【解決事例】メンズエステの盗撮トラブル|示談金支払後の追加請求を拒否できた事例
この記事は、2026年10月時点の刑法(令和5年改正後の不同意性交等罪の規定)、刑事訴訟法、売春防止法、民法の規定に基づいて作成しています。実際の評価は個別の事情によって変わりますので、具体的なご事情はご相談の際にお聞かせください。
「素股をしてもらっていたら、終わった後に『入っていた』と言われた」「自分では入ったかどうか分からないのに、店から本番扱いだと連絡が来た」。風俗店の利用をめぐるご相談では、このように素股の最中の出来事を指摘されて戸惑う方が少なくありません。一方でキャストの側から見れば、事前の約束にない行為をされたという受け止めになることもあり、双方の認識が食い違ったまま話が進んでしまうことがあります。
「素股は本番行為にあたらない」「同意がなければ不同意性交等罪になりうる」という一般的な説明は、それ自体は誤りではありません。ただ、素股の最中に入ってしまったという場面では、本当に挿入があったのか、気づいた後にどうしたのか、いつ誰から指摘されたのかによって、法律上の受け止め方も、その後に取るべき対応も変わってきます。
この記事では、素股の最中に「入った」と言われたときに、事実をどう切り分け、法律上どのように評価されうるのか、その場と直後に何を避けるべきかを整理します。不同意性交等罪の要件全般は不同意性交等罪とは?風俗の本番トラブルで問題になる点を弁護士が解説、追加料金を払って本番をした場合の考え方は【風俗トラブル】追加料金を払って本番をした場合でも、不同意性交を疑われることはある?で解説しています。
「入った」と言われたら、まず3つのことを切り分ける
指摘を受けた直後は、驚きや不安から、相手の言葉をそのまま受け入れたり、反対に強く言い返したりしがちです。しかし、この場面で後の対応を左右するのは、挿入の有無、気づいた後の行動、指摘を受けた時期という3つの事情を、ご自身の記憶に沿って分けて整理できているかどうかです。
本当に挿入があったのか
素股は体を密着させて行うため、体勢や角度によっては意図せず挿入に近い状態になることがあります。ご自身に「入った感覚があった」のか、「入ったかどうか分からない」のか、「入っていないと思う」のかは、それぞれ意味が異なります。推測で埋めずに、覚えていることと覚えていないことを区別しておくことが出発点になります。
気づいた後にどうしたか
入ったことに気づいてすぐに体を離したのか、そのまま続けたのかは、後で述べるとおり法律上の評価に関わる事情です。気づいた時点の体勢や、離れたときの動作、その後のやり取りを、できるだけ具体的に思い出しておきます。
いつ、誰から言われたのか
その場でキャストから言われたのか、退店後に店から連絡が来たのか、数日たってから言われたのかによって、相手が何を求めているのかや、急ぐべき対応が変わります。その場での振る舞いについては【風俗トラブル】終了後にキャストが泣き出した|その直後に客がしてはいけないこと、キャストから店への報告を告げられた場面については【風俗トラブル】「店に報告する」とキャストに言われた|報告される前にできることもご参照ください。
素股の最中の挿入は、法律上どう評価されうるのか
素股と本番行為の違い、そして刑事事件として問題になる場合の考え方を順に確認します。
素股そのものは本番行為にあたらない
一般に本番行為とは性器の挿入を指し、性器同士を擦り合わせる素股はこれにあたらないと説明されています。本番行為は売春防止法で禁止されていますが(売春防止法3条)、同法には客を処罰する規定は置かれていません。そのため、合意のうえで挿入があったとしても、それだけで客が売春防止法によって処罰されるわけではありません。
一部でも入れば「性交」と扱われうる
一方で、刑法上の「性交」は、挿入が一部にとどまる場合や短時間で終わった場合でも、あたりうると考えられています。射精の有無も直接の基準ではありません。「少しだけだった」「すぐ抜いた」という事情は、性交にあたるかどうかよりも、後で述べる故意や同意の評価の中で意味を持つことが多いといえます。
不同意性交等罪では「故意」と「同意のない状態」が問われる
不同意性交等罪は、暴行・脅迫や、同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないことなど、刑法176条1項各号に掲げる行為や事由によって、相手が同意しない意思を示すことが困難な状態にさせ、又はその状態に乗じて性交等をした場合に成立します(刑法177条1項)。法定刑は5年以上の有期拘禁刑です。
