【男女トラブル】『AIで作ったものだ』と言い逃れされた|真贋を争う材料
本記事は、2026年10月時点の民法・家事事件手続法などの規定をもとに、一般的な考え方を整理したものです。個別の事情によって結論が変わることがあります。
交際相手から妊娠を告げられたものの、同じ時期に相手に別の交際相手がいた、あるいは関係を持った時期と妊娠の時期が合わないように思える。そのような状況で「責任を取ってほしい」と言われ、どう受け止めればよいか分からなくなる方は少なくありません。
父親が誰かはっきりしない段階では、気持ちの面でも法律の面でも、まだ決まっていないことが多く残っています。ただ、確かめる前に強く否定したり、連絡を絶ったりすると、後の話し合いがこじれる原因になります。本記事では、父子関係が確定していない段階で何が決まっていないのか、どのように確かめるのか、求められる費目ごとにどう考えるのかを順に整理します。
「責任」という言葉の中身を分けて考える
「責任を取って」という言葉には、いくつもの求めが含まれていることがあります。まずは何を求められているのかを分けて受け止めることが、整理の出発点になります。
- 中絶にかかる費用や通院費の負担。
- 出産を選んだ場合の出産費用や、出産までの生活費の負担。
- 生まれた子の認知。
- 認知を前提とした養育費の支払い。
- 精神的な負担に対する慰謝料。
- 結婚や同居の求め。
このうち、認知と養育費は、法律上の父子関係があることを前提にしています。中絶費用や出産費用についても、裁判例の考え方は「その妊娠に関わった男女が負担を分け合う」というものです。そのため、どの求めについても、自分が父親である可能性がどの程度あるのかが土台になります。一方、結婚は本人どうしの意思で決めるもので、妊娠を理由に応じる法的な義務はありません。
父子関係が確定していない段階で決まっていないこと
婚姻していない男女の間に生まれた子は、生まれただけでは父親との間に法律上の親子関係が生じません。法律上の父子関係は、父親が自ら認める「任意認知」か、子の側から家庭裁判所の手続を通じて求める「強制認知」によって生じます(民法779条、787条)。
つまり、相手が「あなたの子」と言っていても、その言葉だけで法律上の扶養義務が発生するわけではありません。反対に、こちらが「自分の子ではない」と言っても、それだけで責任がなくなるわけでもありません。父子関係は最終的には客観的な資料によって判断され、実際の手続ではDNA鑑定の結果が大きな意味を持ちます。
ここで押さえておきたいのは、「確かめたい」という姿勢そのものは不合理ではないという点です。関係を持った時期や相手の交際状況から疑問が生じているのであれば、それを伝えたうえで確認の方法を相談することは、責任から逃げることとは違います。
父子関係を確かめる方法
確認の方法は、出産前か出産後か、相手が協力するかどうかによって変わります。
| 時期 | 方法 | 押さえておきたい点 |
|---|---|---|
| 出産前 | 母体の血液を使う出生前のDNA鑑定 | 相手の協力が前提で、費用の分担も話し合いが必要 |
| 出生後 | 子と父とされる人の検体によるDNA鑑定 | 当事者が合意して行う私的な鑑定と、裁判所の手続で行う鑑定がある |
| 出生後 | 認知調停 | 調停委員を通じてDNA鑑定を勧められることがある |
| 出生後 | 認知の訴え(裁判) | 鑑定の結果などをもとに裁判所が判断する |
出産前に確かめる場合
妊娠中でも、母体の血液から胎児のDNAを調べる方法で父子関係を確認できるとする医療機関や検査機関があります。ただし、これは相手の協力がなければ行えません。こちらから一方的に検査を求める法的な手段はなく、相手の体調や気持ちに配慮した伝え方が必要です。
中絶を検討している場合、母体保護法による人工妊娠中絶ができる時期には限りがあります(妊娠22週未満)。鑑定の結果を待つことが相手の選択の幅を狭めることにならないか、という点にも目を向けておくと、話し合いを進めやすくなります。
胎児認知を求められた場合
出産前に認知を求められることもあります。生まれる前の子を認知するには、母親の承諾が必要です(民法783条1項)。父子関係に疑問が残るまま胎児認知に応じると、後から争う場面で手続の負担が大きくなります。確認ができるまで認知を待ってほしいと伝えることは、一つの考え方です。胎児認知の意味については、【男女トラブル】胎児認知を求められた|生まれる前に認知する意味で解説しています。
出産後に確かめる場合
出産後は、子の検体を用いた鑑定ができるようになります。当事者どうしで合意して私的に鑑定を行うこともできますが、相手が任意に応じない場合などには、子の側から認知調停が申し立てられることがあります。認知を求める事件は先に調停を経る決まりになっており(家事事件手続法257条)、調停で当事者が父子関係について合意し、家庭裁判所が必要な事実を調べたうえで正当と認めれば、合意に相当する審判がされます(同法277条)。
調停の中では、調停委員を通じてDNA鑑定を勧められることがあります。鑑定に応じないことだけを理由に直ちに父親と認定されるわけではありませんが、裁判になった場合、拒んだ事情がほかの証拠とあわせて不利に評価されることがあります。確かめたいという立場であれば、鑑定には応じる方向で考えるほうが、自分の主張とも一貫します。
求められる費目ごとの考え方
中絶費用・通院費
