マナーうんちく話51≪これからの接客・接遇≫

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:ビジネスマナー


マナーうんちく話51《これからの接客・接遇》

接客・接遇マナー『これからの接客・接遇の在り方とは』

ここ10年くらいで社会背景がかなり異なってきました。
少子高齢化が急速に進展したこと。情報化が高度に発達したこと。ユニバーサルデザインの概念が一般化したこと。市場経済があらゆる分野に浸透したこと。
一方「無縁社会」というキーワードが生まれ、人と人との絆づくりが改めて認識されてきた時代でもあります。
このような状況下において、接客・接遇の仕事は益々その存在価値が高まり、今まで以上に「専門知識+優しさ」が追求されてくると思います。

専門知識はそれぞれ個々に修得して頂くとして、ここでは「優しさ」とそれを育む「下積み生活」に触れてみます。

◆お年寄りに優しい接客・接遇を心がけて下さい
マナー講師として、シニアライフアドバイザー(内閣府所管(財)シニアルネサンス財団認定)としての見解です。

日本は世界一の長寿国になりました。素晴らしいことですが裏を返せば今まで世界が経験したことのない「超高齢社会」であるということです。
超高齢社会とは、65歳以上の高齢者の全人口に占める割合が21%以上になった状態です。岡山県の高齢化率は現在約25%です。四人に一人は高齢者です。地域によっては30%、50%に及ぶところもあります。今後益々この傾向は高まります。ちなみに岡山県の高齢化率は常に全国平均の1〰2%上を推移しています。

マナーとは、「尊敬の心」「感謝の心」「思いやりの心」と、それらを形や言葉にしたものです。そして「尊敬の心」で最も大切なことは、高齢者に対する尊敬の念です。このような認識で高齢者に接して頂ければ嬉しいです。

歳を重ねてくると身体も衰えてきます。目が不自由、耳が遠い人も多くなっていますので、そこの配慮が大切です。されどみんな「年より扱い」しては良くありません。そして高齢者は貧困の人もいますが、お金もちも多いです。裕福な高齢者の、消費者としての位置づけは大です。売り上げに大きく貢献してくれます。ここで高齢者への接客・接遇のポイントについて触れておきます。

人生の大先輩です。礼儀作法をわきまえて下さい。特に態度や言葉遣いには注意が必要です。「おじいちゃん」「お婆ちゃん」のようななれなれしい言葉ではなく、キチンと名前で呼んで下さい。話し方もはっきり、丁寧、解り易く、が基本で、横文字は極力避けて下さい。流行語も苦手です。

「デジタル放送」だとか「アナログ放送」だとかテレビが毎日のように伝えておりますが、極めてお年寄りには不親切な表現だと思います。
いかにも大型液晶テレビに買い替えなければ7月24日からテレビが映らなくなるといっていますが、本当にそうでしょうか?アナログテレビのまま、最小価格で見られる方法は本当にないのでしょうか?あるとすればそれをもっとわかり易く発信するべきだと思います。少し余談事でした・・・

さらに老眼の人も多いので文字は大きめがいいです。そして動作はゆっくり目が大切です。
話しかけて来られたら親身になって対応し、良き相談相手にもなって下さい。

加えて、お年寄りの買い物は何かと時間がかかります。一方的に説明したり、決断を不必要に急がせないように心がけて下さい。兎に角よく話を聞いてあげることが大切です。また「言葉不足」にも注意が必要です。例え悪気はなくても言葉不足は接客・接遇に携わる人にとっては致命的です。御用心ください。

欲を言えば、これからの接客・接遇は、能力、障害の有無、年齢等にかかわらず、出来る限り多くの方が自由に利用できる「ユニバーサルデザインの視点」を持つことが大切になってくると思います。

◆下積み生活を大切に
平松流のマナーは「形より心」といいましたが、その心を育んでくれたのは長い「下積み生活」があったからこそです。

「下積み」は「上積み」に対する言葉ですが、ここでは「思う存分に自分の能力を発揮できない状態で、低い立場や地位に甘んじていること」をさします。
この状態ですと、回ってくる仕事も掃除やお茶くみなど、雑用的と思える仕事が多く、自分を卑下したりすることもありがちです。そうなると掃除やお茶くみなどの仕事に心がこもりません。

でも認識を改めて下さい。この一見雑用と思われる仕事にこそ、おもてなし、すなわち接客・接遇の基本があります。またそれらの仕事が人間を大きく育ててくれます。雑用と捉えるのではなく、おもてなしのための大切な仕事と捉え、一生懸命に取り組んで下さい。何事も基礎が大切です。

このプロセスを経験しなくていきなり理論だけで管理職になっても頭打ちすると思います。良い悪いは別として、数学を説いたりコンピュゥターを扱うのと、人と人とが接する接客・接遇とは、わけが違います。

下積み生活がいかに大切かは古今東西多くの先人達も教えてくれています。
テレビドラマで大きな話題になった坂本竜馬も、岩崎弥太郎もしかりです。

また若い人はご存知ないかもしれませんが、先日お亡くなりになられた、かの有名な漫才師「夢路いとし・喜味こいし」コンビは、「下積みの長い芸人の方が、短時間で人気が出た芸人より、長く活躍できる」と言われておりました。下積みが長いと其れにつれて人間力が高まるからだそうです。
長い間漫才界を背負って来られた人の言葉には重みがあります。

私も本当に下積み生活みが長かったですが、今から思えば最高に充実していた時だったと思います。そして本当に大事なことを沢山教わった時でもあります。如何に時代が変わろうともこの下積みの仕事は普遍的です。決してないがしろにしないでください。

お茶くみが男女共同参画社会においては、女性の固定労働と捉えられ、お客様にお茶を出さない職場も多く出てきているようです。
中には応接室の前にお茶やコーヒーなどの自動販売機を置いている職場もあります。お茶を通じ日本におもてなしの文化を築いた千利休や豊臣秀吉はこの現象をどのように思われるでしょうか?寂しい気持ちがします。


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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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