【風俗トラブル】メンズエステで性的なサービスを求めたとして請求されたら?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

「施術の途中で『抜きはありますか』と聞いただけなのに、退室後に男性スタッフから規約違反だと言われ、50万円を求められた」。メンズエステをめぐるご相談では、こうした声をお聞きすることがあります。「断られたのですぐにやめた。それでも払わなければならないのか」と、頼んだ言葉そのものを理由に請求を受けて戸惑っている方も少なくありません。

 ネット上では「店の罰金に法的な根拠はない」という説明をよく見かけます。それ自体は誤りではありませんが、何をどう求めたのか、相手がどう答えたのか、その後に何があったのかによって、刑事の見通しも、店との金銭のやり取りも大きく変わります。「罰金は払わなくてよい」という一言だけで判断すると、見落とす部分が出てきます。

 この記事では、性的なサービスを「求めた」ことを理由に店やセラピストから請求を受けた場面に絞って整理します。実際に体に触れてしまった場合や、本番行為・盗撮が問題になっている場合は前提が異なるため、それぞれの解説記事に譲ります。

本記事は2026年10月時点の法令(2025年6月1日施行の拘禁刑への一本化を含む)に基づいて記載しています。


「求めた」と言われる場面には幅がある


言葉で頼み、断られて終わった場合

 もっとも多いのは、施術中に性的なサービスの有無を尋ねたり、頼んだりしたものの、セラピストに断られ、そのまま通常の施術で終わったという流れです。この場合、問題になるのは「言葉で頼んだこと」だけであり、体への接触や行為は伴っていません。後で触れるとおり、刑事の面でも民事の面でも、ここが評価の出発点になります。

頼んだ後に、何らかの行為があった場合

 頼んだ後にセラピストの体に触れた、断られた後も手を伸ばしたといった事情があると、話は「言葉の問題」から「行為の問題」に移ります。請求の名目が「求めたこと」になっていても、実際に問われるのはその後の行為である、という点は早めに意識しておく必要があります。触れてしまった場合の考え方はメンズエステでお触りをして「触られた」と言われた。不同意わいせつ罪のリスクと対応で解説しています。

セラピストの側から持ちかけられた場合

 弁護士ドットコムなどの相談では、「抜きはあるのか」と聞いたところ「内緒です」と返され、そのまま施術が進んだという例や、セラピストの側から追加料金を示されたという例も見られます。誰が話を切り出したのかは、店の規約違反を理由とする請求を検討するうえで意味を持つ事情です。ただし、相手が持ちかけたからといって、その後の行為すべてに同意があったと扱われるわけではありません。

 場面ごとの違いを整理すると、次のようになります。

場面刑事の面での見通し店との金銭の面
頼んで断られ、それで終わった頼んだこと自体を罰する規定は基本的にない違約金の約束の有無と金額の妥当性が争点になる
断られた後も繰り返し求めた脅しや威圧を伴えば強要罪などが問題になり得るしつこさの程度が損害の評価に影響し得る
頼んだ後に体に触れた不同意わいせつ罪が問題になり得る刑事と民事の両面での対応が必要になる
相手から持ちかけられて応じた行為の態様と同意の有無が問われる規約違反を理由とする請求の前提が揺らぐことがある


頼んだこと自体は、それだけで犯罪になるのか


売春防止法は、買う側を処罰する規定を置いていない

 売春防止法は売春やその相手方となることを禁じていますが(売春防止法3条)、相手方となる客を処罰する規定はありません。また、同法の「売春」は性交を指すため(同法2条)、いわゆる「抜き」はそもそも売春に当たりません。性的なサービスの有無を尋ねた、頼んだという言葉だけで、客が刑事責任を問われる場面は限られます。

 一方で、店舗や施設に掲げられた禁止事項に反したことは事実として残ります。刑事責任が問われにくいことと、店との関係で何の問題もないことは同じではありません。

言葉が罪に近づくのは、相手の意思を押し切るとき

 個室でセラピストと二人きりという環境では、同じ言葉でも、言い方や回数によって相手に与える圧力が変わります。断られた後も声を荒げて求め続けた、応じなければ帰さない、店に悪く言うといった言葉で迫ったという場合には、脅迫や暴行を用いて義務のないことを行わせようとしたとして強要罪(刑法223条)が問題になる余地があります。

