【風俗トラブル】請求額が連絡のたびに増えていく|金額が動く請求への向き合い方
この記事は、2026年10月時点の法令(2025年6月28日施行の改正風営法を含む)と、警察庁・厚生労働省・自治体が公表している相談窓口の案内をもとに作成しています。窓口の受付時間や対象は変更されることがあるため、利用の際は各窓口の最新の案内をご確認ください。
「担当のホストから、売掛が払えないなら風俗で働けばいいと言われた」「店を紹介するから、そこで稼いで返してほしいと言われている」。ホストクラブの売掛をめぐるご相談では、こうした言葉をきっかけに、誰に話せばよいのか分からないまま時間が過ぎてしまったという方が少なくありません。ご家族から「娘がそう言われているようだ」とご相談をいただくこともあります。
売掛は支払うもの、借りたものは返すもの、という説明はそれ自体誤りではありません。ただ、売掛を支払うかどうかと、その返済方法として性風俗店での勤務や売春を求められることとは、法律上まったく別の問題です。2025年6月に施行された改正風営法は、まさにこの「返済のために性風俗で働くよう求める」行為を、罰則付きで禁止しました。
この記事では、ホストから「風俗で働いて返せ」と言われたときに、どの窓口に何を相談できるのかを中心に整理します。売掛そのものの支払義務や、改正風営法の全体像については、それぞれ別の記事で詳しく扱っています。
「風俗で働いて返せ」は法律上どう扱われるのか
改正風営法で禁止された「返済のための性風俗勤務の要求」
ホストクラブなど客の接待を行う営業を営む者が、料金を支払わせる目的で客を威迫し、または誘惑して、売春や性風俗店での勤務、アダルトビデオへの出演などを求めることは、改正風営法で禁止されました。違反した場合は、6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象となります。ここでいう「料金の支払」には、売掛を払うために借りたお金の返済も含まれる仕組みになっています。
注意したいのは、脅すような言い方だけでなく、「誘惑」による要求も対象になっている点です。京都府警察などが作成した啓発資料でも、「ナンバーワンになれたら結婚しよう、だから風俗で働いてお金を払って」といった恋愛感情に訴える言葉が、違法な要求の例として示されています。優しい口調で言われたから問題がない、ということにはなりません。
売春防止法・職業安定法の対象になる場面
売春の周旋や、売春をさせる目的でお金を貸し付けること、困惑させて売春をさせることなどは、売春防止法で処罰の対象とされています。また、ホストが性風俗店へ女性を紹介し、その見返りを受け取るような場合には、職業安定法違反が問題になることもあります。改正風営法では、性風俗店がスカウトなどに紹介料を支払う、いわゆるスカウトバックも禁止されました。
警察も、ホストクラブの売掛に起因して売春をさせたり性風俗店に紹介したりする事案について、売春防止法や職業安定法などを適用して取締りを進める方針を示しています。
言われた側が責められる構造ではない
これらの法律は、いずれも要求したり紹介したりする側を処罰の対象にしています。「売掛を作った自分が悪い」と考えて一人で抱え込む方もいますが、返済方法として性風俗での勤務を求められていること自体が、法律上問題とされている行為です。すでに一度応じてしまった場合でも、相談をためらう必要はありません。
どこに相談するか|窓口ごとにできること
主な相談先と役割
相談先は一つに限られません。状況によって、適した窓口が変わります。主な窓口を整理すると、次のとおりです。
| 窓口 | 主に相談できること |
|---|---|
| 警察(緊急時は110番、それ以外は#9110または最寄りの警察署) | 売春や性風俗店での勤務を強要されている、追われている、脅されているなど、犯罪被害に関すること。 |
| 女性相談支援センター(#8778) | どこに相談すればよいか分からないときの総合的な窓口。内容に応じて専門機関につないでもらえる。 |
| 消費生活センター(188) | 料金や売掛の契約の取消しなど、消費者としての契約に関すること。 |
| 法テラス | 法的トラブルに関する情報提供や、弁護士費用の立替えの制度など。 |
| 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891) | 性被害に関する相談、医療や心のケアの支援。 |
| 弁護士 | 売掛の支払義務の検討、ホストや店との交渉の窓口、取り立てへの対応、刑事告訴の検討など。 |
