マナーうんちく話509≪「女しぐさ」と「男しぐさ」≫
「ゴーツートラベル」の案内が頻繁に届くようになりました。
内容はとても充実しており魅力的ですが、せっかくなら気軽に楽しみたい思いもあるので、旅行はコロナ騒動が落ち着いてからにしようと思います。
どうもマスク姿での旅行は気乗りしません・・・。
ところで旅先で旅館のお世話になる人も多いと思いますが、気になるのは「心付け」ですね。
日本にはありませんが、アメリカやヨーロッパでは「チップ」の習慣があり、ホテルやレストランやタクシーなどを利用すればチップを支払うことになります。
チップの習慣や相場は国により異なりますが、チップは給与体系の一部であり、義務であるとの認識でいいと思います。渡すタイミングは事後です。
コーヒーハウスから生まれた習慣という説もありますが、定かではありません。
一方、日本には「心付け」という習慣があります。
感謝の気持ちを形で表現するわけで、お金でも品物でも結構です。
ただ相手の好みはわからないケースが多いので、お金が多いようですが、最近では受け取りを拒否する会社や、最初から渡さない人も増えています。
心付けはチップと異なり、渡す、渡さないは全く自由ということです。
とはいえ受けたサービスに対し、感謝の気持ちを込めてお金や品物を渡したいと思うのは、自然の成り行きでしょう。
「お礼の気持ちを渡す」から「心付け」といわれますが、これは世間が決めることではなく、自分で判断すればいいと思います。
日本で渡す心付けは、外国のチップと異なり、あくまで気持ちです。
相手の好意に大変満足したから、渡そうと思えば渡せばいいでしょう。
渡すタイミングは、事前に「よろしくお願いします」と言って渡すこともあれば、受けたサービスに感動して「ありがとうございました」と事後に渡すときもありますね。
いずれにせよ、上から目線は感心しません。
ちなみに日本には昔は、お金や品物を贈る際に、直接贈るのではなく、白い紙に包んで渡しました。その名残で、心付けを渡す場合は、袋や懐紙などに入れて渡してください。最近はお洒落なポチ袋もあるので、それを利用したらいいでしょう。
ただし袋と金額のバランスは大切です。
1万円以下ならポチ袋でもいいと思いますが、1万円以上は祝儀袋がお勧めです。
江戸中期になるとお伊勢参りが盛んになり、多くの旅行者が宿を利用します。
その時旅人が小銭をポチ袋に入れて、仲居さんに渡したのが「心付け」の始まりだといわれています。
最初は少額の硬貨を白い紙で包んで渡しますが、硬貨が紙からこぼれるのを防ぐために、端を糊でくっつけます。それがやがて今のポチ袋になったというのが有力な説のようです。ただし現在では心付けを硬貨で渡すのは感心しません。
ところで、心付けを渡そうか?渡すまいか?悩んでいるうちに、渡しそびれた経験を持っている人も多いのではないでしょうか。
サービスへの好評価であり、感謝の気持ちを渡すわけですから、「ありがとう」の言葉とともに、さりげなく、それでいて凛として渡すのがお勧めです。
ちなみにホテルで33年勤務した私は、心付けは数えきれないくらい頂きました。
人により、会社により受け取らない人もいますが、私は「善意と感謝のやり取り」と心得ているので、毎回ありがたく頂き、スタッフ一同で分け合いました。
自分が頂いた経験が多々あるので、私も旅館などでは笑顔で「よろしくお願いします」と言って、ややへりくだって渡すようにしています。
その時「結構です」といわれれば、こちらも「気持ちです」と言って再度渡します。
ただし2回断られたら、潔く下げることにしています。
私は個人的には、日本の心付けの習慣はとても好きです。