【不貞慰謝料】違法に集めた証拠は民事裁判で排除されるのか
パパ活の相手と初めて会う「顔合わせ」のあと、「交通費をもらえなかった」「常識がない」と責めるメッセージが届き、どう返せばよいか迷っている方がいます。中には、払わないなら運営に通報する、SNSに書くといった言葉が添えられていることもあります。この記事では、顔合わせの交通費を払う義務があるのかを事前の約束の有無から整理し、責められたときの受け止め方と、手元で整えておきたいことを順にご説明します。
本記事は2026年10月時点の法令をもとにしています。個別の事情によって結論は変わりますので、具体的なご判断は弁護士にご相談ください。
顔合わせの「交通費」はどういう性質のお金か
パパ活では、本格的に会う前に短い時間お茶をする「顔合わせ」が行われることがあり、その際に男性側が「交通費」の名目で数千円程度を渡す慣行があると言われています。ただ、これは当事者の間で広まっているやり方にすぎず、法律で支払いが定められたお金ではありません。
また、名目は交通費でも、実際にかかった電車賃やタクシー代を精算するものとは限りません。実費と関係なく定額で渡されることが多く、実質的には「会ってくれたことへのお礼」に近い性格を持つ場合があります。支払う義務があるかどうかは、交通費という言葉ではなく、二人の間でどのような約束があったかで考えることになります。
払う約束をしていなかった場合
契約は、一方の申込みと相手の承諾が合致したときに成立します(民法522条1項)。口約束でも成立しますが、反対にいえば、交通費を渡すという話が出ていなかったのであれば、支払いの義務が生じる根拠は見当たりにくいといえます。
相手から「顔合わせでは交通費を払うのが普通」と言われることがありますが、一部で広まっている慣行があるというだけで、約束していない支払いが義務になるとは考えにくいところです。自分の判断で待ち合わせ場所まで来た交通費は、それぞれが負担するのが一般的な考え方です。
とはいえ、メッセージのやり取りの中で、はっきりした約束ではなくても「当日はお車代もお渡しします」といった一言を送っていることがあります。払う約束をしていないと思っていても、念のため過去のやり取りを読み返しておくと安心です。
事前に「交通費を渡す」と伝えていた場合
お礼として渡す約束だったとき
来てくれたお礼として渡すという約束は、法律上は贈与の約束とみられることが多いと考えられます。書面によらない贈与は、まだ渡していない部分について、各当事者が解除できるとされています(民法550条)。アプリのメッセージで約束しただけであれば、渡す前であれば撤回できる余地があります。
ただ、メッセージの文面が「書面」にあたるかどうかや、約束の趣旨がお礼だったのかどうかは、やり取り全体から判断されます。撤回できる余地があるからといって、相手の言い分をまったく聞かずに突き放すと、感情的な対立が深まりやすい点には気をつけたいところです。
会うことの対価として約束していたとき
「30分お茶をしてくれたら交通費として5,000円」のように、会うこととお金が引き換えになっていた場合は、単なるお礼ではなく、条件付きの合意とみる余地があります。その場合、相手が約束どおりに来て時間を過ごしたのであれば、約束した金額の支払いを求められる可能性は否定できません。
一方で、相手が待ち合わせに大幅に遅れた、写真と明らかに別人だった、数分で帰ってしまったなど、約束の前提が満たされていない事情があれば、その点を踏まえて考えることになります。
性的な関係を前提とする約束だったとき
金銭と引き換えに性的な関係を持つという約束は、公序良俗に反するものとして無効と考えられています(民法90条)。顔合わせの交通費がそうした約束の一部として話されていた場合、その支払いを法的に求めることは難しいと考えられます。ただし、このような場面では、交通費の問題より先に、相手の年齢や刑事上の問題を確認する必要が出てくることがあります。
| 事前の約束 | 考え方の目安 |
|---|---|
| 交通費の話は出ていなかった | 支払いの義務が生じる根拠は見当たりにくい |
| お礼として渡すと伝えていた | 渡す前であれば撤回できる余地がある |
| 会う対価として金額を決めていた | 約束どおり会えていれば支払いを求められる可能性がある |
| 性的な関係を前提とする約束だった | 約束自体が無効と考えられ、別の問題の確認が先になる |
「払わなかった」と責められたときの受け止め方
相手が交通費を求めて連絡してくること自体は、それだけで違法になるわけではありません。約束があったと考えている相手にとっては、自然な行動ともいえます。まずは落ち着いて、相手が何を根拠に、いくらを求めているのかを確認することが出発点になります。
一方で、支払いを求める言葉に、次のような内容が加わってくることがあります。
- 払わなければ、勤務先や家族に知らせると告げる。
- SNSや掲示板に、写真や個人情報とともに書き込むと告げる。
- 約束していた金額を大きく超える額を「迷惑料」として求める。
- 深夜に繰り返し電話やメッセージを送ってくる。
このように相手の名誉や生活に害を加えることを告げて金銭を求める行為は、内容によって脅迫罪(刑法222条)や恐喝罪(刑法249条)にあたるおそれがあります。実際に書き込まれた場合には、名誉毀損やプライバシー侵害として削除を求められることもあります。どこからが脅しにあたるかについては、「訴えるぞ」「警察に行くぞ」は脅迫か|正当な権利行使との境界線もあわせてご覧ください。
