マナーうんちく話521≪お心肥し≫
約1100年前から畳の原料として使われている「イグサ」をご存知でしょうか?
最近は生産農家が激減しているのであまり見かけることがありませんが、細長い茎で葉が無い多年草です。
このイグサを干して織って作られたものが「畳表」で、和室には無くてはならないものです。
日本の文化は中国や朝鮮半島から入ってきた物が多いようですが、扇子と同様「畳」は日本で生まれた生粋の日本文化です。
しかしその原料であるイグサの生産量は減少し、畳を敷きつめた和室が減少傾向にあります。
生活様式はそれぞれでしょうが、畳の部屋が有ると気分が和らぐので好きだという人もおおいと思います。
落ち着けるだけでなく、抗菌作用もあり、さらに吸湿性や放湿性まで有しています。恐らく子育てにも最適ではないでしょうか。
着物や和食などと共に畳は「和の感性」の象徴だと思うのですが・・・。
たとえば生け花を飾るのも畳の部屋がお似合いです。
正月のお節料理も畳の部屋が相応しいと感じるでしょう。
桃の節句のお雛様を飾るのもしかりです。
また着物を着た日本人女性が、畳の部屋に凛と正座している美しさは格別です。
だから畳の部屋でのおもてなしは最高だと思います。
畳のぬくもりは日本人にとって最高のもてなしであり、落ち着けます。
先日和食のマナーの事前セミナーで「和室の礼儀作法」について触れました。
20代から80代までの男女34名の参加者でしたが、和室になれてない人が年々増えてきた感が有ります。
平和な社会背景のもとに生まれた日本のお辞儀には「立礼」と和室で座って行う「座礼」が有りますが、座礼が出来る人が非常に少なくなってきました。
まして、思いやりの心が凝縮されている和室の「襖の開け閉て」になると、出来ないのが当たり前といった感覚でしょうか。
日本のオリンピック招致団が最終のプレゼンテーションで表現した「おもてなし」文化が廃れているということでしょう。
「個」より「和」を大切にして、常に相手を思いやる心を表現した和の礼儀作法が薄れていくのは寂しい限りですね。
神前結婚式よりキリスト教スタイルの結婚式が増え、日本の伝統行事よりクリスマスやバレンタインやハロウィンが盛大になったせいかもしれませんね。
春を迎えるに当たり、改めて畳やおもてなしの心を見直したいものです。