また、犯罪が成立するには原則として故意、つまり自分のしていることを認識していることが必要です(刑法38条1項)。気づかないうちに一瞬入ってしまい、気づいてすぐに離れた場合には、意図的に性交をしたとは評価されにくい事情になりえます。これに対して、入っていると気づきながら行為を続けた場合には、そのこと自体を認識して行動したと見られる余地が出てくるため、キャストの同意があったかどうかが中心的な争点になりやすくなります。
状況ごとに見た受け止め方の違い
素股の最中の出来事といっても、実際の状況はさまざまです。代表的な場面を整理すると、次のようになります。
| 状況 | 評価の方向 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 入ったことに気づき、すぐに離れた | 意図的な性交とは評価されにくい事情になりうる | 気づいた時点と離れた動作を記憶のうちに整理しておく |
| 入っていると気づいたが、そのまま続けた | 認識しながら続けたと見られる余地が出てくる | 同意の有無が争点になりやすく、早めに弁護士へ相談することが望ましい |
| 入ったかどうか自分では分からない | 挿入の有無そのものが争点になる | 推測で認めたり否定したりせず、覚えている範囲を区別して伝える |
| キャストから誘われて挿入した | 素股の延長ではなく、本番行為の合意の問題になる | 合意の有無の考え方を別に確認する |
表のどの場面でも、刑事事件として評価される問題と、店やキャストとの間の金銭の問題は、別々に考える必要があります。刑事事件にあたらない場合でも、店のルール違反や損害を理由に金銭を求められることはありますし、反対に、金銭のやり取りで話がまとまったからといって刑事手続が必ず止まるわけではありません。同意をめぐる主張をどのように裏づけるかは「同意があった」を証明できるか|風俗トラブルの証拠と限界で解説しています。
その場や直後に避けたい対応
指摘を受けた直後の言動は、後から振り返ったときに大きな意味を持つことがあります。慌てて行動する前に、次の点を意識しておくことをおすすめします。
覚えていないことまで認める、あるいは強く否定する
その場を収めたい一心で「入れました」「わざとでした」と言い切ってしまうと、ご自身の記憶と異なる内容が録音やメッセージとして残ることがあります。反対に、入った感覚があったのに「絶対に入っていない」と強く否定すると、後で別の証拠と食い違ったときに、ほかの説明まで信用されにくくなるおそれがあります。謝意を伝えることと、事実関係を認めることは分けて考え、覚えている範囲で正確に話すことが大切です。
その場で現金を渡す、書面に署名する
「今払えば終わりにする」と言われて現金を渡したり、金額や事実関係が書かれた書面に署名したりすると、後から内容を見直すことが難しくなる場合があります。口頭で「店にも警察にも言わない」と約束されたとしても、その約束がどこまで守られるかは分かりません。詳しくはその場で「示談」を持ちかけられた|連絡先と現金を渡す前にをご参照ください。
身分証や連絡先を必要以上に渡す
その場で身分証の提示や預け入れ、勤務先や家族の連絡先の記入を求められることもあります。渡した情報は後の請求や連絡の手がかりになるため、応じる前に、何のために必要なのかを確認しておきたいところです。
店やキャストから金銭を求められたとき
素股の最中の出来事を理由に、店から「本番扱い」として罰金を求められたり、キャストから費用の負担を求められたりすることがあります。請求の名目ごとに性質を分けて考えると、応じるべき範囲が見えやすくなります。
「罰金」や「本番扱い」の請求の性質
店の規約で定められた罰金は、法律上は違約金として、損害賠償額の予定と推定されます(民法420条3項・1項)。ただし、実際の損害とかけ離れた高額な定めは、公序良俗に反するとして一部が無効と判断される余地があります(民法90条)。また、規約に同意した事実が確認できない場合には、店が実際に受けた損害を示す必要がある損害賠償請求の問題として考えることになります(民法709条)。
検査費用や休業の補償をどう考えるか
