【風俗トラブル・キャスト側】客に住所を知られてしまった、引っ越すべき?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

本記事は2026年10月時点の法令(2025年12月30日施行の改正ストーカー規制法を含む)と一般的な実務をもとにした解説です。身の危険を感じる状況にある場合は、記事を読み進める前に110番通報や最寄りの警察署への相談を優先してください。


「送迎の車を降りたところを見られていたらしく、指名の客から『家の近くまで行ったよ』とLINEが来た」。「店では話していないはずの最寄り駅の名前を、客が口にした」。風俗店やキャバクラで働く方から、このようなご相談をいただくことがあります。

 住所を知られたと分かった直後は、「すぐに引っ越すべきか」と考えるのが自然です。ただ、引っ越しには費用も時間もかかり、手順を誤ると新しい住所まで知られてしまうことがあります。他方で、様子を見ているうちに行動が強まっていくこともあります。

 この記事では、客に住所を知られてしまったキャストの方が、引っ越すかどうかを判断するときの考え方と、引っ越す場合・引っ越さない場合それぞれに取れる手立てを整理します。

引っ越すかどうかは「知られ方」と「相手の動き」で考える

住所を知られたという事実だけで、直ちに引っ越しが必要になるとは限りません。判断の手がかりになるのは、相手がどのように住所を知ったのか、そして知った後に何をしているのか、という2点です。状況ごとの目安を整理すると、次のようになります。

相手の動き考え方の目安
「家を知っている」と言われたが、来た様子はない記録を残し、店と警察に相談したうえで様子を見る余地がある
自宅の近くで姿を見かけた、待ち伏せされたストーカー規制法の対象になり得る。警察への相談と並行して転居も視野に入れる
玄関まで来た、郵便受けやゴミを触られた形跡がある生活の場に踏み込まれている段階。一時的な避難を含めて早めに動く
危害を加えるような言葉や、家族に知らせるといった言葉がある脅迫などの問題にもなり得る。直ちに警察へ相談し、避難先を確保する


 弁護士ドットコムにも、親しくなった客が名字や住所を調べて訪ねてきたという相談や、元客が探偵を雇って身辺を調べていたことが後で分かったという相談が寄せられています。来た様子がない段階でも、住所を調べたこと自体が相手の執着の強さを示している場合があるため、軽く考えすぎないことが大切です。

まず確かめておきたい3つのこと


どこから住所が伝わったのか

住所が伝わる経路としては、送迎の降車場所を見られた、退勤後に後をつけられた、会話の中の最寄り駅や生活の話をつなぎ合わされた、SNSの写真に写った景色から特定された、といったものが考えられます。持ち物に位置を知らせる機器を付けられていた例もあります。経路が分からないまま引っ越すと、同じ経路で新しい住所も知られるおそれがあるため、心当たりを書き出しておくことが転居先を守る準備にもなります。

相手は住所を知って何をしているのか

相手からのメッセージ、自宅付近で見かけた日時と場所、郵便受けや玄関の様子などを、日付の分かる形で残しておきます。スクリーンショットは相手のアカウント名や送信日時が写るように保存し、見かけた出来事はその日のうちにメモにしておくと、警察や弁護士に状況を伝えやすくなります。

店はどこまで事情を把握しているか

相手が店の客である以上、店がその客の予約記録や連絡先を把握していることが多く、出入り禁止の措置や送迎ルートの変更など、店の側で取れる対応もあります。店に伝えることにためらいがある場合でも、相手を特定する手がかりを店が持っていることは、後の手続で意味を持つことがあります。

ストーカー規制法で扱える行為かどうか

ストーカー規制法は、恋愛感情や好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの恨みから、つきまといや待ち伏せ、住居の付近での見張りや押しかけ、うろつきなどをすることを規制しています。指名の客が好意を募らせた末に自宅を突き止めたという経緯であれば、この法律の対象として扱われることが多いと考えられます。

 これらの行為が繰り返されると「ストーカー行為」となり、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象となります。警察本部長等による警告や、都道府県公安委員会による禁止命令が出された後に違反すれば、さらに重い刑罰が定められています。

 2025年の法改正(2025年12月30日施行)により、被害者からの申出がなくても警察が職権で警告できる仕組みが設けられ、紛失防止タグを使って無断で位置情報を取得する行為なども規制の対象に加わりました。報復を恐れて申出をためらう場合でも、まず相談しておくことで、警察の判断で対応が進むことがあります。

 なお、金銭をめぐる恨みなど、好意とは別の動機によるつきまといについては、都道府県の迷惑防止条例で扱われる場合があります。勝手に敷地や建物に入り込めば住居侵入罪(刑法130条)、害を加える旨を告げれば脅迫罪(刑法222条)の問題にもなり得ます。

引っ越しを前向きに検討した方がよい場面

次のような事情がある場合は、警察への相談と並行して、転居を具体的に検討することをおすすめします。

  • 自宅の前や最寄り駅で待ち伏せされたことがある。
  • 玄関まで来た、インターホンを押された、郵便物やゴミに手を付けられた形跡がある。
  • 危害を加えるような言葉や、職場・家族に知らせるといった言葉を向けられている。
  • 警告を受けた後も接触が続いている。
  • 同居している家族や子どもにまで影響が及んでいる。
  • 建物にオートロックや防犯カメラがなく、住み続けながら身を守る手段が限られている。