中絶費用について、東京高等裁判所の判決(平成21年10月15日)は、性交渉は男女の共同行為であるため、中絶による身体的・精神的・経済的な不利益は男女が等しく分担すべきだという考え方を示しています。この考え方からすると、求められる額は費用の全額ではなく、半分程度が目安とされることが多いです。
ただし、この考え方はその妊娠に関わった男性であることが前提です。父親か分からない段階で求められた場合、「父親であることを認めたものではない」ことを書面で明らかにしたうえで、相手の負担を和らげる意味で一定額を支払う、という解決が選ばれることもあります。払うか払わないかの二択ではなく、どのような位置づけで払うのかを決めておくことが大切です。費用の分け方については、【男女トラブル】中絶費用は折半なのか|「おかしい」と感じたときの整理の仕方もあわせてご覧ください。
出産費用・養育費
出産を選んだ場合の費用や、生まれた子の養育費は、父子関係が確定してから本格的に問題になります。養育費は認知によって法律上の父子関係が生じたことを前提としますが、認知の効力は出生の時にさかのぼります(民法784条)。そのため、確認を先送りにしても、父親と分かった後に過去の分を含めて求められることがあります。
「確かめるまで何もしない」のではなく、「確かめる方法と、結果が出たときの扱い」を早めに話し合っておくほうが、双方の負担は軽くなります。
慰謝料
互いに同意したうえでの交際と妊娠であれば、それだけで慰謝料が発生するとは限りません。慰謝料が問題になるのは、妊娠を告げられた後の対応が著しく不誠実だった場合や、既婚であることを隠して交際していた場合などです。父子関係が分からない段階で慰謝料を求められた場合は、何に対する慰謝料なのかを相手に確かめることから始めます。
認知した後に「父親ではなかった」と分かった場合
相手の求めに応じて認知した後で、鑑定などにより父子関係がないと分かることもあります。2024年4月に施行された改正民法では、認知をした本人も、事実に反する認知であることを理由に、原則として認知の時から7年以内に限り、認知の無効を求める訴えを起こせることになりました(民法786条)。
とはいえ、いったん認知すると、戸籍への記載、養育費の支払い、子との関わりなど、多くのことが動き始めます。後から覆すには裁判の手続が必要となり、子の生活にも影響が及びます。疑問があるのであれば、認知の前に確かめておくことが、子にとっても自分にとっても負担の少ない道です。
確かめる前に避けたい言動
父親か分からないという不安や戸惑いから、強い言葉が出てしまうことがあります。しかし、この段階の言動は、後の話し合いや手続でそのまま記録として残ります。
- 相手の交際関係を一方的に責め立てたり、周囲に言いふらしたりすること。
- 「中絶しなければ縁を切る」など、相手に判断を迫る言葉を送ること。
- 返事をせずに連絡を絶つこと。
- 内容を確かめずに、責任を認める書面や支払いの約束に署名すること。
- 疑問を残したまま、その場の流れで認知に応じること。
相手の交際関係について周囲に話したりSNSに書き込んだりすると、名誉やプライバシーの問題として、こちらが責任を問われるおそれもあります。疑問は相手に落ち着いた言葉で伝え、確認の方法を一緒に考えたいという形にとどめるのが無難です。妊娠を告げられた直後の言葉選びについては、【男女トラブル】妊娠を告げられたときに言ってはいけない言葉|後で不利になる発言で詳しく取り上げています。
相手やその家族と話し合うときの進め方
妊娠の話題は、相手にとっても心身の負担が大きいものです。相手の家族が話し合いに加わったり、短い期限を切って返事を求められたりすることもあります。話し合いでは、次の順番で整理していくと、論点が混ざりにくくなります。
- 相手が何を求めているのかを費目ごとに確認します。
- 関係を持った時期や相手の交際状況など、父子関係に疑問を持つ理由を整理します。
- 確認の方法(出生前の鑑定、出生後の鑑定、調停)と費用の分担を話し合います。
- 結果が出るまでの間に、相手の負担を和らげるために何をするかを決めます。
- 合意できた内容を書面にします。
当事者どうしでは感情がぶつかり、確認の話そのものが進まないこともあります。その場合、弁護士が窓口となって相手方と連絡を取り、鑑定の段取りや費用の扱い、結果が出たときの取り決めを書面で整えることができます。ご本人が直接相手やその家族と向き合わずに済むことで、相手の側も落ち着いて考えやすくなる場合があります。
関連する解説記事
- 【男女トラブル】交際相手から妊娠を告げられた|最初の1週間に確認すること
- 【男女トラブル】避妊していたのに妊娠したと言われた|最初に確認すること
- 【男女トラブル】別れた相手が「妊娠していた」と言い出した|後から出た話への向き合い方
- 【男女トラブル】妊娠を理由に結婚を迫られている|応じない場合に起きること
- 【解決事例】交際相手の妊娠をめぐり100万円超を請求された事例|直接の面談に応じず解決金30万円で合意書を締結
- 【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応
ご相談について
父親が分からない状況で責任を問われたときは、否定するか認めるかを急いで決めるのではなく、何を求められているのかを分け、確かめる方法とその後の扱いを順に決めていくことが大切です。相手の心身の負担にも配慮しながら話し合いを進めたい場合や、当事者どうしでは話が進まない場合には、早めに弁護士へご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


