マナーうんちく話486≪大切にしたい序列のマナー≫
急に寒くなり、落ち葉が舞い散り、冬の気配がほのかに漂う頃になりました。
今日11月7日は「立冬」で、季節はいよいよ冬です。
旧暦では10月と11月と12月が冬ですが、二十四節季では「立冬」から「立春」の前日までが冬になります。
また、天文学的には冬至(平成25年は12月22日)から立春の前日になりますが、現在では一般的に12月と1月と2月の終わり頃ではないでしょうか?
そして立冬の頃にやってくるのが、先日のニュースにも有りました、冬の到来を告げる「木枯らし1号」です。春を告げる「春1番」は、なんとなく浮き浮き感が漂いますが、木枯らし1号は、これから寒さに立ち向かうわけですから、何かと準備が大変です。自然も、動物も、人間も・・・。
特に昔は今のように、住まいも、着る物も、食べる物も、照明も乏しかったので、冬を迎える準備において、手抜きは致命的になります。
ところで、沢山存在する江戸しぐさの一つに「念いりしぐさ」があります。
念には念を入れて確認するしぐさですが、江戸時代の人は特に、何事に付け大変用心深かったわけですね。
中でも、江戸時代の住居は密集しており、しかも全てが木造建築で、加えて照明がロウソクのような火を用いていたので、事の他「火の用人」には神経を使っていたようです。
当時の、恐ろしい物を順に体裁よくまとめた言葉に、「地震・雷・火事・親父」とあるように、火事に対する念いりしぐさは半端では無かったと思います。
ちなみに、江戸しぐさは、商人が「商売がうまく運ぶように工夫したしぐさ」ですから、商いにおいても、念いりしぐさは大変重要な役目を果たしていたと思われます。お客様を欺くような事があっては大変です。
お客様をお迎えするに当たり、ゴミは落ちていないか、埃は無いか、店先の商品はキチンと陳列されているか、在庫はどうか、釣り銭はどうか、お茶はあるか、表示は間違っていないか等など・・・。
現代でも公私とも大いに参考になる仕草ですが、当時と違って、今は何もかも複雑多様化されており、数も多いですから、念いりしぐさも数えきれない位あるのではないでしょうか。
今では、当時のアナログの要素を、デジタル化して、あらかじめ登録されている情報をクリックするだけですから、思いの他、便利で楽になりましたね。
ただし、これでは直接考えることも、感じることもできません。
また、なにもかも機械任せで有れば、いざという時に多大なリスクを負う羽目にも成りかねません。
念には念を入れ、必要に応じて正しい情報を取捨選択する必要もあると考えます。加えて、手間・暇を掛けてでも、デジタル思考に依存することも大切ではないでしょうか?
なによりも、日常における互いのコミュニケーションは欠かせません。
念いりしぐさの要素は本当に多いですが、あくまで念を入れることが出来るのは段取りの段階までで、おきてしまった結果に対しては念を入れることは不可能です。「覆水盆に返らず」と言う言葉があります。
「備えあれば憂いなし」とも言われます。
普段から念入りな準備をしておくと、何が起こっても安心だという意味です。
一方、「うかつしぐさ」と言われるしぐさも有ります。
「うかつ」とは、うっかりした様や注意が足りない様です。
「クルマエビ」入りのお節料理との表示を見て買ったけど、結局ブラックタイガーであった。今ならすぐにクレームをつけますが、当時の人は「自分に見抜く力がなかったことを恥じる」わけですね。
今回の有名ホテルやデパート等の一連の事件。
偽装表示か?誤表示か?真意のほどは解りませんが、大勢の人が不快な思いをしたことは確かです。
うかつしぐさを見習いたいものですね。