避妊の有無が争点になる場面|感染・妊娠の主張と請求
風俗店やキャストの側から金額を示されたとき、多くの方が最初に調べるのは「相場」です。ところが相場を並べた記事をいくつ読んでも、目の前の数字が妥当なのかどうかは、なかなか判断がつきません。相場より高ければ不当で、相場の範囲なら応じてよい、という単純な話にならないからです。
この記事では、示談金として示された金額を、自分の手元でどこまで検証できるかという観点から、4つの視点に分けて整理します。金額そのものを当てにいくのではなく、「その金額がどこから出てきて、何でできていて、どこまで確かめられるのか」を順に見ていく方法です。
この記事が想定している場面と、扱わないこと
想定しているのは、成人同士のトラブルで、店またはキャストの側から示談金・違約金・慰謝料などの名目で金額を提示され、その水準に納得しきれていない、という場面です。
次の点は、この記事では扱いません。
- 相手が18歳未満だった可能性がある場合は、まったく別の問題になりますので、個別にご相談ください。
- すでに逮捕されている、警察から呼び出しを受けているといった段階は、金額の検証より先に確認すべきことがあります。
- 店のルールに反する行為を勧める趣旨の記事ではありません。
- 行為の類型ごとの金額の目安、請求書面の名目別の読み方、示談書の条項の効き方、支払原資の作り方は、それぞれ別の記事で扱っています。
「妥当かどうか」には、性質の違う二つの問いが混ざっている
「この金額は妥当なのか」という問いは、実際には二つの問いが重なっています。この二つを分けないまま調べ始めると、答えが出ないまま時間だけが過ぎがちです。
問いA 法的に認められる範囲の金額か
一つ目は、仮に裁判で争ったとしたら、どのくらいの金額が認められそうかという問いです。損害賠償は、相手に生じた損害を埋めるという考え方が土台にあります。ですから、実際に生じた損害の内容と大きさが、金額の説明になっているかどうかが問題になります。
問いB この場面で引き受けてよい条件か
二つ目は、今の自分の状況で、その金額と条件を引き受けることに納得できるかという問いです。示談は判決ではなく、当事者が互いに譲り合って争いをやめる合意です(民法695条)。刑事手続が動いている場面では、検察官が起訴するかどうかを判断する際に、被害の回復がされたかどうかも考慮される仕組みになっています(刑事訴訟法248条)。そのため、問いAだけで見ると高めに見える金額でも、早期に確定的な解決を得られるなら引き受ける合理性が生じることがあります。
逆に、問いAでは説明のつく金額であっても、支払った後に何が終わるのかがはっきりしないなど、条件の側に問題があれば、そのまま応じにくいこともあります。金額の大小と、条件の良し悪しは別々に見る必要があります。
なお、相手から示された金額は、あくまで相手の主張です。主張された額と、法的に支払う義務がある額は、一致するとは限りません。この点は別の記事で詳しく扱っていますので、ここでは前提として押さえるにとどめます。
相場表と見比べても答えが出にくい理由
金額を検証する方法として最初に思いつくのは、相場を書いた記事と見比べることです。ただ、この方法には限界があります。
数字は結果であって、根拠ではない
公開されている相場は、過去に成立した事案の金額を後からまとめたものです。個々の事案では、行為の内容、相手方に生じた影響、記録の有無、双方の姿勢といった事情が積み重なって金額が決まっています。その積み重ねの部分が見えないまま結果の数字だけを比べても、目の前の金額の説明にはなりません。
どんな事案が集められた数字なのかが見えない
相場として示される幅は、集計の対象がどの範囲なのかによって変わります。刑事事件として立件されたものだけを集めた数字と、店との話し合いで終わった事案を含む数字とでは、性質が異なります。幅が広い数字ほど、目の前の事案がその幅のどこに位置するのかは分かりません。
風俗の場面では、請求してくる側が二重になっている
もう一つ、この分野に特有の事情があります。金銭を求めてくる主体が、キャスト本人と店の二つに分かれ得るということです。一般的な相場記事は、被害者本人に支払う示談金を前提に書かれていることが多く、店が独自に定めた違約金や罰金といった名目の請求は、同じ土俵で比べられません。この点を踏まえずに数字だけを並べると、比較そのものが成り立たなくなります。
視点1 その金額は、誰の損害として出てきたのか
最初に確かめたいのは、金額の出どころです。
精神的苦痛に対する慰謝料を請求できるのは、原則としてその苦痛を受けた本人です(民法709条・710条)。店が窓口として連絡してくることと、店自身が請求できる立場にあることは、別の問題です。店が実際に負担した費用があるなら、その分は店の損害として整理される余地がありますが、それはあくまで「店が負担した分」であって、本人の慰謝料とは性質が違います。
