マナーうんちく話499≪習慣は第二の天性なり≫
誤った認識をされている人も多いと思いますが「三つ指をついた挨拶」です。
この挨拶は、丁寧で、美しいと思われがちですが感心しません。
「立礼」にせよ「座礼」にせよ、お辞儀をするときには姿勢がとても大事になるわけですが、三つ指のお辞儀は大変不安定になります。
手と上体にかかるバランスが安定しないということです。
さらに指先がとても気になるので、お辞儀本来の敬意や感謝の気持ちが薄れる恐れがあります。
「掌全体を床につけるのが正式」と心得て頂ければいいと思います。
ただし、きちんと手をついてお辞儀をするような「改まったお辞儀」は、かえって心理的距離を遠ざけるケースもあります。
例えば家族間でかわすお辞儀などもそうでしょう。
今の時代はなくなりましたが「良妻賢母」という言葉が存在していた時代には、妻は主人の帰りを、三つ指をついて出迎えたようですね。
仲良い友人が訪ねてくれた場合もそうでしょう。
家族にせよ、親しい友人にせよ、改まった挨拶は気が引けます。
特に両手をついてお辞儀をする際は、相手の顔が見えません。
友人の時などは三つ指を軽くき、丁寧に接する気持ちを添えて、相手の顔を見ながら笑顔であいさつしたほうがいいと思います。
では「三つ指」とは5本の指のうちどの指でしょうか?
これにもいろいろな説がありますが、親指・人差し指・中指が一般的です。
人差し指・中指・薬指を指す時もあります。
いずれも「三つ指」を使用するときには、手の甲を相手に見せるので、きちんとそろえることがポイントです。
結論は「三つ指」は、簡単で気軽な挨拶との認識でいいと思います。
定かではありませんが、武士は自分より上位の武士には、親指・薬指・小指を畳に付け、中指と人差し指を浮かせるお辞儀をしたとか・・・。
いろいろな説がありますが、刀との関連が強いのが武士の作法の特徴だと思います。
最後に扇子を用いた邸内なお辞儀や、三つ指をついた気軽なお辞儀にせよ、「座礼」は、その後の立ち居振る舞いや、座布団との関連、茶菓のいただき方、手土産を渡すとき等多様な動作が伴います。
つまり挨拶だけ出来てもだめということです。
和室における全般的な立ち居振る舞いとともに理解していただくことが大事です。
とても窮屈そうに思えますが、デジタルの世界では味わえない心の豊かさを感じます。
また交流も深まります。
良好な人間関係や心の豊かさは手間暇がかかるということです。