誰に払うのか|店の損害とキャスト個人の損害は別
本記事は、2026年10月時点の法令をもとに、風俗店やメンズエステの利用をめぐって金銭を請求されている客側の立場から作成しています。個別の事情によって結論は変わるため、具体的な対応は弁護士にご相談ください。
「明日の正午までに返事がなければ警察に行く」「今夜中に振り込まなければ家族に連絡する」。風俗店とのトラブルでは、店側から期限を区切って支払いや回答を求められることがあります。弁護士に相談しようと決めても、期限まで数時間しかない、夜間で事務所につながらない、依頼の手続が済んでいないといった事情から、弁護士が店との窓口になる前に期限が来てしまうことがあります。
この記事では、店が設定した期限が法的にどのような意味を持つのかを整理したうえで、弁護士が間に合わないときに店へどう伝えるか、期限を過ぎてしまった後に何ができるかを解説します。期限を切られたときの伝え方全般は【風俗トラブル】支払期限を切られた|『今日中に』に応じないための伝え方で扱っているため、本記事では、弁護士への相談や依頼を進めている途中で期限が来てしまう場面に絞ってご説明します。
店が切る期限は、法律上どのような意味を持つのか
店から告げられる期限は、多くの場合、店側が一方的に設定したものです。期限そのものに法的な拘束力があるわけではなく、期限を過ぎたからといって、新たな支払義務が生じたり、話し合いの機会が失われたりするものではありません。
示談に「締め切り」はない
示談は、当事者が互いに譲り合って争いをやめることを約束する和解契約(民法695条)であり、いつまでに結ばなければならないという決まりはありません。被害を訴える側が被害届を出した後であっても、示談の話し合いを進めることはできます。
また、被害届の提出にも期限は設けられておらず、公訴時効の期間内であれば被害届が出される可能性は残ります。つまり、店の示す期限は、守れば刑事手続の不安がすべてなくなるという性質のものではなく、反対に、過ぎたからといって直ちに状況が決まってしまうものでもありません。
期限の後に起こりうること・起こりにくいこと
期限とともに告げられる言葉ごとに、期限の後に起こりうることを整理すると、次のとおりです。
| 期限とともに告げられた言葉 | 期限の後に起こりうること | 考え方の目安 |
|---|---|---|
| 「警察に行く」 | 女性本人が警察に相談し、被害届が出される可能性はある | 被害届が受理されても、すぐに逮捕されるとは限らない。示談の機会も残る |
| 「家族・職場に知らせる」 | 実際に連絡されるおそれは否定できない | 理由なく第三者に知らせることは、名誉毀損やプライバシー侵害が問題となり得る |
| 「金額を上げる」 | より高い金額を求められることはある | 期限を過ぎたことだけを理由に、支払うべき金額が増える根拠は乏しい |
| 「法的措置をとる」 | 書面が届くことはある | 強制執行には判決などが必要で、期限の翌日に財産を差し押さえられることは通常ない |
なお、「警察に行く」と告げること自体は正当な権利の告知とされることが多いものの、金銭を得るための手段として社会通念上許される範囲を超えれば、恐喝罪(刑法249条)が問題となることもあります。線引きについては、「訴えるぞ」「警察に行くぞ」は脅迫か|正当な権利行使との境界線をご参照ください。
「弁護士が間に合わない」のはどのような場面か
弁護士に相談すれば、その場ですぐに店との窓口が切り替わるとは限りません。相談から窓口の切り替えまでには、いくつかの段階があるためです。
相談から窓口の切り替えまでの段階
一般的には、次の段階を経て、弁護士が店との連絡を引き受けることになります。
- 法律相談での事実関係・請求内容の確認と、対応方針の決定。
- 委任契約の締結と、費用の取り決め。
- ご本人の確認と、店の名称・担当者・連絡先の把握。
- 弁護士から店への、代理人に就いた旨の連絡。