キャストから、妊娠や感染症への不安を理由に検査や薬の費用を求められることもあります。こうした実費の負担は話し合いの中で検討されることが多い一方、休業補償や慰謝料として示された金額は、根拠となる日数や金額を確認したうえで判断することが望ましいといえます。名目を一つにまとめた総額だけで合意しないことが大切です。示談金の考え方は風俗トラブルの示談金相場は?本番・盗撮・お触り別に弁護士が解説で解説しています。
示談をするなら誰と、何を決めるか
刑事事件としての心配も含めて解決を図るのであれば、店だけでなくキャスト本人を合意の当事者に含めることが重要です。あわせて、処罰を求めない旨(宥恕)、今回の件で互いにほかの請求をしない旨(清算条項)、口外や接触をしない旨などを書面に盛り込むことが考えられます。書面に入れておきたい項目は風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないをご参照ください。
後から説明できるように記録を残す
素股の最中の出来事は密室で起き、第三者の目撃もないことがほとんどです。時間がたつほど記憶はあいまいになるため、できるだけ早い段階で、ご自身の側の記録を整えておくことが、後の交渉や手続でご自身の説明を支えることにつながります。残しておきたいのは、たとえば次のような情報です。
- 利用した日時、店名、キャストの名前、コースと料金。
- 行為中の体勢と、入ったことに気づいた時点、その後の動作。
- キャストや店から言われた言葉と、その日時。
- 店からの着信履歴、メッセージ、メール(削除せずに保存する)。
- 支払った金額と方法、受け取った書面の有無。
記録の作り方は【風俗トラブル】自分側の記録をどう作るか|相談の前に整理しておく材料で詳しく解説しています。
よくあるご質問
すぐに抜いたのであれば、罪に問われることはないのですか
気づいてすぐに離れたという事情は、意図的に性交をしたとは評価されにくい方向に働きうる事情です。ただし、キャストが同意していなかったと申告した場合には、挿入の有無や、気づいた時点、離れるまでの経過について、双方の説明が比べられることになります。すぐに抜いたから必ず問題にならない、と言い切れるものではないため、指摘を受けた段階で一度ご相談いただくことをおすすめします。
入ったかどうか自分では分からない場合、どう答えればよいですか
分からないことは、分からないと伝えることが基本です。「入った感覚はなかったが、断言はできない」「何か違和感があり、すぐに体勢を変えた」というように、覚えている事実と分からない部分を区別して伝える方が、後で食い違いが生じにくくなります。相手に合わせて推測で認めることも、確信がないのに強く否定することも、避けた方がよいでしょう。
その場では何も言われず、数日後に店から連絡が来ることはありますか
その場では普通に会話をして別れたものの、後になってキャストが店に報告し、店から連絡が来るという経過をたどることもあります。刑事事件としての不同意性交等罪の公訴時効は15年とされています(刑事訴訟法250条3項2号)。連絡が来た段階での動き方は【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われた翌日にすること|被害届が出る前の時間もご参照ください。
まとめ
- 素股そのものは本番行為にあたらず、本番行為について客を処罰する規定は売春防止法に置かれていない(売春防止法3条)。
- 刑法上の「性交」は、挿入が一部や短時間にとどまる場合でもあたりうる。
- 不同意性交等罪は、同意しない意思を示すことが困難な状態にさせ、又はその状態に乗じて性交等をした場合に成立する(刑法177条1項・176条1項各号)。
- 犯罪の成立には原則として故意が必要であり、気づいた後にすぐ離れたか、続けたかが評価の分かれ目になりやすい(刑法38条1項)。
- 店の罰金は違約金と推定されるが、過大な定めは一部無効とされる余地がある(民法420条3項・90条)。
- 示談をする場合はキャスト本人を当事者に含め、宥恕や清算条項を書面に残す。
- 不同意性交等罪の公訴時効は15年とされている(刑事訴訟法250条3項2号)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店の利用をめぐるトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。
素股の最中に「入った」と言われた、店から本番扱いとして金銭を求められている、警察に行くと告げられたといった状況でも、ご自身の記憶と相手の言い分が食い違っている場合でも、お一人で判断する前にご相談ください。


