マナーうんちく話544≪薔薇で攻めるか、それとも恋文か?≫
子育て支援に重きが置かれていますが、母親にとって何よりのプレゼントは子どもが元気で、明るく、そして思いやりのある子に育ってくれることではないでしょうか。
ちなみに日本の子どもの「幸福度」は先進国の中でも全体的には中くらいのレベルです。
身体的健康はトップクラスですが、精神的幸福度は最下位クラスです。
特に日本の子どもは友達を作る力が非常に弱いようですね。
世界屈指の長寿社会を豊かに生きていく上で、身体的に恵まれるということはとても大切です。
しかしそれだけでは不十分で、周囲との良好な人間関係も必要不可欠です。
幼い時からのコミュニケーションやマナー教育が必要だということではないでしょうか。
長い人生を力強く生きていくには様々な知識や技術、表現力、判断力も大切ですが、相手に対する思いやり、感謝、敬意などの美しい品性や感性が、見返りを求めずに、自然にわいてくる子どもは周囲の人に好かれます。
またこのような人は職場でも重宝がられるでしょう。
恐らく誰しも理解していることだと思います。
ただ残念ながら今の日本では、子どものマナー教育は積極的ではない気がします。
ということは大人自身も無頓着ということではないでしょうか。
では日本の大人の幸福度はどうでしょうか。
お世辞にも高いとは言えない状況です。
日本は四季が豊かで、長い歴史を有し、世界屈指の長寿国であり、平和な国です。
治安もよいでしょう。
殺人事件の発生数も10万人当たりだと世界最低レベルです。
にもかかわらず幸福度は高くない。
もったいない限りです。
「衣食足りて礼節を知る」といわれますが、これだけなにもかにもめぐまれると、今度は人や自然に対し「おもいやり」を発揮し、幸福度を高めたいものですね。
そのてん昔の人は貧しいながら幸福な暮らしをしていたのではないでしょうか。
人々が互いに思いやり、助け合い、支え合う社会が構築できていたと思います。
「江戸しぐさ」にもそれが端的に表現されています。
また「贈答のしきたり」などにもそれが伺えます。
さらにいまのようにSDGsとか自然保護という言葉はなかったと思います。
人間も、植物も動物も自然の一部であり、人間を始め全ての生き物は自然によって生かされていると捉えられていたわけです。
また日本の神道では川や山、動物や植物などすべてのものに神が宿っていると考えられていました。
倫理観も道徳観も豊かで、礼節が重んじられたのでしょう。
教育施設もかなり充実しており、庶民の教育機関は「寺子屋」が一般的でした。
だから子の躾も行き届き、寺子屋に通わすなど教育にも熱心だったようです。
日本は礼節の国といわれますが、このときにその土台ができたのではないでしょうか。
次回は具体的にどのようなマナー教育が施されていたのかに触れてみたいと思いますが、その内容の豊かさには頭が下がります。
ひとことでいえば、平和な社会背景の中で生まれたマナーですから、他者に迷惑をかけず、好感をもたらす内容です。
「子は社会の宝」と捉えていたからこそ「思いやりのある子」に育てたいと考えたのでしょうね。