私は二つの日本一を知っている―新宿ゴールデン街最古のバーと港区西麻布最高のバー―
今日の目次
・アイドル3人娘がいた時代
・実に他愛もない派閥争い
・なんのリアリティも意味もない世界観
・フワフワとしたファンタジーで良かった
・好きなものは好きなのだ
アイドル3人娘がいた時代
皆さんは、アイドルやタレントの追っかけをやったことがあるでしょうか。私は、これまで好きな女優や女性歌手などいなかったわけではないのですが、アイドルの追っかけみたいな行為をやったことはありませんでした。
3歳年下の弟や8歳下の妹などは、若い頃、弟はキャンディーズ、妹は郷ひろみとかベイシティローラーズとかの大ファンで、追っかけとまではいかないまでもコンサートに行ったり、雑誌の切り抜きやポスターなど集めたりもしていました。
私はそこまで入れ込んだ歌手とかアイドルとかはいませんでした。ただ、日本の歌謡曲が全盛だった1960年代から70年代くらいに好きな歌手はいました。
中でも天地真理は好きな歌手でした。当時、小柳ルミ子と南沙織と並んで、アイドル3人娘みたいな扱いを受けていたのではないかと記憶しています。
「なんだ、アイドルが好きだったんじゃないかよ。」といわれるかも知れませんが、テレビの歌謡番組に出るときは割と観る、くらいの感じで、弟や妹みたいに写真を集めたりポスターを張ったりということはなかったのです。
ファンとはいえ、その程度の「好き」でした。まあ、くどくどとそんな言い訳する必要もない、とは思いますが。
実に他愛もない派閥争い
当時、私の同級生たち（男子校です）は、上記の3人娘、「小柳ルミ子派」と「南沙織派」とそして「天地真理派」に分かれていました。特に日本情緒を歌い上げるのが得意な「小柳ルミ子派」とややポップス寄りだった「南沙織派」とは相容れない感じで、それなりに激しく対立していたように覚えています。（実に他愛もない話ですが・・）
この3人の中でも、日本人の全体的な傾向としては老若男女を問わず、天地真理ファンが一番多かったのではないかと思います。彼女の歌はサラリと爽やかで、特にこれといった引っ掛かりのないものが多かったのです。
最近、ユーチューブを見ていたら、1960年代から70年代のヒット曲をセレクトしたコーナーを発見しました。そこに彼女の歌が入っていたので、久しぶりに聞いてみたのですが、そこで少し考えさせられました。
なんのリアリティも意味もない世界観
ユーチューブでは、当時の映像と歌声が目の前に繰り広げられます。この歌う姿とその声を聴いていて、自分が何故あんなに天地真理を好きだったのかわかるような気がしました。
なんと言っても見た目が可愛いのです。明らかに美人系とはいえない顔ではありますが、何とも可愛らしいその姿に当時の自分は参ってしまったんだろう、と思いました。（母はいつも「（天地真理の）鼻が天井を向いてるじゃないの。」と言っていましたが・・）
それに極めて特徴的なのは、その声の美しさでした。透明感というか爽やかというか、その後彼女と同じような声を聴いたことがありません。
他愛もない当時の歌謡曲の歌詞に、あの澄んだサラッとした歌声はピッタリのような気がしました。そう、あの頃の歌謡曲の歌詞というのはまさに作り物で、ほとんどなんのリアリティも意味もないものが多いのです。薄っぺらいファンタジーの世界なのですが、それはそれで良かったのです。
フワフワとしたファンタジーで良かった
ということで、天地真理が歌っていた当時の歌詞を改めて見てみました。
「ひとりじゃないの」という歌の一番の歌詞は次のとおりです。
―あなたがほほえみを少し分けてくれて
わたしがひとつぶの涙をかえしたら
そのときがふたりの旅のはじまり
ひとりじゃないってすてきなことね
あなたの肩ごしに草原も輝く
ふたりで行くってすてきなことね
いつまでもどこまでも―
この「あなたがほほえみを少し分けてくれて わたしがひとつぶの涙をかえしたら・・」
というフレーズにどれほどの意味があるんだろう？と思います。
というか、なんの意味もないじゃん、というのが私の感想です。
「ほほえみ」とか「涙」とかいったちょっと心地よい言葉を混ぜることで、意味はないけれどそれなりの雰囲気のファンタジーを作り上げているみたいです。
2番の歌詞も似たようなものだし、彼女の他のヒット曲の歌詞も大同小異です。さらに言えば、彼女以外の歌手が歌う歌詞も、フワフワとしたファンタジーっぽいものが多いのです。
好きなものは好きなのだ
ただ、誤解しないでいただきたいのですが、今書いていることは、こうした歌謡曲や当時の歌詞に対する激しい非難などではありません。そうではなく、改めて覚える軽い驚き、発見といったことになります。
というのは、こんなことを書いている私自身、当時の天地真理のほとんどのヒット曲はソラで2番まで歌えるくらい入れ込んでいたからです。つまり、どうあれ好きだった、ということです。
こうして、最近ユーチューブの動画で昔の彼女の歌う姿を見ていて、『歌詞も結構覚えているなあ。』と思うと同時に、『あの頃は、こんな歌詞にも何の疑問も覚えずに鼻歌でいつも歌っていたんだよなあ。』と思ったのです。そもそもそんなことに目くじら立ててはいかんのであります。
アイドルとか歌手とかを好きになるというのは、きっとこういうことなんだろうと思うのです。つまり、そこにあんまり「意味」や「理由（わけ）」を持たせてはいけません。そんな必要もありません。好きなものは好きなのです。
その後、やや大人になり、何につけても「意味」や「理由（わけ）」を考えるようになりました。まあ、これはこれで当たり前の現象なのでしょう。
しかし、何も深く考えることもなく、アイドルの歌う歌詞が自然に頭に入っていた頃が懐かしいといえば懐かしい気もします。あんな心境、もう来ないのかも知れないけれど・・・そんな他愛もないことを考えたのでした。
フワフワとしたファンタジーの世界（本文とは何の関係もありません）