責められると、つい言い返したくなるものですが、相手を罵ったり、相手の容姿や仕事について書いたりすると、今度はこちらの言動が問題にされるおそれがあります。返信する場合も、事実だけを短く伝えるのが無難です。返信をしないことの位置づけについては、【男女トラブル】既読無視をしたら脅すようなメッセージが来た|返信しないことの位置づけと、届いた言葉の見分け方で詳しくご説明しています。
まず手元で整えておくこと
- アプリやLINEのやり取りを、相手のアカウント名と日時が分かる形で保存すること。
- 交通費や金額について、事前にどのような言葉を交わしていたかを確認すること。
- 会った日時、場所、過ごした時間、その場で支払ったお茶代などを書き出しておくこと。
- 相手が知っている自分の情報(名前、勤務先、住んでいる地域、写真など)を書き出しておくこと。
- 相手からの連絡の回数と時間帯を記録しておくこと。
アプリを退会したり相手をブロックしたりすると、やり取りが見られなくなることがあります。ブロックする前に、保存を済ませておくことをおすすめします。
払って終わらせるか、払わずにおくか
事前に交通費を渡すと約束していて、金額も数千円程度であれば、約束どおり支払って区切りをつけるという判断も十分に考えられます。その場合は、何のお金をいくら払うのかをメッセージで明確にし、これで清算とすることを相手に確認しておくと、後から蒸し返されにくくなります。銀行振込では振込人の名前が相手に伝わるため、本名を知られたくない事情がある場合は、支払いの方法も含めて考えておく必要があります。
反対に、約束がなかった場合や、脅すような言葉とともに約束を超える金額を求められている場合は、求められるまま支払うと、次の要求につながることがあります。少額だからと応じる前に、なぜ払うのか、払えば本当に終わるのかを一度立ち止まって考えることが大切です。お手当をめぐる約束のトラブル全般については、パパ活の「約束したお手当」トラブル|口約束・条件変更でもめたらでも解説しています。
相手が18歳未満かもしれない場合
やり取りの中で、相手が高校生であることをうかがわせる話が出ていたり、年齢を確認していなかったりする場合は、交通費の問題とは別に注意が必要です。18歳未満の相手と金銭を介して会うことは、その後の行為の内容によっては刑事上の問題に発展するおそれがあります。相手の年齢に不安がある場合は、交通費の話を進める前に、パパ活相手が未成年だった|男性側の児童買春リスクと対応をご確認のうえ、早めに弁護士へご相談ください。
弁護士に相談したほうがよい場面
交通費の金額は小さくても、相手の言動によっては一人で対応するのが難しくなることがあります。次のような場合は、早い段階で弁護士に相談することを検討してください。
- 勤務先や家族に知らせる、SNSに書くといった言葉が出ている。
- 相手が名前や勤務先、写真などを把握している。
- 約束を大きく超える金額を求められている。
- 連絡が止まらず、日常生活に支障が出ている。
- 相手の年齢に不安がある。
弁護士が依頼を受けると、相手との連絡の窓口を弁護士に移し、本人への直接の連絡を控えるよう求めることができます。そのうえで、支払う必要があるお金かどうかを整理し、支払う場合は清算の内容を書面に残すことで、後からの蒸し返しを防ぐことにつながります。書き込みが実際に行われた場合の削除の求めや、脅しが続く場合の警察への相談についても、状況に応じて進め方をご一緒に考えます。
よくあるご質問
交通費を払わなかったことで、裁判を起こされることはありますか
法律上は、60万円以下の金銭の請求であれば少額訴訟という手続を使うことができ(民事訴訟法368条1項)、可能性がまったくないとはいえません。ただ、訴えるには相手が本名と住所を明らかにする必要があり、費用や手間もかかるため、数千円の交通費をめぐって実際に裁判まで進むことは多くないと考えられます。裁判所から書類が届いた場合は、放置せずにご相談ください。
アプリの運営に通報すると言われました
アプリの運営会社が行うのは、利用規約に基づく警告や利用停止などの措置で、交通費の支払いを命じるものではありません。ただし、多くのアプリでは金銭のやり取りを目的とした利用を規約で制限しているため、やり取りの内容によっては、こちらのアカウントが制限を受けることはあり得ます。
相手が数分で帰ってしまった場合でも、払うべきですか
約束が「会って一定の時間を過ごすこと」と引き換えだったのであれば、相手が約束どおりに過ごしていない事情として考慮されることがあります。どこまでの支払いが妥当かは、事前のやり取りの文言と当日の経緯によって変わりますので、記録を整理したうえでご判断ください。
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顔合わせの交通費は、金額こそ小さいものの、事前の約束の内容や相手の言動によって、取るべき対応が変わってきます。払うかどうかを決める前に、まずはやり取りを保存し、何を約束していたのかを確かめるところから始めてみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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