 また、求めた流れのまま相手の同意なく体に触れれば、不同意わいせつ罪(刑法176条)の問題になります。同罪の法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑で、罰金刑の定めがありません。行為の線引きについては挿入がなくても罪になる場面|不同意わいせつ罪との線引き、摘発の典型例については「抜きあり」を期待した客が逮捕される3つのケースと回避策|弁護士が解説を参考にしてください。

店の「規約違反」「罰金」という請求をどう読むか


「罰金」は国だけが科すことのできる刑罰

 店から「規約違反なので罰金50万円」などと告げられることがあります。しかし罰金は裁判を経て国が科す刑罰であり、店や個人が科すことはできません。店が「罰金」と呼んでいるものは、法的には違約金や損害賠償として請求できるかどうか、という問題に置き換えて考えることになります。詳しくは「罰金」を請求された|私人が罰金を科すことはできないで解説しています。

違約金の約束があったかどうか

 入店時や予約時に、規約への同意やチェックシートへの署名を求める店があります。そこに「性的なサービスの要求を禁止し、違反した場合は違約金○万円」といった条項があり、内容を示されたうえで同意していれば、違約金の約束として扱われる可能性があります。民法では、違約金は損害賠償額をあらかじめ定めたものと推定されます(民法420条3項)。

 逆に、規約を見せられていない、署名もしていない、禁止事項に「求めること」まで書かれていないという場合には、違約金の約束自体を前提にできません。その場合に店が請求できるのは、求めたことで実際に生じた損害に限られ、言葉で頼んで断られただけで高額な損害が生じたと評価される場面は多くありません。

約束があっても、金額がそのまま通るとは限らない

 違約金の約束があったとしても、言葉で頼んだだけの違反に数十万円から100万円といった金額を定める条項は、公序良俗に反するとして(民法90条)、また消費者の利益を一方的に害する条項として(消費者契約法10条)、全部または一部が無効と判断される可能性があります。どの条項が効き、どの条項が効かないかは店が示す誓約書の条項別チェック|どこが効き、どこが効かないかで整理しています。

 なお、セラピストの側に精神的な負担を与えたことについて、慰謝料の支払いを求められることもあります。言葉だけでも、内容や執拗さによっては不法行為と評価される余地はありますが、その場合も金額は事情に応じて検討されるもので、店が示す額がそのまま基準になるわけではありません。

請求を受けたとき、その場で避けたいこと

 請求はたいてい、施術の終了直後や退室した直後に、男性スタッフが同席する形で告げられます。その場の空気に押されて決めたことは、後から覆すのが難しくなります。次のような対応は控えることをおすすめします。

  • 手持ちの現金やカードで、その場で支払うこと。
  • 金額が書かれた誓約書や示談書、借用書に署名すること。
  • 身分証を提示して撮影させる、または預けること。
  • 謝罪文の中で、実際にしていない行為まで認めること。
  • やり取りの記録やメッセージを、自分で消してしまうこと。


身分証や連絡先を求められたとき

 支払いを保留すると、代わりに身分証や勤務先を明かすよう求められることがあります。店に提示する法的な義務は原則としてなく、提示した情報がその後の請求の手がかりとして使われることもあります。対応の考え方は身分証の提示・撮影を求められた場合|応じる義務と拒否の帰結で解説しています。

「警察に行く」と言われたとき

 「払わなければ警察に相談する」と告げられると、求めた言葉だけでも逮捕されるのではないかと不安になるものです。言葉で頼んで断られただけであれば、刑事の見通しは前に述べたとおりですが、相手の受け止め方や、その場で何があったと説明されるかは、こちらからは見えません。慌てて支払う前に、事実関係を整理しておくことが先決です。告げられた後の過ごし方は【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われた翌日にすること|被害届が出る前の時間をご覧ください。

