マナーうんちく話239≪バラ色の人生とマナー≫
栄養バランスのとれた食事は、体の健康にとっては非常に大切だということは誰もが知るところです。
しかしそれだけでは十分ではないと思います。
人の心と身体は密接な関係があり、何を、どれだけ、どのようにして食べるかということと同時に、誰と、どのような雰囲気で食べるかということも大切です。
つまり食べ方が大切で、楽しく食べるということです。
高齢者も若者の間でも、一人暮らしの人が右肩上がりになるにつれ、「孤食」が増々増えています。
孤食にはメリット、デメリットそれぞれありますが、特に成長段階にある子供の場合は、一人で食べるより、皆と一緒に食べる「共食」がお勧めです。
現代社会では、一人一人の考え方も生活のサイクルも異なり、朝も夜もバラバラになる食事も仕方ないことですが、そこを極力努力して共食するだけの価値はあると思うのですが・・・。
先進国の中でも日本の子どもは体力面ではトップクラスですが、友達を作る能力が非常に衰えているといわれています。
親が家庭で、面と向かって子どもと話ができる機会がないからでしょう。
それが子どもを孤立させたり、あるいはストレスを膨らませる大きな要因ではないでしょうか。
日本の子どもの死因のトップが自殺というのも大変悲しい現実です。
今や、家庭で互いのコミュニケーションが取れるのは食卓だけのようですが、その食事がバラバラとなっては、子どもが大きくなって大変苦労することになることになるでしょう。
成長段階の子どもにとって、家族のだんらんと塾はどちらが大事なのでしょうか?
和食と洋食のテーブルマナーに30年以上関わってきたものとして、家族の夕食は何をさておき、大切にしていただきたいと思っています。
家族団らんで「楽しい食卓」を囲めば、精神状態も良くなり、気分が良くなり、家族の会話も弾みます。
動物はいつ敵に襲われるかもわからないので、食べ物をガツガツ食べますが、人は文化や文明を発達させたので、食事を楽しむことができます。
これこそ、人としての特権だともいえるでしょう。
そして人が食事を楽しめるのは「心通わせる」からです。
そのためには、具体的にどのような条件が必要でしょうか?
〇「家庭の料理」のありがたさや豊かさをきちんと理解してください。
高級食材に頼る必要は毛頭なく、ありあわせの食材で十分でしょう。
〇食に向き合う姿勢をきちんと示し、良き手本を示してほしいものです。
〇旬の物や初物などが食卓に提供できればいいですね。
〇朝ごはんは子どもも、大人も大切な一日の力の源です。
しっかり食べてください。可能であれば一品でも暖かい料理はお勧めです。
〇「おふくろの味」とかお母さんの「得意料理」があればなおいいでしょう。
〇食器にも心を配って下さい。
日本の食卓にはそれぞれ専用の箸や茶わんがありますが、これらは最も身近で、最も使用頻度が高い小物です。大事に扱ってください。
〇食べ物を大切にする癖をつけて下さい。嫌なものは食べないより、好き嫌いなく、出されたものをおいしく食べることができればいいですね。
●素敵なテーブルマナーを発揮して下さい。
日本では、料理は美味しく、楽しく、感謝の気持ちで食べるわけですが、自分本位でなく、周囲の人を不快にさせない心配りが大切です。特に食事をするときの身だしなみ、姿勢は勿論「・・・ながら食」はしない、食べるスピードを周囲の人と合わすなどは大切なマナーです。
また基本は揃って食べ始め、揃って終わることです。
箸や器の持ち方や扱い方は大切です。
国際化の進展のせいでしょうか、日本では和食も洋食も中華料理もごく手軽に食べられます。しかしそれぞれには独特の食法と作法があります。
例えば箸で食べるかフォークナイフで食べるか?器を持って食べるか持たないで食べるか?などの基本的なことは小さい頃からでも十分理解できます。
注意していただきたいのは、不必要に形にこだわるあまり、楽しい雰囲気に溶け込まれないようでは本末転倒です。
〇年中行事に合わせた「行事食」をできる限り取り入れて下さい。和食がユネスコの無形文化遺産に登録されて理由の一つに年中行事との深い関りがあります。
最後に今の日本は物質的に豊かになりすぎたせいで、食べ物の豪華さばかり競うようになりましたが、残念ながら今の豊かさは、心と身体を癒してくれるものではありません。よりよく生きるための基盤が揺らいでいるということです。
ぜひ家庭の食卓の意義やありかたにも目を向けていただき、上記の事をできる限り取り入れていただき「心通わす食卓」を目指していただければと思います。
6月は食育月間です。
家庭での団らんや楽しい食卓の中で育った子供が、将来大人になったら、笑顔の絶えない楽しい家庭を持ちたいと思うのではないでしょうか。
これこそ究極の少子化対策になるはずです。