています。守るべき事項への違反が確認されたときは、保護観察所が仮釈放の取消しや執行猶予の言渡しの取消しの申出を行うこともあります。

 被害者の側も、保護観察所から、保護観察が始まった日や終わる予定の日、相手が守るべき事項(特別遵守事項)の内容などの通知を受けることができます。申出先は、有罪の言渡しをした裁判所に対応する検察庁です。また、仮釈放の審理が始まった段階では、地方更生保護委員会に意見を述べることもできます(更生保護法38条)。判決後の見守りについては【ストーカートラブル】相手が執行猶予になった|判決の後に続く見守りで詳しく扱っています。

相手が少年の場合

 相手が20歳未満で、少年審判により少年院送致や保護観察の処分を受けた場合は、仮退院などの審理に関する事項や保護観察中の状況などが、地方更生保護委員会や保護観察所から通知されます。申出先は、少年院送致の場合は最寄りの少年鑑別所、保護観察処分の場合は保護観察所です。家庭裁判所から検察庁に送られて刑事処分となった少年については、成人と同じ枠組みで通知を受けることができます。

接近を知らせる仕組みは、まだ検討の段階

 2026年7月に政府がまとめた「詐欺及びストーカー被害拡大防止のための緊急対策」では、一定の加害者にGPS機器などを装着させ、被害者に近づいた場合に通知する仕組みについて検討を進めるとされました。同年10月には、警察庁が導入の是非を含めた具体的な検討に入ると報じられています。もっとも、現時点で利用できる制度ではないため、当面は既存の通知制度と警察との連絡体制を組み合わせて備えることになります。

釈放の情報を早く受け取るために、伝えておくこと

 通知の多くは、被害者の側から希望を伝えることで動き出します。手続の段階に合わせて次のことを伝えておくと、情報が届く可能性を高めることができます。

  1. 担当の捜査員に、釈放されるときは知らせてほしいと伝え、担当者の部署名と氏名を控えておきます。
  2. 検察庁の担当者に、処分の結果に加えて、相手の身柄の状況(釈放や保釈の有無)の通知を希望すると伝えます。
  3. 起訴された場合は、公判期日と裁判結果の通知を希望し、判決の日を把握しておきます。
  4. 実刑判決が確定した後は、出所情報の通知を書面で申し出て、転居などの必要がある場合は釈放予定の通知もあわせて希望します。
  5. これまでの接触の経過や相手の発言を時系列で整理し、再被害のおそれを具体的に伝えます。
  6. 引っ越しの予定がある場合は、通知の届け先を家族や代理人の弁護士にすることも検討します。


 どの段階で何を伝えればよいか迷う場合や、ご自身で窓口とやり取りする負担が大きい場合は、弁護士を代理人として通知を受けることもできます。代理人を立てる意味は【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で説明しています。逮捕の後に誰から連絡が来るのかについては、【ストーカートラブル】ストーカーの加害者が逮捕された後、私に連絡は来る?もあわせてご覧ください。

よくあるご質問


刑務所や拘置所に直接問い合わせれば、出所の日を教えてもらえますか。

 収容されている人の釈放の予定は個人に関する情報にあたるため、施設に問い合わせても答えてもらえるとは限りません。出所の時期を知りたい場合は、事件を扱った検察庁を通じて被害者等通知制度を利用するのが基本です。

相手の弁護人や家族に聞けば、釈放の時期は分かりますか。

 相手の弁護人は依頼者のために活動する立場にあり、教えてもらえるとは限りません。また、ご自身から相手側に連絡をとることで、かえって接触のきっかけを作ってしまうおそれもあります。情報を得る窓口は、警察と検察庁に絞るほうが安心です。

釈放を知らされないまま相手が外に出ていたら、どうすればよいですか。

 相手を見かけたり連絡が来たりした場合は、相手と話そうとせず、身の安全を確保したうえで110番通報や担当の警察署への連絡を優先します。禁止命令が出ていれば命令に違反する行為として、保釈中であれば保釈の取消しにつながる事情として扱われることがあります。保釈の条件については保釈の条件(制限住居・接触禁止・渡航制限)に違反したらどうなるかで説明しています。

まとめ


  • 加害者が釈放されるタイミングは知ることができる場合がありますが、事前に日付まで正確に分かる場面は限られます。
  • 起訴前の釈放や保釈は釈放の後に知らされることが多く、身柄の状況の通知は自分から希望しておく必要があります。
  • 執行猶予や罰金の判決では判決の日に釈放されるのが通常なので、公判期日を把握しておくことが手がかりになります(刑事訴訟法345条)。
  • 刑務所からの出所は予定が「年月」の単位で知らされ、再被害防止のため特に必要な場合に限って直前の釈放予定が通知されます。
  • 警察の再被害防止の取組みや加害者連絡、保護観察所と警察の情報共有など、通知制度のほかにも相手の動きを把握する仕組みがあります。
  • GPS機器を使って加害者の接近を知らせる仕組みは、現時点では検討の段階です。


 釈放の時期を知るための申出は、手続の段階ごとに窓口が変わるため、気づいたときには時期を過ぎていることもあります。相手が逮捕された時点、起訴された時点、判決が確定した時点のそれぞれで、何を誰に伝えておくかを早めに確認しておくことが、落ち着いて過ごすための備えになります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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