三千年に一度咲くと云われる「優曇華(うどんげ)」です、ふふ。

中里えみこ

中里えみこ

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鎌倉ヨガ教室の扉に、小さな小さな白いものがついていました。

よくみると、白っぽい糸の先に白い粒のようなものが6つくらいついています。


「あ、優曇華だ」




道元禅師の『正法眼蔵』に、優曇華の話があります。

インドの霊鷲山で、釈尊が三千年に一度咲くという優曇華を摘んで黙っていたところ、弟子の摩訶迦葉が破顔微笑。
釈尊はそれを見て、迦葉尊者にのみ正法を授けた、というお話し。

不立文字、言葉では表せない教えの基盤になっているといいます。






ちなみに優曇華は、インドでは三千年に一度その花の咲くときには「転輪聖王」が出現するといわれ、国は豊かになり、人々は繁栄するのだとか 。

また、『吾妻鏡』によると1223年7月に鎌倉の薬師堂(現在の覚園寺)の谷に住んでいた僧の住まいの前庭で、優曇華(うどんげ)の花が咲いてると噂が流れ、北条政子がどんな花かと訪ねたとか。

珍しい!とこんなニュースにもなっていたり。
「無限の天機を秘めた「三千年に一度だけ咲く花」全世界で咲く!」
https://www.visiontimesjp.com/?p=4622



…じつはこの優曇華は、草陽炎(クサカゲロウ)が産みつけた卵です。
ほかにも、滅多に咲かない花としてトビカズラやバショウも優曇華と呼ばれていますが。


メディアで見聞きしたこと、著名人や偉い人が言っていること、そのまま鵜呑みにしないことです。
真実を見極めるのは至難の業。

この世界には60万ものマヤ(幻影)があると言われています。
私のお話も、師から学び、経験し、古典を読み、日々研究していることではありますが、事実に関してはよく検証して欲しいのです。

その上で、このあと明らかなものへと話は進みます。



道元が正法眼蔵に収めた、拈華微笑 優曇華には、言葉にできない大切なメッセージが畳み込まれています。

指針としたいのは、数百年、数千年、継承されている古典をそのまんま受け取ることです。
但し、古典を解釈、通訳する人によって、本来の教義が変わってしまっていることもあるので、十分精査を。

この世界を体験してきた先人からのメッセージはいろいろありますが、突き詰めていくと絞られてきます。

『ヨガスートラ』
第一章サマーディパタ−2「チッタ ヴリッティ 二ローダハ」心の作用を死滅する。

また、パタンジャリは人間のもつ5つの心の作用を紐解いています。

・正知・誤解・錯覚・睡眠・記憶

時代が変わっても残っている古典には、普遍の真理が記されていますが(正知)、人間が陥りやすいのは、暗がりでロープを蛇と間違えるヴィパリヤヤ(誤解)や(やが多いw)、錯覚の一つにヴィカルパ(ことばによる幻惑)、眠りや記憶も想念(ヴリッティ)です。

まずは、この5つのヴリッティを制御するために古典ヨガの修習があります。


参考になるのは、アリストテレスの演繹法に対して、『ノヴム・オルガヌム』でベーコンの唱えた帰納法と4つのイドラ。

・感覚による錯覚・狭い世界での思い込み・噂による偏見・権威による盲信




かつて、カトリック教会の教義に沿ったプトレマイオスの天動説が約2,000年も信じられ、地球が太陽の回りをまわっているのだという地動説を支持したガリレオは、宗教裁判にかけられ異端として有罪に。


事実をねじ曲げるものは何?
自分でも気づきのないヴリッティとイドラ、そして、世にも有名なソクラテスの名言「無知の知」がないからです。

古典に出会ってください。
アンテナを立てておけば、向こうからやってきてくれます。
世界でも有名な経典である『般若心経』にもありますが、般若(智慧)は、あらゆるところに偏在しています。


さて、今日咲いていた「優曇華」とは、非常に稀なことを意味します。

同じように、『法華経』第27章の「盲亀浮木(もうきふぼく)」という言葉は、百年に一度水面に上がる亀が、たまたま流木の穴に頭を入れるほど稀なこと、を意味します。

じゃ、この梅雨草は?

次の日には、花がなくなって翌日二つ目が咲いていた。



この水滴は?

再現はできないなぁw



蜘蛛の巣は?

この瞬間、光の当たり具合、二度とない唯一。


『しかあればすなはち、一切はみな優曇華なり。
かるがゆゑに、すなはちこれをまれなりといふ。』

道元 正法眼蔵より


禅語「而今(にこん)」 真実は『今』にしかないのです。

…としたら、この「今」は三千年に一度どころか二度とやってこない貴重な瞬間。

自分を振り回すテレビや携帯の中の何か。
誰かが言っている何か。
自分が信じて疑わない何かは、もしかしてヴリッティかイドラのどれかかも。


コラムを読み終わったら、窓を開けて外を眺めてみてください。



五大(空風火水地)による色んな現象がおきている、色んなものが生きている、そこに落ちている石も、当たり前のような顔をしている世界に一つです。


(鎌倉稲村ヶ崎どんぐり工房の教室です。この小屋の扉に。)


そして、五感(パンチャニャーナエンドリア)は、まずは世界(プラクリティ)を感じるための器官。
目を開けて、耳を澄まして、香って、味わって、触って。
見たいものをみるのではなくただ目の前を見るのは、案外難しいものですが。

目の前がありのままに見えてきたら、時間がいくらあっても足りないことに気づくから。


さあ、この素晴らしすぎる世界を味わう醍醐味をいまこそ。
相手は人間だけじゃなくて、太陽や月、840万もの生物、自然法則。
ここも遠い宇宙の一角、一番近いのに一番わからない(わからないことにも気づいていなかった!)「自分」との対話を。

世界が二千年信じたプトレマイオスの天動説が、コペルニクスとガリレオによって地動説にひっくりかえった。
アリストテレスの演繹法もよいけれど、ベーコンの帰納法は新たな発見を生み出している。

全ては、目の前で起きている現象の中にある。


起きていることを説明することはできなくても、今、瞬間、感じることは事実。
そして、1秒に75回、刹那にどんどん変わっていくもの。

ヴリッティとイドラ、盲信に気づかせてくれるもの、それは毎日の瞑想。
ただただ、毎日座ってみてください。
もし全部が見えたなら、目の前こそが真実です。


三千年に一度咲く優曇華の花。
生まれたその日に死んでしまう陽炎が教えてくれること。


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中里えみこ(ヨガインストラクター)

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