愛人契約・関係解消時のトラブル|約束したお手当・マンションはどうなる
別れた後、元恋人から「交際中に使ったお金を返してほしい」と言われ、やり取りを重ねるうちに金額が膨らんでいく。最初はデート代の一部だった請求に、プレゼント代や慰謝料、「迷惑料」が加わり、返事が遅れるたびに上乗せされていく。こうしたご相談は少なくありません。
請求額が増え続けると、「どこまで払えば終わるのか」が見えなくなり、焦って一部を払ってしまう方もいます。しかし、相手の示す金額が増えたからといって、その分の支払義務が当然に生じるわけではありません。この記事では、元恋人からの請求額が増えていく場面で、何を分けて考え、どのように対応すればよいかを整理します。
本記事は、元恋人から金銭を求められている側の方に向けた一般的な解説です。支払義務の有無や適切な対応は、交際の経緯や残っている記録によって変わります。
請求額が増えていくよくある経過
ご相談の中でみられる経過には、いくつかの型があります。
- デート代の返還から始まり、プレゼント代・旅行代・家賃の負担分と、項目が少しずつ増えていきます。
- 返事を保留している間に、「遅れた分」「精神的苦痛の分」として金額が上乗せされます。
- 一部を支払った後に、「それは最初の分だけ」と別の名目で請求が続きます。
- 相手の家族や友人が加わり、それぞれが別の金額を示してきます。
- 「払わないなら家族や職場に伝える」といった言葉とともに、金額が引き上げられます。
いずれの場合も共通しているのは、金額の根拠が示されないまま、数字だけが動いているという点です。請求額の大小よりも、それぞれの項目に法的な根拠があるかどうかを見ていくことが、対応の出発点になります。
項目ごとに支払義務があるかを分けて考える
元恋人からの請求は、いくつもの名目がひとまとめにされていることが多いため、まず項目を分けて考えます。
交際中に相手が負担したデート代やプレゼント代
交際中に一方が自分の意思で負担した食事代や旅行代、贈ったプレゼントは、法律上は贈与(民法549条)と考えられるのが一般的です。書面によらない贈与であっても、すでに渡し終えた部分は後から取り消すことができないとされています(民法550条)。返還の義務が生じうるのは、「後で半分返してね」など、返すことを前提にしたやり取りがあった場合です。そして、そうした合意があったことは、請求する側が示す必要があります。
贈与と貸付の違いについては、別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いで詳しく解説しています。
実際に借りたお金
交際中に借りたお金は、別れた後も返す必要があります。ただし、返す義務があるのは借りた金額です。個人間の貸し借りでは、利息の約束がなければ利息を請求することはできず(民法589条1項)、約束があっても利息制限法の上限を超える部分は無効になります。返済期限を過ぎた場合には遅延損害金が生じることがありますが、相手が一方的に決めた「迷惑料」や「手間賃」が上乗せの根拠になるわけではありません。
慰謝料・精神的苦痛の分
交際関係を終えること自体は、原則として違法な行為とはいえないため、別れたことだけを理由とする慰謝料は認められにくいと考えられています。婚約が成立していた場合や、交際中に暴力があった場合などは別に検討が必要ですが、その場合でも金額は事情に応じて判断されるもので、請求する側が自由に決められるものではありません。
請求の名目ごとの整理は、次のとおりです。
| 請求の名目 | 支払義務が生じうる場面 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| デート代・プレゼント代 | 返すことを前提にした合意があった場合 | 合意を示すやり取りが残っているか |
| 借りたお金 | 実際に借りていた場合 | 借りた金額と、すでに返した金額 |
| 利息・遅延分 | 利息の約束がある場合、返済期限を過ぎた場合 | 約束の内容と利息制限法の上限 |
| 慰謝料 | 婚約破棄や暴力など、違法な行為があった場合 | どの行為を理由にしているか |
| 迷惑料・手間賃 | 法的な根拠がある場面は限られる | 何を根拠にしているか |
金額が増えていく請求はどう評価されるか
根拠のない上乗せ部分は、どれだけ強く求められても、法的に支払う義務がある部分ではありません。相手が訴訟や支払督促といった手続をとった場合でも、裁判所が認めるのは、根拠が示された範囲に限られます。
また、請求の内容に根拠がある場合でも、求め方によっては別の問題が生じます。「払わなければ家族に知らせる」「職場に伝える」などの言葉で支払いを迫ることは、内容や程度によって恐喝罪(刑法249条)や脅迫罪(刑法222条)にあたる可能性があります。権利の行使であっても、その方法が社会通念上許される範囲を超えれば、恐喝罪が成立しうると考えられています。
一方で、「払わないなら弁護士に相談する」「訴訟を起こす」といった言葉は、正当な手続をとる意思を伝えているにすぎない場合が多く、それだけで違法になるとは限りません。言葉の強さだけで判断せず、何を材料に支払いを迫っているのかを見ることが大切です。どこからが問題になるのかは、「訴えるぞ」「警察に行くぞ」は脅迫か|正当な権利行使との境界線で整理しています。
一部を払えば請求は止まるのか
