マナーうんちく話269≪顧客満足より従業員満足≫
ホテルで長い間接客の仕事に携わっていると、言うに云えない苦労も沢山あり、常にストレスとの戦いですが、色々と磨かれることも有ります。
忍耐力が強くなる、優しさが身に付く、良好な人間関係を築くことができるようになる、そして人を見る目が養われます。
勿論、これらは人それぞれですが、概して経験年数に比例します。
経験年数が増えれば、大体役職もそれに相応しいモノが付きますが、ホテルは他の接客業と異なり、いくら上の役職についても、常に現場の第一線でお客様と触れあうことになります。
ただ、私たちの場合は、お客様から「上から目線」で見られるわけで、私達がお客様を、上から目線で見ることはまずありません。
このことは、多少は緊張も有り、窮屈な感は有りますが、とてもいい経験になります。
「上を悪むところ 以って下を使うなかれ(かみをにくむところ もってしもをつかうことなかれ)」という言葉があります。
上から下の者を見ると3年かかるが、下から上の者を見ると3日で理解できると言う意味です。
決して、上の人が馬鹿で、下の者が悧巧だということではなく、立場によって異なると言うことです。
お客様の中には様々な人がいます。
優しく接してくれて好感の持てる人もいれば、横柄で非常に不快感を覚える人もいます。
勿論いくら横柄にされても、笑顔でキチンと応対しなければいけませんが、問題は、自分が客の立場になった時です。
かって、自分が不快感を覚えたことを思い出し、横柄にされたお客さんと同じ態度を取らないで、好感を覚えたお客様のように、優しく接することが大切です。
私たちは、気軽にサービス、サービスと言っていますが、その本質は、お客様が心地良い一時を過ごせるように、もてなすことです。
英語の「Service」の外来語で、日本では大正時代から使われ始めたようです。
この「サービス」は、手に触れることも、目に見えることもできないので、非常に難しい面が多々あります。
さらに人間が行うことですから、品質を一定に保つこともできません。
いわば、10人10色の側面があります。
逆に言えば、それだからこそ魅力もあると言えます。
一方、店側の人が心を込めてもてなしてくれたことに、客の立場としては、それにスムーズに答えなければいけません。
これが「マナー」です。
客だから、何をしても良いと言う理屈は有りません。
自己中心的になるのではなく、相手のことを考えて答えるのがマナーです。
「店(売り手)」と「客(買い手)」には、上下関係は有りません。
互いに、感謝と思いやりと尊敬の気持ちで接することが必要です。
そして、なぜ思いやりや感謝の気持ちを持ちながら接する必要があるのか?
その理由を考えながら行動できれば最高です。
特に、営業や接客・接遇に携わる人は、自分が客の立場になった時、「好感の持たれるお客様」を意識し、そのように振舞えば、営業力も接客力もグーンと向上するはずです。