【男女トラブル】別れた後も合鍵を返してもらえないときは?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

別れた相手に渡していた合鍵が戻ってこないと、留守中に部屋へ入られるのではないかという不安が続きます。連絡しても返事がない、「なくした」「そのうち返す」とはぐらかされる、「返してほしいなら会って」と条件をつけられるなど、返ってこない事情はさまざまです。この記事では、合鍵を返してもらえないときの法的な考え方、相手の言い分ごとの対応、返還の求め方の順序、鍵の交換費用の扱い、合鍵で部屋に入られた場合の対応までを整理します。

本記事は2026年10月時点の法令に基づいています。刑法の改正により、2025年6月1日から懲役刑・禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されています。


渡した合鍵は「返してもらえる」のが原則です

 交際中に渡す合鍵の多くは、自分で作った鍵を相手に使わせていたもので、鍵そのものの持ち主は渡した側(賃貸物件では貸主)です。法律上は、物を無償で貸す「使用貸借」(民法593条)にあたると考えるのが一般的です。

 使用貸借は、使う目的を終えたときに終了し、また期間や目的を定めていない場合には貸主がいつでも解除できます(民法597条・598条)。交際中に部屋へ出入りするために渡した鍵であれば、交際が終われば返すべき物と考えるのが自然でしょう。相手が返還を渋っていても、持ち主として返還を求めること自体は正当な要求です。

 相手から「あれはもらった物だ」と言われることもあります。しかし、合鍵は住まいへの出入りに使う物であり、交際が終わった後まで相手が持ち続けることを前提に譲り渡したと見るのは、通常は難しいと考えられます。渡したときのメッセージなどが残っていれば、確認しておくとよいでしょう。

相手の言い分ごとに、対応の方向は変わります


相手の言い分・状況考えられること対応の方向
連絡を無視している気まずさから先延ばしにしている場合も、意図的に避けている場合もある記録に残る方法で期限を区切って求め、反応がなければ書面に切り替える
「忘れた」「そのうち返す」返す気はあっても手間を惜しんでいることが多い返送の方法と期限をこちらから具体的に示す
「なくした」「捨てた」事実か確かめにくく、複製の可能性も否定できない鍵の交換を検討し、費用の負担を求めることを考える
「会わないと返さない」鍵が復縁や話し合いの材料にされている会うことを返還の条件にせず、郵送や第三者を通じた返還を求める
「もらった物だ」鍵の位置づけについて認識が食い違っている貸した物であることを書面で伝え、返還を求める


 どの場合にも共通するのは、返してもらう手段を「直接会うこと」に限らないことです。別れた相手と二人きりで会う場は話がこじれやすく、別のトラブルに発展することもあります。

返還を求めるときの進め方


返し方をこちらから具体的に示す

 「返して」とだけ伝えると、相手は「今度会ったときに」と先送りしがちです。郵送で返してほしいこと、送料をどちらが負担するか、いつまでに送ってほしいかを具体的に示すと、相手も動きやすくなります。簡易書留やレターパックなど配達の記録が残る方法を指定しておけば、「送った」「届いていない」という行き違いも防げます。

期限を区切り、記録が残る形で伝える

 まずはLINEやメールで、返還を求めることと期限を伝え、やり取りを保存しておきます。それでも反応がない場合は、内容証明郵便で次の内容を伝える方法があります。

  1. 合鍵を貸していたこと。
  2. 交際の終了に伴い、返還を求めること。
  3. 返還の方法と期限。
  4. 期限までに返還がない場合は鍵を交換し、その費用を請求することがあること。


 内容証明郵便は、いつ、どのような内容の文書を送ったかを郵便局が証明するものです。それ自体に相手を従わせる力はありませんが、こちらが正式に返還を求めた事実を記録として残せます。後で鍵の交換費用を求める場面でも、この記録が意味を持ちます。

勤務先や実家に送るときは慎重に

 相手の現住所が分からず、勤務先や実家しか分からないこともあります。ただし、交際トラブルの内容が同僚や家族の目に触れる形で送ると、名誉やプライバシーをめぐって相手から反論を受けるおそれがあります。送る場合でも本人宛ての親展とし、封筒の外側に事情が分かる記載をしないなどの配慮が欠かせません。

自分で取り返しに行かない

 相手の家に押しかけて取り返す、相手の留守中に部屋に入って探す、といった行動は避けてください。権利があっても、裁判などの手続によらずに自分の力で実現することは原則として認められていません(自力救済の禁止)。相手の住まいに無断で入れば、こちらが住居侵入罪に問われるおそれもあります。

鍵を替えた費用は相手に求められるか

 合鍵が返ってこない以上、防犯のために鍵(シリンダー)の交換を考える方は少なくありません。返してもらえたとしても複製されていないとは言い切れないため、交換を優先する判断もあり得ます。鍵を替えるかどうかの考え方は、【男女トラブル】別れた相手が合鍵を持っている|返してもらう交渉と、鍵を替える判断でも解説しています。

