濃度の濃い出会い?!?―むしろ肉声、肉筆のリアリティーに心が動く時代―Ⅰ
或る社長さんとのやり取り
以前、お客さんにこんなことを言われたことがあります。
あれは確か、自動車修理業の社長でした。
「先生、知ってるかね。我々の業界は全国でウン十万社、それに対する顧客の数は推定ウン百万人、この客の数が年を追うごとにどんどん減っている。我々の業界が厳しいのは当たり前だ。これからもっと厳しくなる。それが現実なんだ。」
これに対して私は
「そうですか。で、それはどこでお聞きになったんですか?」
と聞き返します。そうすると社長は
「先日、我々の業界で招待したコンサルタントの先生が講演の中でそう言っていた。」
と言います。
「そうですか。それで、その先生は、これからどうすればいい、とおっしゃっていたのですか?」
すると、途端に社長が口ごもります。
「とにかく、昔みたいに待っていればお客さんがどんどん来た時代とは違うのだから、気を引き締めて頑張るしかないんだ、と言っていた。」
私は
「は? それだけですか? 具体的にどうすればいい、とはおっしゃらなかったんですか?」
「と、とにかく昔みたいにはいかないんだ。大変な時代なんだ。と言っていたな。」
このやり取りをお聞きになっていて皆さんどう感じるでしょう。「呆れたコンサルタントだ!だからなんだよ。」と思うでしょうか。まあ、思いますよね。私も当然そう思いますが、こんな話は地方では結構多いのです。
統計的な分析は簡単だが
人口減少の特に激しい地方においては、どの業界も経営が厳しく、それを統計的に指摘するのは簡単です。この状況を、いかにも難しい分析をしたかのような言い回しで、事業者の不安を煽るのは、正直言ってそれほど難しいことではないのかも知れません。こんな指摘くらいだったら、全国どの業界に対してでも同じことが言えるからです。
この問題の本質は、いかなる産業においても事業経営が苦しいという事実は、統計的にさほど高難度の証明ではないにもかかわらず、その打開策は個別バラバラでしか成し得ない、ということなのです。つまり、この状況の打開策については、統計数字を説明するときのように、全体共通の方法論として一律に語るのは難しいのです。事実、そんな方法論はないからです。
「独自性」は誰も知らない
昔とは打って変わって、世の中が売り手市場でなくなった現在、苦境を脱出する手立ては個別、「独自性」を発揮するしかありません。横並び、つまり他人(ひと)と同じことをやっていたのでは、買い手から見て差がつかないからです。同じものであれば、買い手は安い方に流れます。
経済全体が上り坂の時代は、横並び、他者の真似をしてもそこそこ商売がうまくいった頃もありました。しかし、現在のように経済縮小時代には、他者の真似をしていても常に後れを取るばかりなのです。
とはいえ、こんな時代であっても、どんな経営者にも基本的に共通してやるべきことがあります。それは、私がいつも申し上げている、経営者による「情報発信(アウトプット)」なのです。
この理屈は極めてシンプルです。「独自性」を発揮しなければならない時代なのですから、その独自性を一刻も早く、発見しなければなりません。「そんなこと言ったって・・・俺は普通に仕事をこなしているだけで特別なことはしてないよ。」とおっしゃるかも知れません。「独自性」など何もないと。
とはいえ、経営というのは、経営者の個性に合わせて、百人百様、千差万別です。ということは、独自なところは必ずあるはずで、経営者によって、その「独自性」が際立っているのかそうでもないのかの違いだけです。
しかも、それをできるだけ広く、きちんと知らしめる必要があります。何故ならば「独自性」はまさにその字のごとく独自のものなのですから、当初誰も知らないのは当たり前だからです。こちらから相当頑張って知らしめなければ、誰も知る由もありません。
インプットだけでなくアウトプットも
ここで申し上げたいのは、統計的でマクロな知識などを勉強するのは、一向にかまわないのですが、そこで止まってしまっては全く意味がないということです。経営者は自ら常にその先を考えなければ、事業が好転することなど絶対にあり得ません。
そして、社長が考えたことはどんどん「情報発信(アウトプット)」をすることです。「独自性」について先述しましたが、本当に「独自性」があるのかどうかは、世に問うてみなければわかりません。
メディアにしろSNSにしろ、今は双方向性が可能です。学習するだけではなく、その成果を小出しでもいいので「情報発信(アウトプット)」をしてみて下さい。そうすれば、せっかくの学習が、事業を好転させるための成果につながるかどうかが検証できるはずです。
「情報発信(アウトプット)」はそれができる人だけがやればいい、できない人は、それはそれで仕方がない、という時代ではありません。もはや「情報発信(アウトプット)」は、企業の必須の課題です。もしそれが苦手でよくわからないというのならば、他者の力を借りてでもチャレンジすべきです。私のところにも、そういったご相談が増えていますし、これからもその重要性は増していくことでしょう。経営者の方たちとそんな話をぜひしたいと思っています。
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