【ストーカートラブル】加害者が私の親や兄弟に連絡してくるときは?
この記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法と、2024年4月1日に施行された改正DV防止法の内容を反映しています(2026年10月時点)。
「離婚して半年たつのに、子どものこと以外では連絡しないでほしいと伝えても、毎日のように復縁を求めるメッセージが届く」「面会交流の日程が合わないと、元夫が朝晩自宅に押しかけてくる。警察に相談したら、子どもの父親だから難しいと言われた」。元配偶者からのつきまといについて、当事務所にはこうしたご相談が寄せられます。
インターネット上では「元配偶者でもストーカー規制法の対象になる」と説明されることが多く、それ自体は誤りではありません。ただ、元配偶者の場合は、子ども・養育費・財産分与といった離婚後も続く用件があるため、どこからが規制法の対象になる行為なのか、外から見て分かりにくいという事情があります。警察の受け止め方が相談者の期待とずれるのも、多くはこの点に原因があります。
この記事では、元配偶者のつきまといにストーカー規制法がどこまで使えるのかを、法律が求める「目的」の考え方を軸に整理します。あわせて、規制法だけでは足りない場合に検討するDV防止法の保護命令や住所を守る手続にも触れます。面会交流を口実にした接触への具体的な対応は【ストーカートラブル】元配偶者からのつきまとい|子の面会を口実にされるで解説していますので、あわせてご覧ください。
元配偶者でもストーカー規制法の対象になる
婚姻していたかどうかは要件ではない
ストーカー規制法は、行為をする人と相手との関係を限定していません。元交際相手に限らず、元夫・元妻であっても、法律が定める目的をもって一定の行為を繰り返せば規制の対象になります(ストーカー規制法2条)。元配偶者を対象から外す規定はなく、ほかの人からのつきまといと同じ物差しで評価されます。
離婚前の別居中でも当てはまり得る
離婚が成立していない別居中の配偶者でも、規制法の適用は否定されていません。ただ、婚姻中は夫婦として話し合う必要がある場面も多く、連絡が「義務のないことの要求」にあたるかは、離婚後より慎重に判断される傾向があります。別居中で身体への暴力や脅迫がある場合は、後で述べるDV防止法の保護命令もあわせて検討することになります。
分かれ目は「何のための行動か」という目的
ストーカー規制法の対象になるのは、特定の人に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨の感情を充足する目的で行われる行為です(同法2条1項)。元配偶者の場合、この目的の部分がどう見えるかで、規制法を使えるかどうかの見通しが変わります。
復縁を求める・未練が残っている場合
「やり直したい」「まだ好きだ」といった連絡や、復縁を前提にした待ち伏せは、好意の感情を充足する目的が比較的読み取りやすい類型です。拒否を伝えた後も同じような連絡が続いていれば、規制法の対象として相談を進めやすいといえます。復縁の要求とストーカー行為の境目については復縁を執拗に迫られる|復縁強要とストーカーの境界もご参照ください。
離婚への恨みや、支配を続けたい気持ちの場合
離婚を切り出されたことへの怒りや、相手を思いどおりにしたい気持ちから行動している場合もあります。法律上の「怨恨」は、好意が受け入れられなかったことから生じたものを指すため、単なる怒りや財産をめぐる争いだけでは目的が認められにくいことがあります。
一方で、離婚を受け入れられないという気持ちは、好意が満たされなかったことへの恨みとして評価されることもあります。どの感情が主に働いているかは、相手の言葉や行動の経過から総合的に判断されるため、送られてきたメッセージの文面は、相手を責める内容であっても消さずに残しておくことが大切です。
子どもや養育費の連絡を名目にしている場合
元配偶者のケースで判断が難しくなるのが、子どもや養育費に関する連絡です。面会交流や養育費の受け渡しは離婚後も続く正当な用件であり、その範囲の連絡自体を規制法で止めることはできません。
ただし、用件を名目にしながら、実際には復縁の要求や私生活への干渉が中心になっている場合は話が別です。取り決めた日以外の押しかけ、深夜の連続した電話、交際相手の有無を問いただすといった行為は、名目にかかわらず、目的と行為の中身から評価されます。