出どころという観点からは、示された金額は次のどれに近いのかを見ていくことになります。
- 店の規約や誓約書にあらかじめ書かれていた定額が、そのまま提示されている。
- 本人が受けた被害の内容をもとに、実際に生じた損害から積み上げられている。
- 代理人の弁護士が、事案の内容を踏まえて算定している。
- その場の状況の中で、金額の根拠が説明されないまま数字だけが出ている。
1のように規約の定額がそのまま出ている場合、その条項がどこまで効くのかという別の検討が必要になります。4のように出どころが分からない場合は、そもそも検証の起点がありません。この段階で「どういう考え方でこの金額になっているのか」を尋ねること自体は、争う姿勢を示すことではありません。支払う側として当然に確認したい事柄です。
視点2 一つの数字か、積み上げられた数字か
次に見るのは、金額の組み立てです。刑事事件の示談金は、実際に生じた損害に慰謝料などを加えて積み上げる考え方で説明されるのが一般的です。逆に言えば、提示された総額を項目に割り戻せるかどうかが、検証の入口になります。
確かめたいのは次の三点です。
- 総額の中に、治療費や検査費のような実際に出ていった費用が含まれているのか。
- 含まれているとして、それは本人に生じた費用なのか、店が負担した費用なのか。
- 慰謝料にあたる部分と、それ以外の解決金にあたる部分は分かれているのか。
内訳が示されないまま総額だけが提示されると、いくつかの不都合が生じます。同じ損害が二重に数えられていても気づけませんし、話し合いのときにどこを議論しているのかが共有されません。合意した後になって「あれは別だった」という形で蒸し返される余地も残ります。内訳を確認する作業は、値下げを求める作業とは違います。何に対して払うのかをはっきりさせる作業です。
なお、請求の内訳をどう分解して見るかについては、別の記事で項目ごとに整理しています。
視点3 それぞれの項目に、確かめられる根拠があるか
積み上げの形が見えてきたら、項目ごとに性質が違うことを踏まえて見ていきます。
資料で確かめられる項目
治療費、検査費、欠勤による収入の減少といった項目は、金額の裏づけになる資料が存在し得る性質のものです。これらについては、どういう出費や損失が、いつ、どの程度生じたのかが示されて初めて、金額としての意味を持ちます。
資料になじまない項目
一方、慰謝料は精神的な苦痛に対するものですから、領収書のような形では確かめられません。ここで手がかりになるのは、その日に何があったのかという事実経過について、双方の認識がどこまで一致しているかです。経過の理解が食い違ったままだと、金額の議論も噛み合いません。
資料が出てこない場合の受け止め方
求めても資料が出てこないとき、それが直ちに請求の不当性を示すとは限りません。プライバシーに関わる内容で、そのままの形では出しにくいという事情もあります。ただ、資料が示されないまま金額だけが動かない状態が続くのであれば、話し合いの進め方そのものを見直す材料にはなります。断定的に「根拠がないから払わない」と構えるより、確認を求めた経緯を記録として残しておくほうが、後の判断に役立ちます。
視点4 その金額に付いている条件と、釣り合っているか
最後の視点は、金額そのものではなく、金額に付いてくる条件です。同じ額でも、支払った結果として何が終わるのかによって、意味はまったく変わります。
範囲
どの出来事についての清算なのかが特定されているか、この合意で今回の件は終わりにするという確認が入っているかどうかを見ます。範囲が曖昧なまま金額だけを決めると、後から別の名目で話が続く余地が残ります。
時期
いつまでに払うのか、いつの時点で終わったことになるのかという点です。短い期限は、検証の時間そのものを奪います。その場で決めなければならない理由が示されていないのであれば、期限の妥当性も検証の対象になります。
支払いの形
一括か分割か、分割ならどのような条件が付くのかによって、負担の実質は変わります。分割の場合、完済まで関係が続くことの意味も含めて考える必要があります。
これらの条項の具体的な書き方や効力については、別の記事で扱っています。ここでは、金額と条件はセットで評価するという点を押さえておいてください。
4つの視点をまとめた確認表
| 視点 | 確かめたい問い | 説明がつきやすい状態 | 立ち止まりたい状態 |
|---|---|---|---|
| 1 出どころ | 誰の損害として、誰が決めた金額か | 請求している側と損害を受けた側の関係が整理されている | 窓口と請求権者の区別がないまま総額だけが示されている |
