マナーうんちく話53≪接客の歴史と社会貢献≫
お見合いの席で男性と女性、どちらを先に紹介するか?
レストランで椅子に座る時、右と左、どちらから出入りするか?
階段を上がる時には、お客さんと自分、どちらが先か?
お雛様を飾る時には、男雛と女雛の位置はどうか?
訪問先で上司を紹介する時は、クライアントが先か上司が先か?等など迷うことが多々あります。
序列は社会の秩序を保つためのもので、人々は序列の中において、自分はどこに位置するのかを大変重要視します。
特に、日本人は兄弟、姉妹まで序列が付いている国です。
勿論、国際社会でもしかりです。
公式の席では、誰にどこに座って頂くか?紹介の順序はどうするか?国旗掲揚はどうか?記念写真を取る時に正面は誰か?その隣は誰か?等などにおいて厳格な取り決めが有ります。
但し、時と場合と場所により異なるので、臨機応変に対応することが必要です。
先ず、「上下の関係」ですが、これには、日本独特の上座と言う概念がとても大きな意味を持ち、一家の主人や客人は、床の間を背にして座ります。
また、高貴な人には、一段高い場所に位置して頂く傾向が有ります。
日本の座布団もこのような発想で作られています。
さらに、祝儀袋の包み方にも表れています。
慶事の場合は、上側の折り返し部分が下に、下側を上に折り返しますが、これは、お目出度い時には天を見上げる意味だそうです。
弔事はその逆で、上側の折り返し部分を上にしますが、辛く悲しい時ですので頭が垂れ下がる状況を表現しています。
次に、「右左」の関係ですが、主君を補佐するのが左右の大臣ですが、日本では平安時代から左が格上とされていたので、年長者の左大臣が右大臣より格上です。
日本人は、右利きが多いので、少し違和感がありますが、江戸末期までは歴然としていたようですが、明治になり日本は英国式マナーを採用したため、右と左が逆になりました。
従って日本式では左上位、英国式では右上位とバラバラになったと言うのが現状です。しかし、国際社会では右上位です。
また、イスラム教やヒンズー教国における「手食」の場合も右で食べます。
加えて、「奇数と偶数」ですが、これは今でもほとんど変わりがないようで、依然として奇数が格上になります。
なぜなら、偶数は丁度割り切れるけど、奇数は割り切れないからです。
勿論、小数点の概念などは無い時代の話しです。
「七五三」「五節句」「三三九度の盃」「三三手拍子」「祝儀袋の水引の数」等の世界では、依然と存在しているしきたりです。
さらに、「男性と女性」では、和室などでは、和の礼儀作法が確立された頃は男尊女卑傾向の風潮が強かった時代ですから、男性優位になりますが、洋室や国際社会ではレディーファーストの原則に従えばいいでしょう。
紹介する時には、外部優先、女性優先、年配者優先、上位者優先です。
訪問先で、上司とクライアント、どちらを先に紹介するかと言えば、クライアントは外部者ですから、クライアントが上司の情報を先に知る権利が有ります。
従って、クライアントに上司を先に紹介すればいいでしょう。
「和魂洋才」と言う言葉が有ります。
「和魂」とは先人が大切に育んできた、日本人固有の魂です。
「洋才」とは、西洋の学問に関する才能や知識の事です。
今の時代は、いつでも、どこでも、自由にコミュニケーションが可能になり、異文化コミュニケーションの必要性がより高まっています
先人が築き上げた日本固有の精神を見失うことなく、西洋から入って来た文化や知識等を有効に活用しなければいけません。
古今東西、「思いやりの心」は不変ですが、表現の仕方はTPOに応じ、柔軟に対応することが大切だということです。