【男女トラブル】元恋人に貸したお金は、少額訴訟で請求できる?
この記事は、2026年10月時点の道路交通法と、各都道府県警察が公表している放置違反金制度の案内をもとに作成しています。手続の細かな運用は地域によって異なることがありますので、届いた書面の記載もあわせてご確認ください。
交際中、相手がローンの審査に通らない、駐車場を借りられないといった事情から、自分の名義で車を契約して相手に使ってもらうことがあります。普段は問題なく過ぎていても、ある日、身に覚えのない駐車違反の通知が自分宛てに届き、驚いて相談に来られる方は少なくありません。
実際に車を止めたのは恋人なのに、なぜ自分に通知が来るのか。払わなければならないのか、払った分を相手に求められるのか。この記事では、放置違反金の仕組みを確認したうえで、名義を貸した側が取れる対応と、別れた後に残りやすい問題を順に整理します。
駐車違反の通知は誰に届くのか
駐車違反をした車に確認標章(いわゆる黄色いステッカー)が取り付けられると、まずは実際に運転していた人が警察署に出頭し、反則金を納めるのが本来の流れです。問題は、運転者が出頭しない場合です。
運転者が出頭しなければ「使用者」に放置違反金の納付が命じられる
2006年6月から、運転者の責任を追及できない場合には、車の「使用者」に放置違反金の納付を命じる制度が始まりました(道路交通法51条の4)。確認標章の取付けから一定期間内に運転者が反則金を納めないなどの場合、使用者に「弁明通知書」と「仮納付書」が送られ、その後「放置違反金納付命令書」が届く流れです。
放置違反金の額は、運転者が納めるはずだった反則金と同じ額とされています。たとえば普通車で駐車禁止場所に止めた場合は1万5,000円、駐停車禁止場所であれば1万8,000円が基本です。なお、放置違反金は使用者に課されるもので、使用者に違反点数が付くものではありません。
「使用者」は、通常は車検証の使用者欄に記載された人
ここでいう使用者とは、車を使用する権限があり、その運行を支配・管理する人を指します。各警察本部の案内では、通常は自動車検査証(車検証)の使用者欄に記載されている人がこれにあたるとされています。そのため、誰が実際に運転していたかではなく、車検証に誰の名前が載っているかによって、通知の届き先がおおむね決まります。
| 車検証の記載 | 通知が届く先の目安 |
|---|---|
| 所有者・使用者とも自分 | 自分 |
| 所有者は自分、使用者は恋人 | 原則として恋人 |
| 所有者はローン会社、使用者は自分 | 自分 |
| 所有者・使用者とも恋人(ローンの保証人のみ自分) | 原則として恋人 |
名義を貸したと思っていても、実際に車検証のどの欄に自分の名前があるかは人によって異なります。まずは車検証の写しやローン契約書を確認し、自分がどの立場にあるのかを把握しておくことが出発点になります。
通知が届いたら、まず確かめること
弁明通知書が届いた段階で、慌てて仮納付をする前に、次の点を確認しておくと後の話し合いが進めやすくなります。
- 通知書に書かれた違反の日時と場所。
- 弁明書の提出期限と、仮納付の期限。
- その日時に車を使っていたのが誰か分かるやり取り(LINEのメッセージ、予定の連絡など)。
- 鍵や車をふだん誰が管理しているか。
- 名義を貸すときに、維持費や違反の負担について何か取り決めをしていたか。
恋人に出頭してもらうという方法
最も負担の少ない解決は、運転していた恋人本人に警察署へ出頭してもらい、反則金を納めてもらうことです。運転者が反則金を納めれば、使用者に放置違反金は課されません。制度上、納付命令が出た後に運転者が反則金を納めた場合などにも、納付命令が取り消される仕組みが設けられています。
ただし、出頭すれば恋人には違反点数が付くため、相手が応じないこともあります。依頼するときは、期限が迫っていることと、出頭しない場合は名義人が負担することになる事情を落ち着いて伝え、やり取りを記録に残しておくとよいでしょう。
弁明書に「運転していない」と書けば済むのか
弁明書を出す機会は与えられていますが、放置違反金はもともと運転者が分からない、あるいは出頭しない場合に使用者の責任を問う制度です。そのため、「自分は運転していない」「恋人が運転していた」と記載するだけでは、納付命令を避けられないことが多いと考えられます。レンタカー会社が納付命令の取消しを求めた裁判でも、貸し出した側の請求が退けられたと報じられています。
弁明書は、違反の事実そのものに誤りがある場合などに意味を持つ手続です。運転者の氏名を記載すること自体はできますが、それによって警察が運転者を必ず特定してくれるとは限らない点に留意が必要です。
払わずに放置した場合に起きること
「自分は運転していないのだから払わない」と通知を放置すると、使用者である名義人に次のような不利益が生じるおそれがあります。
