マナーうんちく話684《冠婚葬祭9、「婚活」への心構え》
12月は旧暦では「師走」と言いますが、一年間に蓄積した汚れを取り除き、清めて正月を迎えるという意味で「除月」ともいわれます。
ちなみに玄関に飾られる正月飾りは「家の中が清められています」というしるしですが、では何のために清めるのでしょう?
正月に里帰りされる年神様を迎えるためです。
そして今でも師走の風物詩になっているのが「年末大掃除」ですが、「すす払い」ともいわれます。
12月13日は「正月事始め」と言って正月の準備を始める日で、昔はこの日に一斉大掃除をしたようです。
江戸時代は炬燵を出す日、大掃除をする日、餅つきをする日などが決まっていたようですが、全員が歩調を合わせるのもいいですね。
絆というものはこのようにして形成されるのだと思います。
ただ炬燵を出す日は、武士と町人では異なり、武士の方が早かったようです。
「炭代」がかかるから「町人は少し我慢せよ!」ということでしょうか・・・。
今では差別だと言って問題になりますが、当時はそれが当たり前で、問題提議は出されなかったようです。
ところでこの時期頂いて喜べない便りがあります。
「喪中葉書」です。
これには色々な考え方があるようですが、改めて「忌」や「喪」について考えてみたいと思います。
先ず「忌」ですが、これは死者の穢れを表現する言葉で、古事記の時代から死んだ人を穢れとする考えが存在していたようです。
つまり亡くなった人の遺体に執着するというより、その霊魂の行方が大変気になったということです。
そして「忌中」とは、身内の死に対して身を慎む期間と理解されたらいいと思います。
身を慎むとは具体的には、慶事を避ける、神社などの参拝は行わない、正月行事もしない等ですが、仏式ではその期間は49日とされ、この間は極力他人との接触を避けます。
なぜ避けるのか?といえば接触した人にも穢れが移るからです。
穢れは肉親や周囲の人に伝播すると考えられていたわけですね。
葬式の時には「忌中」と書いた札を張り、一定期間行動を慎みますね。
何かとあわただしい現代社会では、現実的に49日間も世間と接触を避けるわけにはいきませんが、それでも程度の差はあれ49日の概念は今でも脈々と伝わっています。
なぜ49日かといえば、平安時代中期に編纂された律令の施行規則「延喜式」で、死の穢れの期間は49日と規定されているからです。
この期間が1000年以上一度も改正されることなく延々と続いているわけですから、不思議といえば不思議ですね。
どんな力が働いているのでしょうか・・・。
さらに職場では「忌引き休暇」があります。
身内が亡くなれば仕事を休んでも欠勤扱いにならない期間で、具体的に何日かは、職場や亡くなった人との間柄により異なります。
配偶者が無くなれば忌引き休暇は10日、父母の場合は7日、配偶者の両親や祖父母の場合は3日が一般的のようです。
AI万能の時代でも「穢れ」にたいする忌避意識は変わらないようですね。