マナーうんちく話315≪子どもに教えたい「けじめ」≫
丁度一月前に真夏日を記録したかと思うと、今度はいきなり真冬日。
昨日からの急激な寒さで紅葉も進んでいるようですが、先ずは体調管理にご注意ください。
そして、寒さが募り、海の幸や山の幸に恵まれる時期に恋しくなるのが熱燗と鍋で、日本酒党には最高の季節です。
ホテル・旅館・デパートの食材のみならず、今回は日本酒まで偽装表示が発覚して、グルメの秋の雲行きが怪しくなりましたが、気分をとりなおし、鍋料理で家族の笑顔を咲かせて下さい。
ちなみに、ある調査によると、食べ物の好き嫌いが多様化する中、10人中9人は鍋が好きで、しかも9割近くの人が自宅で家族と共に囲む事を希望しているとのこと。色々な意味で、鍋は実に理想的な食べ物ですね。
また、「飽食&美食の国」の鍋料理のメニューも、半端ではありません。
全国的な、「すき焼き」「蟹すき」「湯豆腐」「しゃぶしゃぶ」「水炊き」「モツ鍋」等から、地方色豊かな「キリタンポ」「石狩鍋」「あんこう鍋」「土手鍋」等など合計100種を超えるそうですが、大きく3つに分類できます。
先ずは水や出汁で煮込み小皿に取ってポン酢やゴマだれ等の味を付けて食べる「水炊き」、薄味で煮込み小皿に取ってそのまま食べる「よせ鍋」、そして濃い味で汁けがなくなる程度まで煮込み小皿に取って食べる「すき焼き」です。
日本では昔から竈(かまど)がありましたが、それとは別に暖房・照明・調理を兼ねた「囲炉裏(いろり)」があり、そこで料理を煮たり焼いたりしながら食べる習慣は有りましたが、現在のように皆で鍋を囲んでワイワイ言いながら食べる習慣は江戸時代からだといわれております。
そして、明治になり「牛鍋」が流行したのに加え、熱源が蒔きや炭からガスや電気になり、さらにカセットコンロの普及により、より盛んに鍋料理が食べられるようになったわけです。
寒い日に、好みの食材に好みの料理方法で、家族で囲む鍋料理の美味しさや温かさは格別で、心が心底温まります。
そして冬の味覚の王様とも言えるのが「フグ料理」です。
日本では古くは縄文の時代からフグが食べられていたそうですが、昔から常にリスクと向かい合わせの料理がフグの大きな特徴ですね。
ところでフグと言えば、フグ鍋を「てっちり」とか、フグの刺身を「てっさ」と言いますが、これは「鉄砲」を意味する言葉です。
フグにはテトロドトキシンと言う非常に強い毒素が含まれており、運悪く当たれば、鉄砲の弾に当たるようなものだから名付けられました。
このように、フグの毒素は鉄砲の弾に当たる位に致死率が高いので、豊臣秀吉が「フグ食禁止令」を発令し江戸時代まで持続されていました。それが明治になり当時の内閣総理大臣・伊藤博文が下関でフグを食べて、あまりにも美味しかったのに感動して、禁止令を解いたという有名な話しがあります。
ちなみにフグは漢字で「河豚」と書きますが、フグは怒ったり、びっくりしたりすると、豚のように膨れるから豚の字が使用されたそうです。
そんな様子も受けたのでしょうか、禁止令が出ているにもかかわらず江戸時代の人はフグを好んで食べたようですね。
「河豚は食いたいし 命は惜しいし」、それでも江戸っ子は食べたわけですから美味な物に対する執着が強かったのでしょうね。
そういえば、高価な「初鰹」を、女房を質に入れてお金を工面して食べたのとよく似た気質ですね。
今は食品の衛生面も充実しており、フグ料理は「ふぐ調理師」が担当するので安心ですが、世界中で約8億4000万人が飢餓に苦しんでいる中、食べ物が、美味しく、楽しく食べられる事は本当に幸せだと思います。
「幸福は口福から」と言われます。
また「健康は健口から」とも言われますが、幸せづくり、健康づくりの玄関は口です。
このことを肝に銘じて、偽装表示を考えてみたいものです。