- 督促状が届き、期限までに納めないと、財産の差押えなどの滞納処分に進むことがあります。
- 放置違反金を納めていない車は、車検を受けることができません(道路交通法51条の7)。
- 一定期間内に繰り返し納付命令を受けると、車の使用を一定期間禁止する使用制限命令の対象になることがあります。
恋人に払ってもらう話がまとまらないうちに期限が来てしまう場合は、いったん自分で納めておき、後から相手に求めるという順序も現実的な選択肢です。納めたときの領収書は必ず保管しておきましょう。
立て替えた違反金を恋人に請求できるか
自分が放置違反金を納めた場合、その分を恋人に負担してもらえるかは、行政との関係とは別の、二人の間の問題になります。
名義を貸したときの約束が手がかりになる
名義を貸すとき、「税金や保険、違反があったら使う側が払う」といった話をしていたのであれば、その約束に基づいて立て替えた分を求めることが考えられます。書面がなくても、LINEのやり取りや、相手がこれまで維持費を払ってきた経過などから、取り決めの内容がうかがえることがあります。
約束がはっきりしない場合
明確な約束がなかったとしても、相手が違法な駐車をしたことによって、名義人が放置違反金を負担することになったという事情があれば、その負担を損害として運転した相手に求める構成も考えられます。この場合は、違反の日時に相手が車を使っていたことを示す資料が重要になります。日頃から相手が車を専用していたこと、違反の当日に相手が車で出かけていたことなどを、残っているやり取りから整理しておくとよいでしょう。
請求の進め方
金額が比較的小さいことが多いため、まずは領収書の写しを示して支払いを求める話し合いから始めるのが一般的です。応じてもらえない場合には、書面で請求したり、少額訴訟などの裁判手続を検討したりする段階に進みます。交際中に立て替えた他の費用もあわせて清算したい場合は、次の記事も参考になります。
違反金だけでは終わらない、車の名義貸しのリスク
駐車違反の通知は、名義を貸していることのリスクが目に見える形で表れた一場面にすぎません。名義人には、ほかにも次のような負担や責任が及ぶことがあります。
まず、自動車税(種別割)は原則として所有者(ローン会社が所有者となっている場合は使用者)に課されます。相手が払わなければ、督促は名義人に届きます。また、人身事故が起きた場合、車の所有者や名義人は、自動車損害賠償保障法に基づく運行供用者責任を問われる可能性があります。任意保険の運転者の範囲が限定されていると、補償が受けられない場面もあり得ます。
さらに、ローンを自分名義で組んでいる場合には、相手が支払いをやめても返済義務は契約者である自分に残ります。ローン審査のために実際の使用者を偽っていた場合には、ローン会社との間で別の問題が生じるおそれもあります。名義を貸すこと全般の評価については、次の記事でも触れています。
別れた後も相手が車に乗り続けているとき
別れた後も相手が名義をそのままにして車に乗り続けていると、違反金や税金、事故の責任の心配はいつまでも続きます。根本的な対処は、名義を相手に移してもらうか、車を返してもらうかのどちらかです。
名義を移す手続(移転登録や使用者の変更)には、新しく名義人となる相手側の書類や協力が必要になります。いつまでに、どちらが手続をするのか、費用は誰が負担するのかを具体的に決め、できれば書面にしておくと、後の行き違いを防ぎやすくなります。車そのものを返してほしい場合の考え方は、次の記事で整理しています。
相手が連絡に応じない、引っ越して行方が分からないといった場合には、話し合いだけで進めるのは難しくなります。名義変更の手続を求める裁判なども含め、取り得る手段を検討することになりますので、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
- 駐車違反の運転者が出頭しない場合、放置違反金の納付は車の使用者に命じられ、使用者は通常、車検証の使用者欄に記載された人です。
- 通知が届いたら、まず期限と違反の日時を確認し、運転していた恋人に出頭を求めることが最も負担の少ない解決になります。
- 放置すると滞納処分や車検を受けられないなどの不利益が生じるおそれがあるため、期限内の対応が大切です。
- 立て替えた違反金は、名義を貸したときの約束や当日の使用状況を示す記録をもとに、相手に求めることが考えられます。
- 別れた後も名義が残っている場合は、名義変更や車の返還について具体的な期限と方法を決めておくことが、将来の負担を防ぐことにつながります。
駐車違反の通知は、名義を貸したままの状態を見直すきっかけにもなります。違反金の精算だけでなく、税金やローン、事故の責任まで含めて、今の名義をどうするかを整理しておくことが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


