マナーうんちく話521≪お心肥し≫
晩春から初夏へと移行するこの時期は、緑が益々エネルギッシュに輝く時でもありますが、名残惜しさも漂います。
《行く春や 鳥啼(な)き魚の 目は涙》(芭蕉)
春が過ぎようとしているが、春との別れは人間に限った事ではない。
鳥は寂しそうに鳴き、魚の目にまで涙が流れているようだ。
45歳の芭蕉が晩年の旅立ちに当たり、見送りの人々と別れる時に詠んだ句だそうです。
いよいよこれから孤独な長い、長い旅が始まるわけですね。
この句が詠まれて300年以上経過しました。
そして、今、コミュニケーションツールや出会い・ふれあいの機会は比較にならない位増加しました。
しかし、現代人には、繋がれない不安と共に、孤独感やストレスが漂っているようです。
スマートフォンが離せない子どもしかりですが、年齢にかかわらず、孤独感を感じている人は大勢いるのではないでしょうか。
皆様は如何でしょうか?
便利になり過ぎたせいで、人と人との直接的なかかわりが限られる現象は、職場でも、家庭でも生じています。
特に家庭でのすれ違いは深刻です。
誰にとっても良く有りません。
母と学生の娘の二人暮らしの家庭が有ります。
母親は一階で暮らし、娘は2階です。
夕食が出来たので、母親は娘にメールでその旨を伝え、娘はその夕食を2階の自分の部屋に持ち帰り、互いに一人で食事を済ませる。
この場合も、お互いに常に孤独がいいのでしょうか?
孤独を楽しむ時間と、家族水入らずの時間、つまり団欒の時間のめりはりを付けた方が良いのではと思うのですが、いかがでしょうか。
いつも、いつも孤独だとストレスがたまり不安に陥ったり、鬱になるケースも多く、精神衛生上よろしく有りません。
日本は世界が経験した事が無い超高齢社会に陥っています。
そして、超高齢社会の特徴は「独居高齢者」が多いと言うことです。
とりわけ女性は男性より平均寿命が6歳から7歳長いので、高齢の女性の独居者は増加の一途をたどっています。
女性のみではありません。
多くの人が「お一人様」予備軍です。
加えて結婚適齢期の人でも「非婚化」現象が高まっています。
すなわち、世界屈指の長い人生を結婚しないで生活する人生を選択する人が増えていると言うことです。
このような時代を迎えた今、若い人も高齢者も「孤独」と上手に付き合うことが大切になってきます。
次回に続きます。