相応しいのは「商売」を感じさせない文章―経営者の情報発信、あるべき一つの姿―前編
とにかく、まずは「情報発信(アウトプット)」を
会社がこれまで培ってきた「有形無形の企業資産」をストーリーという形で「情報発信(アウトプット)」し、それが良い形で世間に伝われば、それだけで事業の発展に貢献しますよ、といったことをこれまで繰り返し述べてきました。もちろん必ずしもストーリー(物語)という形式にこだわる必要はないのですが、わかりやすい表現としてこの言葉を使っています。要はそのようなコンテンツを「情報発信(アウトプット)」することが大切なのであって、あまり形にこだわり過ぎても意味がありません。
否定的な意見もありますが
ただそうすると、必ずこういったことを言う人が出てきます。「それって所詮懐古趣味なんじゃないの。過去を振り返っている暇なんかないよ。俺は未来志向なんだ。」といったご意見です。
なるほど、それはそれで結構なことです。未来志向を私も否定はしません。ただ考えていただきたいのは、何を振り返り、どう活かすかということなのです。うっとりと過去の思い出に浸りましょう、などと言っているのではありません。
また「事業で積み上げてきた結果は今の仕事で日々伝えている。現在の商品やサービスの内容を見てもらえばそれで充分だ。」という意見もあるでしょう。もちろんそれは分かりきったこととして申し上げているのです。
「直接手掛けている今の仕事で世の中に貢献し訴えかけていく」というのは当然のことなのです。ただ、それを「さらに違う表現の仕方でもっと踏み込んで世間に訴求すれば、これまでとは異なる展開が待っていますよ。」ということなのです。というのは、事業で取り扱っている商材やサービスは、当たり前の話ですが、その取引なり仕事に直接接点のある人しか知る由もありません。
広く伝えることの重要性
しかしながら、その事業、その仕事を別の形で表現し訴求すれば直接は関係のない人達も広く知るところとなります。マス媒体の広告宣伝というのはまさにそこを狙って行なわれる訳です。
広告宣伝というのは、印刷物や映像、音声などといった媒体を通じて伝達されます。そういった媒体の性質上、こちらのビジネスとは全く関係のない人達にまで広く届いてしまいます。そしてそれは、相当な費用がかかるのです。これが広告宣伝の特長ということになります。
それだけの費用を掛けたにもかかわらず、各媒体によって届けられた情報の大半はスルーされます。その膨大なスルーの中から引っかかりを持つ相手が出てくればラッキー、というのが「広告宣伝」という手段の持つ宿命なのです。
これに対して、社長の行なう「情報発信(アウトプット)」というのはそれとは少し趣を異にしています。大半がスルーされるという結果においては、同じようなことになるのかも知れません。しかし、これを継続することで、そこにそれなりに興味を持つ支持者が現れ、ファンのようなグループが形成されていきます。ここで興味を持ってくれるグループは、広告宣伝で心に引っかかりを持ってくれる人たちよりもかなりコアな人たちということになります。
未来を切り開く強力なツール
しかも、これまで接点のなかった人たちですので、それは新しいマーケットの予備軍でもあります。「情報発信(アウトプット)」というのはやがて双方向性を持つ可能性がありますので、新しいマーケットであると同時に、新しい情報提供者になる可能性も含んでいるのです。尚且つ、広告宣伝と違い、桁違いに費用というものが掛かりません。
社長の行なう「情報発信(アウトプット)」というのは、このように決して後ろ向きの作業ではありません。むしろ新しい未来と新しいマーケットを開拓していく強力なツールと言ってもいいくらいです。しかも、これを行なう経営者は、今のところ圧倒的に少数派ですので、始めた時点で、かなりの差別化が同時進行することになります。
そしてそれを世の中に届けやすいのがストーリーという形なのです。この形を整えるために、少々手間がかかるのはやむを得ないところですので、そのお手伝いを是非させていただきたい、と私は考えているのです。
未来への窓は開かれているのか