マナーうんちく話544≪薔薇で攻めるか、それとも恋文か?≫
各地から雛飾りの情報が届きますが、規模が縮小されたとはいえ、心がウキウキします。
ところで「雛飾り」には飾り方や、並べ方に一応の決まりがあります。
男雛と女雛、帝と妃、つまりお殿様とお姫様が一対になって「内裏雛」と言いますが1段目に飾ります。この他2段目に「三人官女」、3段目に「五人ばやし」、4段目に「随身(左大臣・右大臣)」、5段目に「仕丁」6・7段目に嫁道具などの雛道具があります。
雛段は吉数の奇数です。
今はほとんどないと思いますが、昔は女性が嫁ぐときには「雛飾り」も持参していました。
つまり「雛飾り」は女性がいくつになっても飾っていいということです。
奇数の3段、5段、7段飾りが一般的ですが、内裏雛だけでも構いません。
その飾り方ですが、男雛と女雛の位置がまちまちになりました。
毎年この時期にお問い合わせを多くいただきますが、結論はどちらでもいいということです。
日本には「左上右下」という伝統礼法があります。
「天帝は北辰に座して南面す」の唐の時代の思想に由来しますが、これが遣唐使により日本に伝わったわけです。
皇帝は不動の北極星を背に南に向かって座り、その左右に随身(側近)が座りということですが、皇帝からみると太陽は左側の東から昇り、右側の西に沈むことになります。
太陽が昇る東の方が、沈む西より尊いということでしょう。
ただ西方浄土という言葉もありますね。
正面から見ると逆になり、ややこしく感じますが、あくまで並ぶ当事者から見て右か左かということです。
ここがポイントです。
そして「左上右下」の考え方は、今でも日常生活のいろいろな場面で残っています。たとえば次のような例は日常生活で根付いています。
〇尾頭付きの魚は頭が左になり、尾が右です。
※弔事の時には逆にするケースもあるようです。
〇定食ではご飯が左で、汁ものは右になになります。米が優先ということです。
〇お宮に参拝の際、手水舎で手を清めますが、左手から先に清めます。
雛人形の飾り方は自分から見て左側に男雛、右側が女雛ということでした。
恐らく明治になるまではこれで統一されていたと思います。
ところが、明治になり西洋諸国の多彩な文化が急激に輸入され、日本の生活は非常にややこしくなりました。
暦が「新暦」になり、年齢の数え方も数え年から「満年齢」になりました。
和服から「洋服」になりました。
マナーの世界も西洋のマナーが入ったわけです。
マナーはその国の文化、歴史、宗教、国民性、食べ物などにより表現の仕方が大きく異なりますが、西洋では日本とは逆の「右上位」です。
英語で右は「ライトRIGHT」で、正しいとか正義の意味があります。
左は「レフトLEFT」で、弱いとか価値がない意味があります。
加えて「手食の国」でも右手を清浄、左手は不浄としています。
さらに国際儀礼でも「右上位」です。
オリンピックの表彰式を参考にして下さい。
したがって国際基準は西洋流で、日本式と逆になるわけです。
ということで、雛飾りを日本式で飾るか、国際基準に合わせるかで、大きく変わるということです。
私は毎年この時期には、いろいろなところに出向き「雛飾り」拝見しますが、その代わり方に驚きます。
今は殆ど右上位が多いように思います。
また、こんなものがひな人形に?と思うことがしばしあります。
ほほえましいとも思いますが、格好良ければいい、売れればいい、ではなく、伝統行事らしく本来の由来に基づいてほしいと思います。
日本文化ですから、誇りをもって堂々と日本式を貫きたいと思うのですが・・・。
ただし日頃の日常生活では、レディーファースト精神を発揮することは、大切だと考えます。