【風俗トラブル】女性がその場では何も言わず、帰宅後に店から連絡が来たのはなぜ?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

風俗店を利用した際、女性とは普通に会話をして別れたのに、ホテルを出た後や帰宅してから店から電話が入り、「女の子が本番を強要されたと言っている」「このまま警察に行く」などと告げられることがあります。その場では何も言われなかっただけに、「なぜ今になって」「本当に女性がそう言っているのか」と戸惑う方は少なくありません。

 この記事では、女性がその場では何も言わず、帰宅後に店を通じて連絡が来る背景として考えられること、その場で抗議がなかったことが法的にどう扱われるか、そして連絡が来たときに避けたい対応と、しておきたいことを整理します。

この記事は、2023年7月に施行された改正刑法(不同意性交等罪・不同意わいせつ罪の新設)を前提に記載しています。個別の事案での扱いは、事実関係によって異なります。


その場で何も言われず、後から連絡が来る流れは珍しくありません

 弁護士ドットコムの法律相談には、「別れ際は雑談をしていて、女性が怒っている様子はなかったのに、ホテルを出た直後に店長から電話があった」「退店して30分ほどで、店から本番をされたと訴えている、店に戻ってきてほしいと連絡が来た」といった相談が数多く寄せられています。

 連絡の時期もさまざまです。当日中や翌日に来ることが多い一方で、数日後、さらには数か月後になってから連絡が来たという相談も見られます。

 まず押さえておきたいのは、「その場では何も言われなかった」ことと「後から問題にされる」ことは、両立しうるという点です。その背景には、いくつかの事情が考えられます。

女性がその場で何も言わなかった理由として考えられること


密室で客と二人きりの状況では言い出しにくい

 ホテルの部屋や店の個室は、女性にとって客と二人きりになる閉じた空間です。体格や力の差がある相手に対し、その場で抗議すれば相手を怒らせてしまうのではないか、残りの時間を無事に終えたい、と考えて何も言わずにやり過ごすことは十分にありえます。

 性的な被害の場面で、驚きや恐怖から体が固まったり、声が出なくなったりする反応があることは、一般にも知られるようになっています。別れ際の笑顔や雑談が、その場を穏便に終わらせるための対応だった可能性もあります。

店への報告を通じて問題が表に出る仕組みがある

 多くの店では、接客を終えたキャストが店に連絡を入れたり、送迎のドライバーと合流したりします。その際に様子の変化に気づかれて事情を聞かれ、そこで初めて話すという流れがあります。店の規約上、禁止行為があった場合は報告することになっている店もあります。

 女性本人が店に伝え、店が客に連絡するという順序をたどるため、客の側から見ると「帰宅してから連絡が来た」という形になりやすいのです。

時間がたってから受け止め方が変わることがある

 その場では「仕方がない」と自分を納得させていても、帰宅した後に妊娠や性感染症への不安が強くなったり、交際相手や同僚、店のスタッフに話したりするうちに、被害として受け止め直すことがあります。避妊具を使わない行為があった場合や、その後に体調の変化があった場合は、こうした受け止め方の変化が起きやすいといえます。

金銭の要求を目的とした連絡が含まれる場合もある

 一方で、実際の出来事と異なる内容や、実際より重い内容を伝えて、高額な示談金を求める連絡が一部にあるとの指摘もあります。弁護士ドットコムニュースでは、店が報酬を得る目的で客との示談交渉や示談金の受け取りに関与すれば、弁護士法72条が禁じる非弁行為に当たる可能性があるとの解説も紹介されています。

 ただ、目の前の連絡がどの背景によるものかは、客の側からは判断がつかないことがほとんどです。「どうせ金目当てだ」「きっと本当に傷つけてしまったのだ」と最初から決めつけて動くと、どちらの場合でも不利益を招くおそれがあります。

その場で抗議がなかったことは、法的にどう扱われるか

 2023年の刑法改正で新設された不同意性交等罪(刑法177条)は、刑法176条1項各号に挙げられた事由などによって、同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態で性交等をした場合に成立します。

 その各号には、暴行や脅迫だけでなく、「同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと」や、「予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること」なども含まれています。このため、その場で抗議がなかったこと、別れ際に笑顔だったことだけで、同意があったと評価されるとは限りません。

 他方で、後から「同意がなかった」と申告されたことだけで、直ちに犯罪が成立するわけでもありません。捜査や交渉の場面では、行為の前後の会話、店のルール、行為の態様、別れてから連絡が来るまでの時間やその間のやり取りなど、さまざまな事情を合わせて判断されます。その場で何も言われなかったという事実も、そうした事情のひとつとして意味を持つことがあります。