身の危険を感じるときは警察へ
警察庁は、ホストから売春などを強要されている、追われているといった犯罪被害については、最寄りの警察署への通報か、警察相談専用電話「#9110」を利用するよう案内しています。自宅や職場に押しかけられている、「逃げたらどうなるか分かっているか」と言われているなど、身の安全に関わる事情があるときは、まず警察への相談を優先してください。
行き先が決められないときは女性相談支援センターへ
厚生労働省は、どこに相談してよいか分からない場合には、まず住んでいる都道府県の女性相談支援センターに相談するよう呼びかけています。相談内容に応じて、消費生活センターや法テラス、警察、ワンストップ支援センターなどにつないでもらえます。悪質なホストクラブに関する相談は「#8778」でも受け付けています。
新宿区では、区内のホストクラブやメンズコンセプトカフェで高額請求の被害にあった女性やご家族を対象に、弁護士による予約制の無料相談を設けています。歌舞伎町の店とのトラブルであれば、こうした窓口も選択肢になります。
弁護士に相談すると何が変わるか
弁護士は、売掛の金額や明細に根拠があるか、契約の取消しを主張できるかといった法的な検討に加えて、ホストや店との連絡窓口を引き受けることができます。弁護士ドットコムにも、一括での支払いを迫られ続けるのがつらく、弁護士に間に入ってもらって分割の交渉や飲食代の正確性の確認をしてほしい、という趣旨の相談が寄せられています。
本人が直接やり取りをしなくてよい状態をつくることは、それだけで「風俗で働いて返せ」という働きかけから距離を置くことにつながります。警察への相談と弁護士への相談は、どちらか一方を選ぶものではなく、並行して進めることもできます。
売掛は払わなくてよくなるのか
売掛そのものの支払義務は別に検討する
売掛、いわゆるツケ払いは、それ自体が直ちに無効になるわけではありません。一方で、恋愛感情などに乗じた勧誘によって結ばされた契約は消費者契約法に基づいて取り消せる場合があり(消費者契約法4条3項)、支払い能力を大きく超える請求や、明細の示されない水増しの請求は、公序良俗違反(民法90条)や金額の根拠を問題にできる場合があります。国会でも、消費者庁から、売掛は取り消しうるとの答弁がなされています。
売掛の支払義務がどこまで及ぶのかについては、ホストクラブの売掛|客が負う支払義務の限界で詳しく整理しています。すでに支払ったお金の返金については、ホスト・地下アイドル・推しへの高額課金|返金や取り消しはできるかもあわせてご覧ください。
改正法違反があっても、支払義務が当然に消えるわけではない
改正風営法は、営業する側の行為を取り締まるための法律です。そのため、ホスト側の要求が改正法に違反していても、それだけで売掛の支払義務が自動的になくなるわけではありません。ただ、違法な要求があったという事実は、契約の取消しや減額を求める交渉の中で、重要な事情として扱われます。支払義務の問題と、違法な要求への対処を分けて考えることが大切です。
改正風営法の内容全体については、【2025年6月施行】改正風営法で何が変わったか|色恋営業と売掛金の規制で解説しています。
返済のための借金は慎重に
「風俗で働かないなら、消費者金融で借りてでも払って」と求められるケースもあります。東京都の消費生活総合センターも、返済のために新たな借入れを重ねると多重債務に陥るおそれがあるとして注意を呼びかけています。貸金業の登録がない業者や、SNSで声をかけてくる個人からの借入れは、さらにトラブルを広げることがあります。そうした業者からの取り立てについては、闇金・ソフト闇金の取り立てを止めるには|法的な根拠と、止まらないときの現実的な選択肢をご参照ください。
相談するまでに手元で整えておくこと
残しておきたい記録
相談先がどこであっても、次のような記録があると、状況を正確に伝えやすくなります。
- 「風俗で働いて」「店を紹介する」といった内容を含む、ホストとのLINEやDMの画面。
- 売掛の明細、請求書、借用書や念書の控え、またはその写真。
- 来店した日付と、その日に請求された金額のメモ。
- 紹介された店やスカウトの名前、連絡先、やり取りの記録。
- 振込や支払いの記録。
メッセージは、相手から削除を求められたり、自分で消したくなったりすることもありますが、できるだけ残しておいてください。画面を撮影して別の場所に保存しておくと安心です。
避けておきたい対応
