マナーうんちく話461≪手土産の頂き方≫
今が旬の花に「水引の花(水引草)」があります。
上から見ると赤い小花が穂状に無数に付いており、下から見ると白い花が幾つも咲いているように見えるので、祝儀の「水引」に見立てられて、その名がつきました。
日本各地で見られ、我が家の食卓にも活けていましたが、本当に地味で、どちらかと言うと雑草として扱われるかもしれません。
しかし、この花に「水引草」とお洒落な名付けた人は、本当に豊かな感性を持っていたと思います。
花言葉は「慶事・祭礼」で、季語は秋です。
この花が咲くようになったら、季節はいつの間にか秋へとなびいていることですね。
ところで「水引」をご存知でしょうか?
進物用の包み紙などを結ぶのに用いる飾り紐のことで、祝儀袋や不祝儀袋にも使用されています。
細い「こより」に水のりを引いて、乾かして固めたら出来上がりです。
日本人なら非常になじみが深く、お中元やお歳暮、結婚祝いや入学祝いや長寿の祝いなど等、私たちの一生に付き物です。
また、人生の節目に当たる儀礼には、水引のかかった贈答品が必ずと言っていいほど登場します。
水引のルーツは二つあります。
一つ目は、室町時代の中国との貿易において、中国からの輸入品に、赤と白の紐がしばりつけてあり、それが日本人に、お目出度い時の印と勘違いされ、贈答の習慣として定着したと言う説があります。
そして江戸時代になると、慶事の紅白の水引に対して、不祝儀には白黒が発生したのではと考えられています。
水引の起源のもう一つは、古来の日本の習慣ですが、「結び」の信仰があります。
もともと贈答の習慣は、神様へのお供えが起源で、農作物等の豊作を祈願し、供物をささげたのが始まりです。
それが人間同士の交流の役目を担った贈答になったわけで、時代と共にそのスタイルは変わりましたが、心を込めて贈ることが大切です。
だから、その気持ちを表現するために、贈答品を白い紙で包んで贈るわけです。
ちなみに、白は贈り主の身を清め、相手を尊ぶ心を表現する色です。
加えて、水引はその結び方に大きな意味があります。
何度重なってもいい良い事には「蝶結び」で、ほどきやすいのが特徴です。
両端を引くと、どんどん結び目がきつくなる「結び切り」は、これ限りのお祝い事、例えば結婚祝いや快気祝い等に使用します。
このように水引は、相手に対する願い事が詰まっている、世界に例を見ない日本独特の「心の文化」だと言っても過言ではないと思います。
正しい知識と共に、TPOに応じて、心を込めて使用すると共に、次世代にも語り伝えたいものです。
さらに、慶事における贈答品の右肩に「熨斗」が付きますが、これは「熨斗鮑」の略で、祝い事が何時までも伸びるようにとの願いが込められています。
私たちが日常何気なく使用している水引や熨斗には、本当に繊細さ伝統があり、先人の祈りや願いが詰まっているわけですね。