| 2 組み立て | 総額を項目に割り戻せるか | 実費・慰謝料・その他が分かれている | 一つの数字だけで、内訳の説明がない |
| 3 裏づけ | 各項目に確かめられる根拠があるか | 実費部分について時期や内容の説明がある | 求めても内容の説明が示されないまま金額が動かない |
| 4 条件 | 金額と、終わる範囲・時期・形が釣り合っているか | 対象となる出来事と清算の範囲が特定されている | 範囲が曖昧なまま、期限だけが短く区切られている |
検証してみた結果の三つの見え方
4つの視点を通すと、提示額はおおむね次の三つのいずれかに見えてきます。
| 見え方 | 状態 | 次に取りやすい行動 |
|---|---|---|
| 説明がつく | 出どころ・組み立て・裏づけがそろい、条件も整理されている | 条件面の確認を済ませたうえで、支払いの形を検討する |
| 一部だけ説明がつく | 実費部分は説明できるが、それ以外の部分の根拠が見えない | 説明のついた部分と、そうでない部分を分けて話し合う |
| 説明がつかない | 総額だけが示され、確認を求めても内容が示されない | 即断を避け、経緯を記録に残したうえで相談する |
ここで大切なのは、「説明がつかない」ことと「支払う義務がない」ことは同じではないという点です。説明が不足しているのは、多くの場合、話し合いの進め方の問題です。相手方に実際の損害が生じている可能性は残りますので、「根拠が示されていないから応じない」という姿勢だけを取り続けると、かえって解決が遠のくことがあります。
検証の途中でやってしまいがちなこと
金額を確かめようとする過程で、結果的に自分の立場を悪くしてしまう対応があります。
- 内訳を確かめないまま値切りから入ってしまう。金額の話だけが先行し、何に対する支払いなのかが最後まで曖昧になります。
- その場で結論を出してしまう。署名や支払いをしてから内容を確かめる順序になると、後から動かせる余地が小さくなります。
- 相場を書いた記事を相手に示して反論する。事案の前提が違うため議論が噛み合わず、態度の問題として受け取られることがあります。
- 経過の全部を否定する、あるいは全部を認めてしまう。どちらも後から修正しにくく、検証の材料である事実経過そのものが曖昧になります。
- とりあえず一部だけ払っておく。支払いは、金額や義務の存在を認めたものと受け取られる余地があります(民法152条1項)。
自分だけでは検証しきれない部分について
ここまで、手元でできる検証の方法を整理してきました。ただ、実際には自分だけでは埋めきれない部分が残ります。
一つは、相手方に生じた事情の中身です。通院や欠勤の実態は、こちら側からは確認しようがありません。もう一つは、刑事手続の見通しです。被害届が出されているのか、捜査が始まっているのかによって、金額の意味も、時間の使い方も変わってきます。示談が成立したからといって、刑事処分が自動的に決まるわけでもありません。
また、連絡を受ける側は、相手の手元にどこまで情報があるのかが分かりません。情報の量に差がある状態では、検証にも限界があります。
こうした部分については、代理人を立てて窓口を移すことで、確認の求め方や記録の残し方を含めて整理しやすくなります。なお、弁護士でない第三者が報酬を得て示談交渉を代理することは、弁護士法72条が禁じています。誰と話しているのかという点も、検証の一部として確認しておきたいところです。
まとめ
- 「妥当かどうか」は、法的に認められる範囲かという問いと、この場面で引き受けてよい条件かという問いに分かれます。
- 相場表との比較だけでは、目の前の金額の説明にはなりにくいという性質があります。
- 視点1は出どころで、誰の損害として誰が決めた金額かを確かめます。
- 視点2は組み立てで、総額を項目に割り戻せるかを確かめます。
- 視点3は裏づけで、項目ごとに確かめられる根拠があるかを見ます。
- 視点4は条件で、金額と、終わる範囲・時期・支払いの形が釣り合っているかを見ます。
- 内訳や根拠の確認を求めることは、争う姿勢を示すことではありません。
- 説明が足りないことと、支払う義務がないことは別の問題です。
- その場で結論を出す、一部だけ払う、相場表を示して反論するといった対応は、後から動かしにくい状況を生むことがあります。
- 検証しきれない部分が残ることを前提に、早い段階で相談先を確保しておくことが、選べる範囲を広げます。
金額の大きさそのものより、その金額の説明を受けられていないことが、不安の中身であることは少なくありません。順序立てて確かめていけば、どこまでが確認済みで、どこからが未確認なのかは整理できます。判断はそのうえで十分に間に合います。


