マナーうんちく話520≪電車内でお化粧するの、どう思う?≫
何か重大なお願い事をするときに、思わず心の中で「神様・仏様」と唱えた経験を持っている人は多いのではないでしょうか。
また葬式は仏教でとり行い、祝い事は神社に出向くことも多々あります。
初詣には神社に参拝し、入学式や合格祝いに赤飯をいただくことも多いでしょう。
仏教や神道の信者として認識している・いないに関わらず、私たちは日常生活で、何の不思議もなく神様・仏様を受け入れています。
この様に、二つの宗教文化を1000年以上も共存させている国は、世界の中でも非常に稀ですが、今でも多くの家庭には「仏壇」と「神棚」があります。
ではそれらは、いつ頃から、どんな目的で設置されたのでしょうか?
仏壇は仏像や仏具を飾り、仏様を祀る台です。
お墓が遺骨を納めるのに対し、仏壇は位牌を納めます。
つまりお墓も仏壇も、先祖や故人を供養するためのものです。
日本には538年に仏教が伝わる前から、家で先祖の霊を祀る「祖霊信仰」が根付いていましたが、一般庶民の家に仏壇が広まったのは、江戸幕府の宗教政策が大きな要因です。
江戸幕府は「檀家制度」を設けましたが、仏壇は近くのお寺に所属している証になったわけですね。
ちなみに檀家制度とは、家単位で特定の寺に所属して、葬儀やその後の供養一切をその寺に任す代わりに、お布施等でその寺の経済支援を行う制度です。
いっぽう「神棚」は、家庭や事務所などにおいて、神道の神を祀るための祭壇です。
神社から頂いたお札を大切に祀るわけですが、棚そのものを指すよりも、棚の上に安置されたお宮も含めて神棚と言います。
お札には伊勢神宮のお札、氏神様の神社のお札、崇敬する神社のお札があります。
また神道は日本古来の宗教ですが、一般庶民の家庭に神棚が普及したのは江戸中期からだといわれています。
当時は富士山と伊勢神宮の参拝がおもな観光だったようですが、伊勢神宮参拝に際しては「御師(おし)」と呼ばれた、百姓と神官の中間職のような観光案内人の世話を受けます。
この御師が伊勢神宮の信仰を促進するための戦略としてお札を配布したわけで、ありがたいお札を置くための棚が普及したのは容易に想像できます。
神棚を拝むときの作法は二拝二拍手一礼ですが、この他、古い家では実生活に関係が深い様々な神様が、いろいろな場所に祀られています。
台所に祀られる火の神様や井戸の水の神様などです。
日本人は昔からお札と深いかかわりを持っていますが、災害などから身を守ってくれるとともに、幸運を招くなんとも神秘的な力を有していると考えられています。
肌身に付ける小さなものから、柱や天井などに張り付けるもの、またまた家内安全、五穀豊穣、商売繁盛、交通安全などがあります。
このように仏壇には御本尊と位牌が、神棚にはお札が祀られ、家族は故人・先祖・神様を常に身近に感じることができます。
だから何か重大ごとがあれば、神様・仏様に報告したり、お願いしたりして対話するとともに、心の安らぎを得たわけです。
さらに家族の和や秩序を守り、絆を深めてきたのです。
新型コロナでお盆の故郷への帰省ができなかった人も多いと思いますが、ご先祖や神様・仏様について考えてみるのもお勧めです。