孤独地獄、一人ぼっちのイスタンブール―誰か俺をここから救い出してくれぇーっ！―（後編）

今日の目次
・たった一人イスタンブールに取り残された！
・心細さMAXゆえの悲痛なお願い
・立ちはだかる少し面倒な手続き
・なんでお前はここを通るんだ？！
・OK、OK、なんだってOKじゃい！！
・チョー波乱含みで始まった我が旅

たった一人イスタンブールに取り残された！

そうやってFゲートのソファーに一人座り、旅行パンフレットをしばらく読みふけっていたら、突然、携帯が鳴ったのです。見てみると、非通知になっています。知らない海外でいきなり非通知。私は怪しんで出ませんでした。
するとしばらくして、また携帯が鳴りました。さすがに、何ごとかと電話に出ると、東京の旅行代理店から女性の声です。「海江田さん、今、どこにいらっしゃいますか？」と尋ねるではありませんか。
「え、Fゲートのところですが。」と言うと、彼女は「もう皆さん搭乗されて出発します。」というのです。一瞬、目の前がクラクラします。周りを見てみると、確かにもう誰もいませんでした。
「え、私、乗り遅れたんですか？」と私。
「はい、先ほど電話がありませんでしたか？」と彼女。
「ああ、かかってきたんですが非通知だったので出なかったのです。」と私。
「実はあれが、添乗員さんがかけた最後の電話で、あの後、ゲートは締め切られたんです。」というではありませんか。
ガーン！私は完全にパニックに陥りました。
そのとき、はっきりと悟ったのです。
「俺はイスタンブールにたった一人残された。」と。

心細さMAXゆえの悲痛なお願い

もうそれからのことは、こうやって思い出しながら書いていても胸が苦しくなってきます。
『完全に一人ぼっちになってしまった。ど、どうすればいいんだ、俺は。』
あまりの心細さに、心の中でうめきます。イスタンブール空港は広い。広すぎるのです。
幸い、東京の担当者の女性とは電話がつながっていたので
「どうすればいいんでしょう、私は。」
と、もう頼みの綱は遠く離れた彼女しかいません。藁にも縋る思いで尋ねます。
そうすると彼女は
「イスタンブールからポルトガルへの便はまだありますので、こちらで手配しましょうか。お一人で行かれますか？」
という。
「お、お願いします。なんとか、皆さんと合流させてください。」
と、それはもうほとんど悲痛な叫びでした。

立ちはだかる少し面倒な手続き

で、まずどうするかと言えば、とにかくターキッシュエアラインズ（以後、「トルコ航空」と言います。）のカウンターを探してチケットを取らなければなりません。広い空港内をしばらくウロウロしていたら、それほど大きくもないトルコ航空のカウンターが見つかりました。
しかし、ここでまた躓いたのです。私はほとんど英語が話せません。「乗るはずの飛行機に乗り遅れてしまったんでチケットを取り直したい。」なんてややこしい説明など全くおぼつかないのです。また向こうもトルコなまりの英語らしくて、聞いていてもさっぱりわかりません。
困っていたら、また東京の彼女と電話がつながりました。そこでカウンターのスタッフに電話を代わり、事情を話してもらったのですが、どうやらそこでは国際線のチケットは発行できない旨の説明を受けたらしいのです。
電話で彼女が
「海江田さん、ポルトガルへのチケットを取るには少し面倒な手続きをしなければならないのですがご自分でできそうですか？」
と言うので、私は
「いやあ、どうも自信がありません。」
と言うと、彼女は
「それでは、イスタンブール在住のスタッフを空港まで行かせましょうか。」
と、親切にも手配をしてくれると言います。
「お、お願いします。」
と言って電話切ったら、しばらくしてまたかかってきました。
「申し訳ありません。今日は日曜日なので現地スタッフがつかまりません。どうしましょう。ご自分で手続きなさいますか？」
と言うではありませんか。

なんでお前はここを通るんだ？！

ここで私は決断しました。
「やります。やります。（この一人ぼっち地獄から抜け出せるんだったら）なんでもやります。どうぞ指示してくださいっ！」
と、電話に向かってほとんど悲痛な叫びです。
そのあと、やや冷静になったときにわかったのですが、こういうことだったのです。今回のツアーみたいに、乗り換えを含めて通しでチケットを押さえていた場合は、一度もトルコに入国することなく、空港内でゲートからゲートへ移動すればそれで済むのです。
ところが、私みたいに、予め用意されていた既定のルートから外れちゃった場合は、そういった単なる横移動だけでは済まなくなるのです。パスポートを提示してトルコに入国まではしなくてもいいのですが、或る意味治外法権的エリアである空港内移動ルートから一度半分くらい外に出た形をとって、チケットを取り直す必要があるのです。
そのためのゲートが空港内にあるということなので、そこを通り抜けて、国際線のチケットを発行できるトルコ航空のカウンターまで行かなければなりません。私はウロウロと探し回ってようやくそのゲートを見つけ、通過しようとしたら、そこには結構大勢の男性スタッフがいて
「お前は、なんでここを通らなければならないんだ？」
と、まるで詰問してくるかのような勢いで止められました。
ここでも、東京の彼女に電話を代わって説明してもらい、ようやくそのゲートを通過することができたのです。しかし、そこを通った人間には途中までガードマンがついてきます。

OK、OK、なんだってOKじゃい！！

しばらく進むと、ようやくトルコ航空のカウンターが見つかりました。ガードマンもようやく解放してくれました。そこでまた、今回の事情を電話で説明してもらい、やっと、ポルトガルまでのチケットを押さえることができたのです。
ただそのとき、カウンターの男性スタッフに聞かれたのは
「これは正規料金になるが、あんたそれでもいいのか？」
ということでした。
私もそれくらいは何となくわかりました。
「OK，OK。」と返事をします。
『この一人ぼっち地獄から逃れられるのなら何だってOKじゃい！』
と、心の中で叫びました。
今度ばかりは乗り遅れるわけにはいきません。私はまた所定のゲートを通過して、早めに先ほどと同じF出発ゲートへと向かいました。
とにかくポルトガルへのチケットは何とか取れました。あとは皆さんと無事合流できれば、もう万々歳です。

チョー波乱含みで始まった我が旅

イスタンブールに着いたのは割と早朝でしたが、あれからもう4,5時間たっています。ポルトガルへの次の便は午後でした。
このタイムラグも私には幸いしたのです。この間、2,3時間しかなかったら、ここまでの手配はできなかっただろうと思います。
搭乗までの時間を待つ間、少しホッとした私は、売店でケーキとカフェラテを買いこみ、ようやく食べ物を口にしたのです。そして、そのテーブルでこの間の顛末を、ノートを出して書き留めました。
その後、何とか無事に飛行機に乗り、ポルトガルに着くことができました。こうして、どうにかこうにか、「イスタンブール一人ぼっち地獄」から逃れることができたのです。
実はその間、ほかにもちょっとした危ない場面はいろいろあったのですが、その辺の顛末は、またの機会に書くことにしましょう。
初めての一人海外旅行は、いきなりこんな風にチョー波乱含みで始まり、なんとも強く記憶に残る旅行になったのでした。

トホホの面持ちで口に運んだケーキとカフェラテ
クソ甘いのにほろ苦いという、なんとも・・(T_T)

一応おしまい