マナーうんちく話500≪継続は力なり、500回ありがとう!≫
【衣食足りて礼節を知る】
1945年に戦争が終結するわけですが、当時の日本は言葉では言い表せない位ひどい状況下におかれていました。食べる物にも事欠き、平均寿命は先進国の中では最下位クラスです。
そんな中混乱期から抜け出すために日本人は持ち前の勤勉さでなりふり構わず働き、経済を立て直し、急成長を遂げます。
「経済大国」や「エコノミックアニマル」等と言う言葉も産まれました。
それなりの豊かさを手に入れるわけですが、こうなると気持ちにゆとりが生じ、日本の文化を再度思い起こすことになります。
もともと日本の文化や礼儀作法は世界に誇れるものですから、見つめ直す価値は十分あります。そして、日本古来のしきたりや習慣の素晴らしさに改めて気づくことになります。
【冠婚葬祭事典】
このような状況下において1987年には「冠婚葬祭事典」が出版され大きな話題を呼びます。
今までは漠然としていた点が、この辞典により明確になったので助かります。
いざという時の作法が解り、しきたりがわかるので暮らしのお役立ち教本として身近に置きたくなりますから、ロングセラーになるのもうなずけます。
【礼服と略礼服】
衣服の量販店からからは礼服や略礼服が販売され、葬儀の際は黒い服に黒いネクタイ、結婚式には黒い服に白いネクタイが定着するようになります。
物が豊かになるにつれ婚礼も葬儀も盛大に執り行われるようになり、それぞれ付加価値が加味され、何かと複雑多様になってきますが、服装にもこだわりたくなってきます。
特に日本は士農工商等の身分制度があったので、服装のルールも明確ではなくとても複雑でした。だから色々なライフスタイルをもった人が集まる冠婚葬祭の場面においては、どのような服装で参列するかについては大変神経を使います。型にはまったものもないし、服装に関するセンスや知識がなければ、不安が生じるのも無理はありません。
このような状況下では、いつも服装の事が気になり、他者に思いやりの気持ちを抱くゆとりはできないでしょう。しかし、冠婚葬祭事典や礼服が登場したおかげで、喪服は黒と決まったので、葬儀にはとりあえず黒の服装で参列すれば安心できます。こうなると他者に配慮する心のゆとりも生まれるわけですね。
ちなみに「礼服」とは、社会生活をするうえで、特に冠婚葬祭時において、敬意を表すると同時に、威厳を正すために着用する衣服だと認識して頂ければ良いと思います。
そしてそれには、燕尾服やタキシードのような「正礼装」と、ディレクターズスーツのような「準礼装」、さらにブラックスーツのような「略礼装」があります。この中でも特に正礼装は外して、ネクタイを変えるだけで、結婚式でも葬式でも着用できる「ブラックスーツ」が便利な礼服として活躍する事になります。
その意味においても、冠婚葬祭事典や礼服の登場は、マナーの世界に大きく貢献したのではないかと考えます。
こうなると事態は益々好転し、それなりの知識を身に付けることにより、自分もハジをかかないけど、周囲の人にもハジをかかせないような配慮が出来るようになります。
また、そこに込められた合理的理由を知ることにより、TPOに応じた行動が出来るとともに、古代から続く習慣やしきたりと、現代生活を上手に組み合わせるように創意工夫することもできます。
経済の発展は日本人本来の礼節の心を呼び起こしてくれたと言えるのではないでしょうか。