| 状況 | 規制法での見え方 | あわせて検討する手段 |
|---|---|---|
| 復縁を求める連絡や待ち伏せが続く | 好意の目的が読み取りやすい | 警察への相談・警告・禁止命令 |
| 離婚への怒りから嫌がらせをする | 目的の評価が分かれることがある | 迷惑防止条例・脅迫罪・名誉毀損・民事の差止め |
| 子どもの用件を名目に私生活に立ち入る | 用件の範囲を超えた部分が問題になる | 連絡方法の取り決め・家庭裁判所の手続・弁護士を窓口にする |
| 婚姻中から暴力や脅迫があった | 規制法とあわせて検討する | DV防止法の保護命令 |
元配偶者からの行為で問題になりやすいもの
規制法は「つきまとい等」として8つの類型を定めています(同法2条1項各号)。元配偶者からのご相談で多いのは、次のような行為です。
- 新居や勤務先、子どもの学校の近くでの待ち伏せや見張り。
- 「今日は帰りが遅かったな」など、行動を見ていると伝える連絡。
- 復縁や二人だけでの面会を繰り返し求めること。
- 拒否した後も続く連続した電話、メッセージ、SNSへの書き込み。
- 共通の知人や親族に、離婚の経緯を一方的に言いふらすこと。
「拒まれたにもかかわらず」の意味
電話やメッセージについては、拒まれたにもかかわらず連続して行うことが要件になっています。子どもの用件があるため連絡を全面的に断りにくい場合でも、「子どもに関すること以外の連絡はしないでください」と範囲を区切って伝えておけば、その範囲を超えた連絡は拒否後のものとして整理しやすくなります。1回の行為と、それが繰り返された場合の違いは連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで詳しく解説しています。
子どもの持ち物を使った位置情報の取得
GPS機器や紛失防止タグを相手の承諾なく取り付けて位置情報を得る行為も、規制法の対象です(同法2条3項)。2025年12月30日の改正で、紛失防止タグによる位置情報の取得が明文で加えられました。元配偶者の場合、面会交流の際に子どもに渡した物を通じて居場所を把握しようとするケースもあるため、子どもの持ち物にも目を配っておくと安心です。
ストーカー規制法で止める流れ
警察への相談と警告
まずは住所地を管轄する警察署に相談し、つきまといの経過を伝えます。警察が規制法の対象と判断すれば、相手に警告を出すことがあります(同法4条)。2025年12月30日の改正で、被害者からの申出がなくても警察が職権で警告できる仕組みが設けられました。元配偶者に知られることへの不安から申出をためらっていた方にとっては、相談しやすくなった面があります。
相談したのに警告まで進まない場合の考え方は【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段で整理しています。
禁止命令と、違反した場合の扱い
警告に従わない場合や危険が差し迫っている場合は、都道府県公安委員会が禁止命令を出すことがあります(同法5条)。禁止命令の効力は1年で、必要があれば延長されます。禁止命令は法的な拘束力をもつ命令であり、違反すれば刑事罰の対象になる点で、警告とは性質が異なります。
ストーカー行為そのものは1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金が定められています(同法18条、19条1項)。申出の方法や期間の目安は【ストーカートラブル】禁止命令を出してもらうには|申出の方法と出るまでの期間をご覧ください。
ストーカー規制法だけでは足りないときの手段
婚姻中に暴力や脅迫があった場合の保護命令
婚姻中に身体への暴力や、生命・身体・自由・名誉・財産に対する脅迫を受けていて、離婚後も引き続き暴力等を受けるおそれがある場合は、DV防止法に基づく保護命令を地方裁判所に申し立てることが考えられます(DV防止法10条)。2024年4月1日の改正で、接近禁止命令の期間は1年に延び、緊急時以外の連続したメッセージ送信や位置情報の無承諾取得を禁じる命令、子どもへの電話等を禁じる命令も設けられました。
保護命令は、婚姻中から暴力や脅迫があったことが前提になるため、離婚後に初めてつきまといが始まった場合は使えません。規制法と保護命令のどちらで守られるかの見分け方はストーカー規制法とDV防止法の違い|自分のケースはどっちで守られる?で解説しています。