 また、「家族や職場に知らせる」といった言葉とともに、根拠のない高額な支払いを迫る行為は、内容によっては恐喝罪(刑法249条)に当たり得ます。請求の仕方そのものが問題になる場合があることも、知っておいてよい点です。

記録の残し方と、事実の整理


覚えているうちに時系列で書き出す

 請求を争うにしても、話し合いで解決するにしても、出発点は「何があったのか」を自分の言葉で正確に再現できることです。時間が経つほど記憶は曖昧になるため、できるだけ早く、次の点をメモに残しておきます。

  1. 予約の経路と、入店時に示された規約や署名した書面の内容。
  2. 施術のどの段階で、どのような言葉で尋ねたり頼んだりしたか。
  3. セラピストがどう答えたか、自分がそれにどう応じたか。
  4. その後の施術がどのように進み、どう終わったか。
  5. 退室時や退室後に、誰から何を言われ、いくら求められたか。


手元の記録を消さない

 予約のメッセージ、店からの連絡、通話の履歴は、残っていれば有力な手がかりになります。後から「規約違反だった」と言われたときの記録の考え方は【風俗トラブル】利用後に「規約違反だった」と言われた|利用時の記録を残しておく、録音の扱いは録音はどこまで証拠になるか|風俗トラブルでの残し方で解説しています。

よくあるご質問


冗談半分で聞いただけでも、請求に応じなければなりませんか

 尋ねた言葉だけを理由とする請求では、違約金の約束があったか、あったとしてその金額が妥当かが検討の中心になります。冗談のつもりだったかどうかより、何と言い、相手がどう答え、その後どうなったかという事実が重要です。言われた金額をそのまま払う前に、根拠を確かめることをおすすめします。

セラピストの側から誘われたのに、自分だけが請求されるのはなぜですか

 店の規約は客に向けて作られていることが多く、請求も客に向けられやすいという事情があります。ただ、相手から持ちかけられた事実は、規約違反を理由とする請求の前提を揺るがす事情になり得ます。一方で、誘われて応じた後の行為に同意があったかどうかは別に問われるため、何があったかを細かく整理しておくことが大切です。最初から金銭目的で仕組まれていた疑いがある場合はお触りの証拠を捏造するメンズエステ美人局の見分け方と現場での対処法も参考になります。

その場で払ってしまった場合、取り戻すことはできますか

 自分の意思で支払ったお金は、原則として取り戻すのが難しくなります。ただし、脅されて支払った場合や、事実と異なる説明を信じて支払った場合などには、返還を求める余地が残ることもあります。詳しくは払ってしまった示談金・違約金は取り戻せるか?返金請求の可否で解説しています。

まとめ


  1. 性的なサービスを「求めた」という請求は、言葉だけで終わったのか、その後に行為があったのかで見通しが大きく変わります。
  2. 売春防止法は客を処罰する規定を置いておらず(売春防止法3条)、言葉で頼んだことだけで刑事責任を問われる場面は限られます。
  3. 断られた後も脅しや威圧を伴って求め続ければ強要罪(刑法223条)が、同意なく触れれば不同意わいせつ罪(刑法176条)が問題になり得ます。
  4. 店が告げる「罰金」は刑罰ではなく、違約金や損害賠償として請求できるかという問題に置き換えて考えます。
  5. 違約金の約束があっても、過大な金額は民法90条や消費者契約法10条により無効と判断される可能性があります。
  6. その場で支払う、署名する、身分証を渡すといった対応は控え、やり取りの記録を残したうえで事実を時系列で整理します。
  7. 根拠のない高額な支払いを脅しとともに迫る行為は、恐喝罪(刑法249条)に当たり得ます。


メンズエステでの請求にお困りの方へ

 性的なサービスを求めたことを理由とする請求は、言葉の中身、相手の答え、その後の経過という細かな事実によって、払う必要があるのか、どこまでが妥当なのかが変わります。自分で店と話し合うか、窓口を代えるかの考え方は【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情でも整理していますので、あわせてご覧ください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【風俗トラブル】メンズエステで性的なサービスを求めたとして請求されたら?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