弁護士は、事件を受任するにあたり、原則として委任契約書を作成することとされています(弁護士職務基本規程30条)。相談した時点で依頼まで決められるか、費用をいつ用意できるかなどによって、窓口の切り替えまでにかかる時間は変わります。代理人に就いた旨の連絡が相手に届いた後の関係の変化は、受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかで解説しています。
期限に間に合いにくい典型的な事情
- 期限まで数時間しかなく、相談の予約が期限の後になってしまいます。
- 夜間や休日のため、弁護士本人と話せるのが翌営業日になります。
- 相談はできたものの、依頼するかどうかをその場で決めきれません。
- 店の正式な名称や担当者の連絡先が分からず、弁護士からの連絡先が定まりません。
夜間や休日の相談先は【風俗トラブル】夜間や休日に風俗トラブルが起きたら、どこへ連絡する?で、当日中の相談については【風俗トラブル】風俗トラブルはその日のうちに弁護士へ相談できる?で整理しています。
期限までに弁護士が入れないとき、店にどう伝えるか
弁護士が窓口になる前に期限が来てしまう場合、何も伝えずに期限を過ぎるか、ひとこと伝えておくかは、状況によって判断が分かれます。相手が感情的になっていて、連絡が途絶えると家族や職場への連絡に及ぶおそれがあると考えられる場合には、短く伝えておくことで、相手が先に動き出すのを避けられることがあります。
伝える内容は2点に絞る
伝える場合は、「弁護士に相談していること」と「いつまでに連絡するか」の2点に絞るのが基本です。たとえば、「この件は弁護士に相談しています。○日○時までに、弁護士または私から連絡します」といった伝え方が考えられます。
事実関係への言及や謝罪の言葉を重ねると、後から内容を争いにくくなることがあります。電話で話すと相手のペースで話が進みやすいため、メッセージなど記録に残る方法で伝えるほうが、落ち着いて対応しやすいでしょう。
伝えるときに避けたいこと
- 期限を延ばしてもらう見返りに、求められた金額の一部を「とりあえず」振り込むこと。
- 請求の理由とされている事実を認める文面や、詳しい謝罪文を送ること。
- 身分証の画像や勤務先など、追加の個人情報を渡すこと。
- まだ依頼していないのに「弁護士がついた」と伝えること。
- 延長を話し合うために、一人で店の事務所などへ出向くこと。
一部の支払いは、請求を認めたものと受け取られ、後の交渉で金額を争う余地を狭めることがあります。また、実際には依頼していないのに弁護士がついたと伝えると、後で事実と食い違い、相手の不信感を強めることになりかねません。すでにご自身で店に連絡してしまっている場合の考え方は、【風俗トラブル】弁護士に頼む前に自分で連絡してしまった|その後の交渉への影響で解説しています。
「弁護士を入れるなら話は終わり」と言われた場合
延長を求めた際に、「弁護士を入れるなら示談はしない」「今から警察に行く」と返されることもあります。もっとも、弁護士に依頼すること自体は正当な権利であり、それを理由に話し合いの道が閉ざされるわけではありません。弁護士から連絡が入った後に、相手が話し合いに応じる例も見られます。このように言われた場面の考え方は、【風俗トラブル】店から「弁護士を入れたら話は終わりだ」と言われたで詳しく扱っています。
期限を過ぎてしまった後でも、取れる手立ては残る
期限までに弁護士が間に合わなかったとしても、それで対応の機会がなくなるわけではありません。
被害届が出ても、すぐに逮捕されるとは限らない
期限の後に女性本人が警察へ相談し、被害届が受理されることはあります。ただし、被害届の受理は捜査の始まりであり、それによって直ちに逮捕されるわけではありません。逮捕するかどうかは、逃亡や証拠隠滅のおそれといった逮捕の必要性も考慮して判断されます(刑事訴訟規則143条の3)。住所や勤務先が定まっていて、呼び出しに応じる姿勢を示している場合には、逮捕されずに手続が進むこともあります。被害届が受理された後の流れは、【風俗トラブル】被害届が受理されたと言われた|その後の流れと呼び出しまでの期間で解説しています。
被害届の後でも示談の話し合いはできる