裁判所に接近禁止を求める民事の手続
目的の要件が満たしにくく規制法を使いにくい場合でも、平穏に暮らす権利の侵害を理由に、裁判所へ接近や面談の強要の禁止を求める仮処分を申し立てる方法があります。警察の手続と裁判所の手続の使い分けは接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けをご参照ください。
住所を知られないための手続
元配偶者は、戸籍の附票や子どもの住民票などを通じて新しい住所を調べられる立場にあることがあります。つきまといの被害を受けている場合は、市区町村に住民票や戸籍の附票の写しの交付を制限する支援措置を申し出ることができ、ご自身だけでなくお子さんの分もあわせて手続しておくことが大切です。手続の順序は【ストーカートラブル】引っ越した先を知られないための手続の順序で解説しています。
被害を受けている側が今からできること
子どもの用件があると、やり取りを完全には断ち切れないこともあります。だからこそ、後で手続を使うときに通用する形で事実を残しておくことが役立ちます。
- 子どもの用件と、それ以外の連絡を分けて考え、受ける連絡の範囲を一度だけ簡潔に伝えます。
- 連絡や来訪があった日時、方法、内容を時系列で記録し、メッセージや着信履歴は消さずに保存します。
- 面会交流や養育費の連絡方法を、メールや専用アプリなど記録が残る手段に限定するよう取り決めます。
- 身の危険を感じたときは110番、相談の段階であれば警察相談専用電話の#9110や最寄りの警察署を利用します。
- ご自身で直接やり取りすることに負担がある場合は、弁護士を連絡の窓口にすることを検討します。
よくあるご質問
面会交流を取り決めている場合、元夫からの連絡を全部拒んでもよいのですか?
取り決めた面会交流に必要な連絡まで一方的に拒むと、面会交流をめぐる別の争いにつながることがあります。拒むのは子どもの用件を超えた連絡に限り、必要な連絡は記録が残る方法に絞るのが現実的です。面会交流の取り決め自体を見直したい場合は、家庭裁判所の手続を利用することになります。
警察から「家族のことなので」と言われた場合はどうすればよいですか?
子どもの用件が絡むと、警察が規制法の対象かどうかの判断を慎重にすることがあります。その場合でも、拒否を伝えた後の連絡の回数や時間帯、用件と関係のない内容を記録で示すと、評価が変わることがあります。相談した日時と対応した担当部署も控えておきましょう。
元夫に弁護士から連絡してもらうと、かえって刺激になりませんか?
受け止め方は相手によって異なり、刺激にならないとは言い切れません。ただ、弁護士が窓口になることで、ご本人が直接やり取りする機会を減らし、相手の連絡を記録に残る形にまとめやすくなります。文面や送り方を相手の状況に合わせて調整できますので、警察の手続と並行して検討されるとよいでしょう。
まとめ
- 元夫・元妻であっても、法律が定める目的で一定の行為を繰り返せば、ストーカー規制法の対象になります(ストーカー規制法2条)。
- 規制法が使えるかどうかは、好意やそれが満たされなかった恨みを充足する目的が読み取れるかで分かれます(同法2条1項)。
- 子どもや養育費の用件の範囲内の連絡は止められませんが、名目を超えた押しかけや私生活への干渉は、目的と行為の中身から評価されます。
- 警察は職権でも警告を出せるようになり、従わない場合は公安委員会が禁止命令を出すことがあります(同法4条、5条)。
- 婚姻中から暴力や脅迫があった場合は、DV防止法の保護命令を地方裁判所に申し立てることも考えられます(DV防止法10条)。
- 規制法を使いにくい場合は、民事の仮処分や住民票・戸籍の附票の交付制限といった手段をあわせて検討します。
- 連絡の範囲を区切って伝え、やり取りの記録を消さずに残しておくことが、どの手続を使う場合にも役立ちます。
元配偶者からのつきまといにお悩みの方へ
元配偶者からのつきまといは、子どもや離婚後の取り決めが絡むぶん、どの手続から使うべきかの判断が難しくなりがちです。弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしており、警察への相談の準備や、相手との連絡の窓口となることも含めてお手伝いしています。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