 交換費用を相手に負担してもらえるかは、事情によって見通しが分かれます。費用を求めやすいのは、次のような事情がある場合です。

  • 返還を繰り返し求めたのに、相手が応じなかった記録があります。
  • 相手が「なくした」「捨てた」と認めるメッセージが残っています。
  • 相手が無断で複製した、または合鍵で無断で部屋に入ったことがうかがえます。


 反対に、次のような事情があると、相手から争われやすくなります。

  • 返還を一度も求めないまま、鍵を交換しています。
  • 相手は返そうとしたのに、こちらが受け取らなかった経緯があります。
  • 交換の内容が、防犯上の必要を超えて高額になっています。


 相手が支払いに応じない場合は、60万円以下の金銭の支払いを求める少額訴訟(民事訴訟法368条)を利用する方法もあります。ただし、訴状を相手に届ける必要があるため、相手の住所が分からないと進めにくい点に注意が必要です。鍵そのものの返還を裁判で求めることも考えられますが、費用や時間を考えると、鍵の交換と費用の請求を組み合わせるほうが現実的な場面が多いでしょう。

 賃貸物件の場合、鍵の交換は管理会社や貸主の承諾を得て行うのが通常です。契約で合鍵の作成に承諾が必要とされていることもあるため、返却されていない鍵があることは早めに管理会社に伝えておくと、退去時の精算での行き違いを避けやすくなります。

合鍵で部屋に入られた、入られた形跡があるとき

 合鍵を持っていても、別れた後に住人の意思に反して部屋に入れば、住居侵入罪(刑法130条)が成立し得ます。法定刑は3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です。交際中に出入りを認めていたことは、別れた後の立ち入りを認める理由にはなりません。

 物の位置が変わっている、持ち物がなくなっているなど入られた形跡がある場合は、室内の写真を撮る、なくなった物を書き出すなどして記録を残したうえで、警察に相談してください。在宅中に相手が入ってこようとしているなど差し迫った状況では、ためらわず110番通報をしてください。

 別れた後も自宅に押しかける、自宅の付近で待ち伏せするといった行動が繰り返される場合は、ストーカー規制法の対象となることもあります。入られた後の対応は【男女トラブル】別れた相手に勝手に部屋へ入られていた、集合住宅での備えは【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることで解説しています。

弁護士に依頼した場合にできること

 当事務所にご依頼いただいた場合、相手方に受任通知を送り、以後の連絡の窓口を弁護士に一本化します。ご本人が相手と直接やり取りしたり、会ったりする必要はありません。

 そのうえで、弁護士宛てに送ってもらうなど合鍵の返還方法を調整し、必要に応じて次のような内容を盛り込んだ合意書の作成を目指します。

  • 合鍵をすべて返還したこと、複製した鍵を持っていないことの確認。
  • 今後、住居に立ち入らないこと、連絡や接触をしないことの約束。
  • 鍵の交換費用など、精算すべき金銭の取り扱い。
  • 約束に違反した場合の取り扱い。


 もっとも、合意書で「複製していない」と約束してもらっても、それだけで複製がないことまで確かめられるわけではありません。不安が残る場合は、鍵の交換と組み合わせて考えるのが現実的です。また、合鍵の問題は、荷物の受け渡しや金銭の精算など、別れに伴うほかの問題と一緒に整理したほうが早く片づくこともあります。

よくあるご質問


合鍵を返してもらうためだけに、相手と会うべきでしょうか

 まずは会わずに返してもらう方法を検討することをおすすめします。相手が会うことにこだわる場合、その場が復縁の話し合いや別の要求の場になることもあります。どうしても会う場合は、人目のある場所を選び、短時間で済ませ、信頼できる人に同席してもらうなどの備えをしておくと安心です。

相手の荷物が部屋に残っています。合鍵を返さないなら処分してもよいでしょうか

 合鍵が返ってこないことと、相手の荷物の扱いは別の問題です。返してくれないからといって荷物を勝手に処分すると、こちらが損害賠償を求められるおそれがあります。荷物の扱いは【男女トラブル】相手の荷物が家に残っている・自分の荷物を取りに行きたい|勝手に処分してよいかもご参照ください。

合鍵を返してもらえば、鍵の交換は不要でしょうか

 返ってきた合鍵とは別に複製されている可能性は、外から確かめることができません。相手が合鍵を手放すまでの期間や、別れ際の相手の言動などから不安が残るのであれば、交換を検討する意味はあります。費用や手続については、賃貸物件であれば管理会社にも相談してみてください。

関連する解説記事



 合鍵が返ってこない状態は、目に見える被害がなくても、暮らしの安心を少しずつ損なっていきます。相手の反応を待ち続けるよりも、返還の求め方を整え、必要であれば鍵の交換や費用の請求まで見通しを立てておくことが、気持ちの面でも区切りをつける助けになります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【男女トラブル】別れた後も合鍵を返してもらえないときは?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