求められるまま新たな借用書や念書に署名することや、紹介された店の面接に行くことは、いったん立ち止まって考えたい対応です。また、相談先が決まる前にホストへ「警察に行く」と伝えると、やり取りの記録を消されたり、連絡が激しくなったりすることがあります。まず記録を確保し、相談先に話してから動くという順序を意識してください。
すでに性風俗店で働いている場合
すでに紹介された店で働いている場合でも、辞めることはできます。退店の際に「罰金」や「違約金」を求められることがありますが、その請求が当然に有効とは限りません。働く側が引かれるお金の考え方については、キャスト側の「罰金」「違約金」|遅刻・当欠・退店で引かれるお金は適法かで整理しています。
ご家族が事情を知った場合
家族に請求が来ても、本人の売掛を払う義務は原則としてない
ホストや代理を名乗る人物が実家を訪れ、親に支払いを求めることがあります。弁護士ドットコムには、実家に来た人物から強い言葉で支払いを迫られ、親がその場で数十万円を支払ってしまったという相談も寄せられています。保証人になっていない限り、ご家族が本人の売掛を支払う法的な義務は原則としてありません。強い言葉で支払いを迫る行為は、恐喝などの犯罪にあたる可能性もあります。
子どもがホストクラブの売掛を抱えた場合の親の関わり方については、【親子問題】子がホストクラブの売掛で多額の債務を負った|親が関わるときの順序と改正風営法で詳しく扱っています。
家族が先に動くときに気をつけたいこと
ご家族が強く叱ったり、ホストとの連絡手段を取り上げたりすると、本人が事情を話さなくなり、かえって状況が見えにくくなることがあります。成人している本人の契約や行動を、家族が代わりに決めることはできません。ご家族からも、警察や女性相談支援センター、弁護士に相談することはできますので、本人と一緒に相談先を選ぶところから始めるのが現実的です。
よくあるご質問
一度は風俗で働くことに同意してしまいました。それでも相談できますか。
相談できます。改正風営法は、脅して働かせる場合だけでなく、恋愛感情などを利用して「誘惑」して求める場合も禁止しています。本人がそのとき同意したかどうかだけで、問題の有無が決まるわけではありません。
相談したことがホストに知られることはありませんか。
警察や公的な相談窓口、弁護士に相談しただけで、その内容が相手に伝わることはありません。弁護士に交渉を依頼した場合は、代理人として相手に通知を送るため、弁護士が入ったことは相手に伝わります。どの時点で相手に知らせるかは、安全面も含めて弁護士と相談しながら決めることができます。
売掛を払い終えるまでは、相談できないのでしょうか。
そのようなことはありません。売掛が残っている段階でも、支払義務の有無や金額の妥当性を確認し、違法な要求への対処を並行して進めることができます。むしろ、返済のために性風俗での勤務を求められている段階で早めに相談しておくことで、選べる対応の幅が広がります。
まとめ
- ホストクラブなどが、料金を支払わせる目的で客を威迫し、または誘惑して、売春や性風俗店での勤務を求めることは、改正風営法で罰則付きで禁止されています。
- 売春の周旋や、売春をさせる目的での貸付けなどは売春防止法、性風俗店への紹介は職業安定法の問題にもなり得ます。
- 身の危険があるときは警察(110番・#9110)、行き先が決められないときは女性相談支援センター(#8778)が入口になります。
- 売掛の契約は、恋愛感情などに乗じた勧誘であれば取り消せる場合があり(消費者契約法4条3項)、過大な請求は公序良俗違反(民法90条)が問題になる場合があります。
- 改正法違反があっても売掛の支払義務が当然に消えるわけではないため、支払義務の問題と違法な要求への対処を分けて考えることが大切です。
- 保証人でない限り、家族が本人の売掛を支払う義務は原則としてありません。
- 相談の前に、ホストとのメッセージや明細、紹介された店の情報などの記録を残しておくと、状況を正確に伝えやすくなります。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、ホストクラブの売掛や取り立てに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。売掛の明細や支払義務の確認、ホストや店との交渉の窓口、ご家族への請求への対応など、状況に応じて進め方をご提案します。
「風俗で働いて返せ」と言われてどうしてよいか分からない方も、ご家族の様子に不安を感じている方も、一人で抱え込まずにご相談ください。警察や公的な窓口への相談とあわせて進めることもできます。