よくある受け止め方実際の扱い
その場で何も言われなかったから問題はない抗議がなかったことだけで同意があったとはされず、後から問題にされることがある
後から言われただけなら罪にはならない申告の内容と前後の事情を合わせて判断され、申告がそのまま認められるとも限らない
店に払えばすべて終わる店との合意が、女性本人の請求や刑事手続にまで及ぶとは限らない
連絡を無視していれば自然に終わる店からの連絡が止まっても、被害届や相手方の代理人からの連絡に移ることがある


 罪名を示された場合の整理は、【風俗トラブル】不同意性交等罪と言われた|風俗の場面で罪名が出たときの整理でも解説しています。

連絡が来たときに避けたい対応


  • 電話口で事実関係を細かく認めたり、相手の言い分に合わせて謝罪の言葉を重ねたりすること。
  • 求められるまま、その日のうちに示談金を振り込むこと。
  • 店の事務所や指定された場所へ、一人で出向くこと。
  • 身分証の画像や勤務先の情報を送ること。
  • 店を通さずに女性本人へ連絡し、事情を確かめようとすること。
  • 連絡をすべて断ったまま、何の準備もせずに過ごすこと。


 電話の段階で口にした言葉は、後から「認めていた」と扱われ、取り消すことが難しくなるおそれがあります。また、店にお金を払ったとしても、その合意が女性本人や刑事手続にまで及ぶとは限らず、別途の請求や被害届につながったという相談もあります。

 女性本人へ直接連絡を取ることは、内容によっては申告を取り下げるよう働きかけたと受け取られるおそれがあります。反対に、着信に一切応じないまま放置すると、相手が警察への相談に動くきっかけになることもあります。すぐに出られない場合でも、早い段階で弁護士に相談し、誰がどう応じるかを決めておくことが大切です。

 折り返す前の準備については、【風俗トラブル】帰宅途中に店から着信が続いている|折り返す前に決めておくこともあわせてご覧ください。

連絡が来た後にしておきたいこと


  1. 着信履歴やメッセージを消さずに保存し、通話はできる範囲で録音します。
  2. 利用した日時、店名、コース、女性の名前(源氏名)、別れるまでの会話を、思い出せる限り書き出します。
  3. 相手が示した金額や支払期限、「警察に行く」といった言葉を、言われたとおりに記録します。
  4. 自分から行為の内容を説明する前に、弁護士に相談して対応の方針を決めます。


 記憶は時間とともに薄れ、後から思い出した内容は自分に都合よく変わってしまうこともあります。連絡が来たその日のうちに、事実と推測を分けて書き留めておくことが、後の交渉や手続の土台になります。

弁護士に依頼した場合にできること

 弁護士が代理人になると、店や女性とのやり取りの窓口を弁護士に切り替えることができます。受任の通知を送ってご本人への直接の連絡を控えるよう求めたうえで、誰からの請求なのか、女性本人の意思に基づくものか、金額の根拠は何かを確認していきます。

 示談に進む場合は、店だけでなく女性本人も当事者に含めること、清算条項や接触禁止、口外しない旨の条項を整えることなど、後から別の請求を受けないための形を検討します。すでに警察が関わっている場合には、刑事手続の流れを見据えて対応を組み立てます。事実と異なる申告がされていると考えられる場合には、その点を前提に交渉を進めます。

 どのような結果になるかは事案ごとに異なりますが、ご本人が一人で店とやり取りするよりも、落ち着いて事実を確かめながら進めやすくなります。

よくあるご質問


女性が別れ際に笑顔だったことは、こちらに有利な事情になりますか

 判断の材料のひとつにはなりえますが、それだけで同意があったと評価されるとは限りません。行為の前後にどのような会話があったか、別れた後にどのような連絡があったかなど、ほかの事情とあわせて検討されます。

帰宅後しばらく連絡がなければ、もう心配しなくてよいですか

 数日後や数か月後に連絡が来る場合や、店を通さずに警察から連絡が来る場合もあり、一定の日数で区切れるものではありません。時間が経ってから連絡が来たときの考え方は、【風俗トラブル】数か月前の利用について突然連絡が来た|時間が経ってからの請求で解説しています。

店から「女の子が泣いている」と言われましたが、本当かどうか確かめられますか

 客の側から直接確かめる方法は限られています。弁護士が代理人として、請求しているのが誰なのか、女性本人の意思が確認できるのかを店に問い合わせることで、事実関係が見えてくることがあります。

関連する解説記事



 その場では何も言われなかったのに後から店から連絡が来ると、「なぜ」という疑問と不安が先に立ちます。しかし、背景がどうであれ、最初の対応次第でその後の展開は大きく変わります。慌てて認めたり支払ったりする前に、まずは事実を整理するところから始めてください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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