マナーうんちく話521≪お心肥し≫
日本人にとって正月は最大級の年中行事ですが、開運笑福の物語が多く存在し、大変長い歴史を有しています。
正月の明確な起源は解っていないようですが、お飾りや門松は江戸時代に普及したといわれています。しかし正月行事そのものは、6世紀に仏教が伝来する前から存在したようです。
今でも家族繁栄や五穀豊穣をもたらしてくれる「年神様」を、お迎えして、おもてなしして、お見送りする一連の行事は多く残っていますね。
ところで「二十日正月」をご存知でしょうか?
今ではすっかり影を潜めましたが、正月に用意した野菜や魚のご馳走を全て食べつくす日です。
特に正月料理に欠かせない「ぶり」の頭も骨も、野菜などと一緒に似て食べつくすので「骨正月」ともいわれ、これでもって正月の祝い収めとして、浮かれた気分を元に戻すわけです。
一般的には1月15日の「どんど焼き」で正月の祝い収めとするケースが多いようですが、昔は娯楽が少なかったので、それだけ正月に思いを寄せていたのでしょうか。
つい先日「とんど焼き」に位牌が持ち込まれたテレビの報道を見てびっくりしました。
なぜこんな現象が起こるのでしょうか?
しきたりの意味や意義を正しく認識したいものですね。
日本は四季が豊かなうえ、国家として世界屈指の歴史を有している関係上、昔から守り語り伝えてきた「しきたり」が多々あります。
日常生活に根付いているしきたりもあれば、ビジネス社会でのしきたりもあるでしょう。
特に明治以降から存在するしきたりは、「四季」という日本ならではの季節感に加え、「神道」や「仏教」、「二十四節気」や「七十二侯」、さらに「五節句」や「雑節」の影響も受けながら、長い時間をかけ培われてきたわけです。
またクリスマス、結婚記念日、バレンタインデーのように明治以降からのしきたりはキリスト教の影響を強く受けています。
いずれにせよ、なぜそうするのか?という意味を理解することが大切です。
たとえば「どんど焼き」の歴史は非常に古く、平安貴族が起源という説もあるようですが、正月のお迎えした家内安全、五穀豊穣をもたらしてくれる年神様をお見送りする火祭りです。
払い清めの意味と、正月気分の一掃という目的があり、位牌を燃やす意味はありません。
またどんど焼きは現在でも全国津々浦々、多くの地域で行われていますが子供も多数参加します。
できれば主催者が「どんど焼き」の意味や意義を説明し、どんなものを燃やすか教えて頂ければありがたいと思うわけです。
そのためにはまず大人が日本の伝統行事やしきたりに精通する必要があります。
国際化とは英語を学ぶことばかりではありません。
まず自国の文化や行事や作法に精通し、次世代に正しく伝え、海外にも発信していくことだと考えます。
次回に続きます。