被害届が出た後でも、弁護士を通じて女性本人と示談を進め、処罰を求めない意思を示してもらうことができれば、検察官が起訴するかどうかを判断する際の事情として考慮されます(刑事訴訟法248条)。期限を過ぎたこと自体よりも、その後にどれだけ早く話し合いの窓口を整えられるかが、見通しに影響しやすいといえます。「警察に行く」と言われた後の動き方は、【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われた翌日にすること|被害届が出る前の時間もご参照ください。
期限に間に合わせるために、相談の前にそろえておくもの
期限が迫っている場合、相談の場で状況を短時間で伝えられるかどうかが、窓口の切り替えまでの時間に影響します。相談の前に、次の情報を手元にそろえておくと進めやすくなります。
- 店が示した期限の日時と、期限とともに告げられた言葉(画面の保存や録音)。
- 店の名称、担当者の名前、連絡先の電話番号やアカウント。
- 請求の名目と金額、振込先として示された口座の名義。
- 店に伝えた、または控えられた個人情報の範囲。
- すでに支払った金額や署名した書面の有無と、その控え。
弁護士に連絡するときは、最初に「いつまでに何を求められているか」を伝えることをおすすめします。そのうえで、弁護士から店に連絡できるのはいつか、依頼の手続を電話やオンラインで進められるかを確かめておくと、期限までに何ができるかの見通しが立てやすくなります。相談で確認される事項の全体像は、風俗トラブルの無料相談で聞かれること|相談前に準備すべき情報をあわせてご覧ください。
よくあるご質問
期限の延長を頼んだら断られました。期限内に払うしかありませんか?
延長を断られたとしても、それによって期限内に支払う義務が生じるわけではありません。請求に理由があるか、金額が妥当かは、期限とは別に検討されるべき事柄です。支払いに応じる前に、弁護士に状況を伝えて判断することをおすすめします。即時の支払いを求められた場面の考え方は、【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断で解説しています。
期限の直前や、期限を過ぎてから依頼しても意味はありますか?
意味はあると考えられます。弁護士が窓口になれば、ご本人が直接やり取りする必要がなくなり、請求の内容を整理したうえで話し合いを進めることができます。期限を過ぎた後であっても、示談の話し合いが閉ざされるわけではありません。
弁護士が連絡を入れるまで、店からの電話に出なくてもよいですか?
出るかどうかは状況によりますが、出ない場合でも、着信の日時や留守番電話、メッセージは消さずに残しておきましょう。出る場合は、その場で金額や条件を約束せず、弁護士に相談していることと、改めて連絡することだけを伝えるにとどめるのが無難です。折り返す前の考え方は、【風俗トラブル】帰宅途中に店から着信が続いている|折り返す前に決めておくことにまとめています。
まとめ
- 店が切る期限は相手側が設定したもので、期限を過ぎても示談の機会がなくなるわけではありません。
- 弁護士への相談から窓口の切り替えまでには、方針の決定や委任契約などの段階があり、期限に間に合わないことがあります。
- 間に合わないときは、「弁護士に相談していること」と「いつまでに連絡するか」の2点に絞り、記録に残る方法で伝えることが考えられます。
- 一部の支払い、事実を認める文面、追加の個人情報の提供は控えるのが無難です。
- 被害届が受理されてもすぐに逮捕されるとは限らず、その後も示談の話し合いを進めることはできます。
期限が迫ると、弁護士が間に合わないのなら自分で払って終わらせたほうがよいのではないかと考えてしまいがちです。しかし、期限の前後で変わることと変わらないことを分けてみると、慌てて応じる前に取れる手立てが見えてくることがあります。期限が迫っている場合も、まずはその期限をお伝えいただければ、間に合わせるための段取りから検討いたします。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