 すでに自宅に来られている場合、引っ越し先が決まるまでの間、友人宅やホテルなどに一時的に身を移すことも選択肢になります。自宅マンションでの具体的な備えについては、【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることで解説しています。

すぐに引っ越さなくても取れる手立て

引っ越すかどうかを決めきれない段階でも、身の安全を高めるために取れる手立てはあります。

警察への相談と、警告・禁止命令

自宅付近に来られている、身の危険を感じるといった場合は、ためらわずに110番通報してください。緊急ではない段階では、最寄りの警察署の生活安全課や、警察相談専用電話(#9110)で相談できます。相談の記録が残ることで、その後の警告や禁止命令の判断材料にもなります。手続の流れは、【ストーカートラブル】禁止命令を出してもらうには|申出の方法と出るまでの期間で詳しく扱っています。

弁護士を通じた通知と、接近禁止の仮処分

相手の氏名や連絡先が分かっている場合、弁護士が代理人として、接触や自宅付近への立ち入りをやめるよう求める書面を送ることがあります。それでも止まらない場合には、裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てる方法もあります。どちらを先に動かすかの考え方は、【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序もご覧ください。

店と一緒に整えておくこと

相手の出入り禁止、送迎の降車場所を自宅から離れた場所に変えること、出勤情報の公開を控えることなど、店の協力で減らせる危険もあります。接客の仕事でのつきまとい全般については、【ストーカートラブル】接客の仕事で客につきまとわれている|個人でできることで整理しています。

引っ越す場合に新しい住所を知られないための手順

引っ越しを決めた場合、転居そのものよりも、新しい住所がどこから漏れ得るかに注意を払う必要があります。

  1. 住所が伝わった経路を確かめ、同じ経路を断っておく。
  2. 転居前に警察へ相談し、相談した事実を残しておく。
  3. 市区町村に住民票の写しや戸籍の附票の写しの交付制限(DV等支援措置)を申し出る。
  4. 引っ越し業者や管理会社に、新しい住所を誰にも伝えないよう依頼する。
  5. SNSに新居の周辺が分かる写真や投稿を載せない。
  6. 店に登録している住所の扱いと、送迎の降車場所を店と取り決める。


 住民票などの交付制限は、ストーカー行為等の被害を受けている方も対象とされており、警察などの相談機関の意見を添えて申し出る仕組みです。転居後に住民票を移す前に手続を済ませておくと安心です。手続の順序は、【ストーカートラブル】引っ越した先を知られないための手続の順序で詳しく説明しています。

引っ越し費用を相手に求めることはできるか

つきまといなどの違法な行為が原因でやむを得ず転居した場合、転居費用を損害として相手に請求できる場合があります(民法709条)。もっとも、転居がその行為によるものといえるか、費用の範囲が相当かといった点が争われることが多く、常に認められるわけではありません。請求を考える場合は、転居を決めた経緯や費用の領収書を残しておくことが大切です。

仕事のことを知られずに相談したい方へ

「店で働いていることを家族に知られたくない」「警察に職業を話したくない」という不安から、相談をためらう方も少なくありません。警察への相談では、つきまといの経緯を説明するうえで客との関係に触れることになりますが、その情報が相談の目的を超えて家族などに伝えられることは通常想定されていません。

 弁護士には守秘義務があり、ご相談の内容がご本人の了解なく外部に伝わることはありません。連絡方法や書面の送付先も、ご家族に知られないよう配慮して決めることができます。

よくあるご質問


住所を知られただけで、警察は対応してくれますか?

住所を知られただけで直ちに警告などが出るとは限りませんが、相談として受け付けてもらうことはできます。相談の記録が残っていれば、その後に自宅付近へ来られた場合に、警察がより早く動ける材料になります。

引っ越したことを店に伝えるべきですか?

店に新しい住所を伝えるかどうかは、店の管理体制や相手との関係を踏まえて判断します。伝える場合は、住所を知っておく必要がある範囲の人に限ってもらうよう求めておくと安心です。

弁護士から通知を送ると、相手が逆上しませんか?

その可能性が全くないとはいえないため、通知を送る前に警察へ相談しておく、通知の時期を転居の後にするなど、順序を考えて進めます。相手の様子や、これまでのやり取りの内容を踏まえて、送るかどうかから一緒に検討します。

まとめ


  • 住所を知られたこと自体よりも、相手が住所を知ってどう動いているかが、引っ越しを判断する手がかりになります。
  • 自宅付近での待ち伏せや押しかけは、ストーカー規制法の対象になり得ます。
  • 2025年の法改正で、申出がなくても警察が職権で警告できるようになりました。
  • 引っ越さない段階でも、記録・警察への相談・店との取り決め・弁護士による通知といった手立てがあります。
  • 引っ越す場合は、住所が伝わった経路を断ち、住民票などの交付制限を申し出ておくことが大切です。


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 客に住所を知られたと分かったときは、不安から一人で抱え込んだり、相手に直接やめるよう伝えに行ったりしがちですが、相手との接触が増えるほど状況が動くことがあります。引っ越すかどうかを決める前の段階から、警察や弁護士と一緒に順序を組み立てることで、身の安全と生活の両方を守りやすくなります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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