「少しでも払えば落ち着くのではないか」と考えて、求められた額の一部を払う方もいます。しかし、根拠を確かめないまま支払うと、相手に「求めれば払ってもらえる」と受け止められ、次の請求の足がかりになることがあります。支払ったという事実が、後から「請求を認めていた」という主張に使われるおそれもあります。
支払いに応じるのであれば、何に対する支払いで、これで全てが終わるのかを書面で確認しておく必要があります。いったん合意した後に新たな要求が来た場合の考え方は、【男女トラブル】一度は合意したのに相手が追加の要求をしてきた|前回の合意で終わっている範囲の見分け方と示談したのに再度請求された|清算条項と蒸し返しへの対応で解説しています。
すでに脅されて支払ってしまった場合でも、事情によっては、強迫による取消し(民法96条1項)などを理由に返還を求める余地があります。詳しくは払ってしまった後に取り戻せるか|恐喝・強迫を理由とする返還をご覧ください。
請求額が増え続けるときに手元でできること
相手とのやり取りが続いている段階でも、ご自身でできることがあります。
- 相手からのLINE・メール・通話の記録を削除せずに保存し、画面の撮影など複数の形で残しておきます。
- 請求額がいつ、どの名目で、いくらに変わったのかを時系列で書き出します。
- 交際中のお金のやり取りが分かる振込の記録やメッセージを集めておきます。
- 新たな借用書や誓約書、念書には、その場で署名しないようにします。
- 相手と二人きりで会って話し合うことは避けます。
- 自宅に来る、つきまとうなど身の危険を感じる場合は、ためらわずに警察に相談します。
請求額の推移は、次のような表にしておくと、弁護士に相談する際にも状況が伝わりやすくなります。
| 日付 | 相手が示した金額 | 名目 | やり取りの手段 |
|---|---|---|---|
| 〇月〇日 | 10万円 | デート代の半分 | LINE |
| 〇月〇日 | 30万円 | デート代とプレゼント代 | LINE |
| 〇月〇日 | 80万円 | 上記に慰謝料を追加 | 電話 |
金額が動いた経過を並べると、どの時点でどの項目が追加されたのかが見えてきます。根拠のある部分とない部分を切り分ける作業は、この整理から始まります。
弁護士が間に入ると何が変わるか
弁護士に依頼すると、弁護士が代理人として相手に受任通知を送り、以後の連絡窓口を弁護士に一本化するよう求めます。ご本人が相手と直接やり取りする必要がなくなるため、やり取りのたびに金額が上乗せされる状況から距離をとりやすくなります。受任通知の働きについては、受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかで解説しています。
そのうえで、相手の請求を項目ごとに確認し、根拠のある部分とない部分を分けて交渉します。合意に至った場合には、清算条項(この合意で定めたもの以外に互いに請求しないことを確認する条項)や、今後接触しないことを約束する条項を入れた合意書を作成し、追加の請求が出にくい形で終えることを目指します。
当事務所が扱った事案には、元交際相手から遊興費の返還を求められて支払いを続けていた方が、弁護士からの通告を経て支払いと接触が止まったケースもあります。経過や結果は事案によって異なりますが、参考として【解決事例】元交際相手から遊興費の返還を求められ4年近く毎月15万円を支払っていた女性|弁護士の通告で支払いと接触が止まった事例をご覧ください。交際関係の解消に伴う金銭の清算について、当事務所の対応内容は【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応でご紹介しています。
よくあるご質問
返事をしないでいると、請求額はさらに増えていくのでしょうか
相手が示す金額が増えることはあっても、それによって支払義務が増えるわけではありません。法的に加算されうるのは、実際に存在する借金について返済期限を過ぎた後の遅延損害金などに限られます。ただし、何も応じないままでいると、相手の行動が強まることもあります。返答の内容や方法は、早めに弁護士と相談して決めることをおすすめします。
相手の家族が出てきて、別の金額を請求されました
相手の家族は、本人から代理を任されていない限り、本人に代わって請求する立場にはありません。家族が独自に金額を上乗せしている場合は、その根拠も含めて確認が必要です。【男女トラブル】相手の家族が代わりに交渉に出てきた|代理権の有無の確かめ方もあわせてご覧ください。
一度「払う」と言ってしまいました。もう断れないのでしょうか
支払うと伝えたことがあっても、それだけで請求された金額の全てについて支払義務が確定するとは限りません。何に対して、いくらを、どのような状況で約束したのかによって評価が変わります。強く迫られて約束した場合などは、約束の効力そのものを争える場合もあります。
元恋人からの請求額が増え続けるときは、金額の大きさに気持ちが引っ張られがちですが、大切なのは、項目ごとに根拠を確かめることと、根拠の示されない上乗せにその場で応じないことです。一人で相手と向き合うほど請求が積み重なりやすい場面では、早い段階で第三者を間に入れることも選択肢の一つになります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


